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アングル:ブラジルの街に新型コロナの波、ギャングが外出禁止令


[リオデジャネイロ 24日 ロイター] - ブラジル第2の都市、リオデジャネイロにいくつも存在するスラム街(ファベーラ)の人々が、新型コロナウイルスの襲来におびえながら暮らしている。

このファベーラから生まれた音楽ジャンル「バイレ・ファンキ」のダンスパーティーは中止され、街頭にある麻薬売買場も一部で「閉鎖」された。当局の権限が及ばない無法地帯のため、地域を牛耳るギャングや、あるいはそれに対抗する民兵団が、感染拡大防止のため自主的に住民に外出禁止命令を出しているのだ。

2002年にヒットした映画の題名としても有名なスラム街「シティ・オブ・ゴッド」では、前週末に初の新型コロナ感染者が確認された。

ところが、リオデジャネイロ州は深刻な予算不足にあえぎ、連邦政府を率いるボルソナロ大統領は新型コロナ感染対策が後手に回っていると各方面から批判を浴びている。そこでリオのファベーラを長年取り仕切ってきた犯罪組織の集団が、独自に予防措置を講じつつあるという。

地元紙・エクストラによると、シティ・オブ・ゴッドのギャングが一帯で車を乗り回しながら、住民に録音メッセージを流している。「(当局者の)誰もがこの問題を真剣に受け止めていないので、われわれが外出禁止を発動している。街頭でふざけていたり、散歩に出かけようとしたりするやからは、見せしめとしてそれなりの報いを受けるだろう。家に居るほうがいいぞ。メッセージは聞かせた」といった内容だ。

ロイターはそうした内容が正確かどうか確認できなかったが、シティ・オブ・ゴッドの複数の住民は、夜間外出禁止など厳しい規制が敷かれていると証言した。

ブラジルではこれまで新型コロナは、「金持ちの病気」と言われた面があった。当初は欧州から帰国した比較的生活が豊かな人たちが持ち帰ったからだ。だが、ウイルスはすぐに貧困地域にも広がり、全国で1500万人近くに上るファベーラの住民は恐怖におののいている。

何しろファベーラは人口が密集し、不法就労者も多く、公共サービスは劣悪で、感染拡大が加速しかねない。一方で、ファベーラには事実上政府機関が存在せず、さまざまな麻薬ギャングらが抗争し、互いに、あるいは警官らと連日銃撃戦を繰り広げながら、近隣の法秩序を司っている。

貧困地帯のインフラもひどい有様だ。ブラジル当局によると、同国で公営水道を利用できない人は約4000万人に達し、人口のおよそ半数に当たる1億人は下水設備なしで生活している。

シティ・オブ・ゴッドの住民のジェファーソン・マイアさん(27)は「基本的な公衆衛生状態が目も当てられない。場合によっては、きちんと手を洗うための水さえなく、新型コロナの問題をとても心配している」と不安を口にした。

リオの別のファベーラで働く医師のタミリス・デベザさんは、住民たちは過去2週間ずっと自宅の水不足を訴えており、手を洗って新型コロナの急速な感染拡大から身を守るのが難しくなっていると指摘。近隣の多くの薬局では手の消毒剤は売り切れ、残っている商品もとんでもない高額だと嘆いた。

<急速な感染拡大と対応の限界>

保健省の発表では、ブラジルの新型コロナ感染者は24日時点で2201人と急増し、関連死亡者も46人になった。

全人口の5分の1がファベーラに集まっているリオデジャネイロ州の感染者は305人。ウィルソン・ウィゼル州知事は20日、州の医療システムは15日間以内に「崩壊」する恐れがあると警鐘を鳴らした。

リオ市のマルセロ・クリベラ市長は、各ファベーラの入り口に無料で使える石けんを配備するとともに、基礎疾患がある高齢者をホテルなどに移送する方針を表明し、既に400室を確保していると述べた。

クリベラ氏は21日、「最もリスクの高い人をできるだけ早く保護する必要がある」と訴え、24日には市内で一番往来が活発な地域全体の清掃作業に乗り出したと強調した。

それでもリオデジャネイロ連邦大学の感染症専門家エドミルソン・ミゴフスキ氏は、公衆衛生面でファベーラは引き続き重大な課題を抱えていると指摘。「人口密度が高く、(医療)支援の計画も習慣も乏しい地域に新型コロナが入ってくれば、壊滅的な事態になってもおかしくない。水や石けん、洗浄剤が乏しい場所で、感染拡大を止めるのは困難だろう」と話した。

(Ricardo Moraes記者、Debora Moreira記者、Rodrigo Viga Gaier記者)

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