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森友問題めぐる忖度人事続々 安倍政権が崩落させた官僚機構

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佐川宣寿氏(時事通信フォト)

 森友学園問題の文書改竄に関与し、自殺した官僚の遺書は、世間に衝撃を与えたが、霞が関の動揺はその比ではない。震えているのは、その森友を機に、出世したエリート官僚たちだろう。それを知る霞が関の住人たちは、こう考えているはずだ。いったい我々は、誰のために尽くしているのか……安倍政権は、国家を支える官僚機構そのものを崩落させようとしている。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(敬称略)

◆佐川より首相夫妻

 すべての嘘はモリカケに通ず。先ごろ飛び出した元財務省職員の手記を読むにつけ、思わずそう言いたくなる。さる3月18日、遺族の弁護士が大阪市内で記者会見し、自殺した元近畿財務局職員の手記を公表した。

〈(森友学園との)応接記録をはじめ、法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さないこと、検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました〉

 ジャーナリストの相澤冬樹が週刊文春で発掘した手記の発表を機に、野党も政府に森友学園問題の再調査を要求してきた。震える手で書かれた遺書には、赤木俊夫・元上席国有財産管理官(享年54)の伝えようとした“真実”が綴られている。

 なぜ財務省が国有地を8億円以上も値引きして森友学園に売ったのか。加計学園と同じく、首相夫人の安倍昭恵と親しい籠池夫妻への依怙贔屓ではないのか。念を押すまでもなく、それが森友疑惑の原点である。

 財務省近畿財務局と森友学園との間にどのようなやり取りがあったのか。森友疑惑を解明する上で、まず明らかにすべきが、駆け引きの記録だった。


公表された手記(時事通信フォト)

 ことが発覚した当初の2017年通常国会では、国有地を所管する理財局長の佐川宣寿が、取引にかかわる文書を「すべて廃棄した」と答弁する。だが、翌18年に入ると、朝日新聞の報道などにより、その嘘がばれていく。そして国有地売買を記した財務省近畿理財局の公文書が次々と明るみに出ていった。

 察するところ、取引現場となった近畿財務局の職員たちは、無茶な土地取引があとで問題になることを予想し、自己保身のために証拠を残したかったのだろう。安倍政権にとって都合の悪いことに、森友側との応接記録や取引を決裁したときの行政文書などが、近畿財務局に公文書として保管されていた。わけても決裁文書には、安倍昭恵が何度も出て来て、「いい土地ですから(取引を)前に進めてください」と森友学園理事長の籠池を励ますクダリまである。

 国会で「私や妻が関係していたということになれば……」などと大見得を切った官邸の主は、そんな記録など、ツユほども知らなかったのだろう。国会対応に追われた財務官僚たちが大慌てして記録を隠し、さらに決裁文書の改竄に手を染めた。挙句、それが発覚し、文書の改竄を押し付けられた現場の近畿財務局職員が命を絶ってしまったのである。

〈元はすべて佐川(宣寿)理財局長の指示です〉

 職員の遺書が表沙汰になり、野党やマスコミはわかりやすいそのひと言を取り上げるきらいがある。が、「佐川の指示」そのものは、これまでの財務省調査ですでに認めている。疑惑解明のポイントはそこではなく、首相夫妻の関与に戻る。

 残念ながら手記ではそこが抜けているが、むしろ期待するのは、遺族が佐川や財務省を相手取って提訴している民事の損害賠償請求の行方だ。そして裁判のキーマンは佐川だけではない。

◆森友火消しの四人組

 もう一人の重要なキーマンが遺書に度々登場する財務省の太田充である。首相の「私や妻が」発言のあった2017年2月17日の5日後の22日、大臣官房審議官だった太田は、佐川とともに官房長官の菅義偉に呼び出され、森友対策を練った。応接記録などを破棄したという佐川の国会答弁を記者に突っ込まれた菅は、驚いたことに、この直後の24日の官房長官会見でこう言い放っている。

「(交渉経緯の)ほとんどは決裁文書に書かれているんじゃないでしょうか」

 そこから近畿財務局の職員たちが佐川の指示により、決裁文書に記されている300か所におよぶ不都合な真実の改竄を繰り返したのである。

 一方、これには疑問も残る。決裁文書には理財局総務課長の中村稔の承認印もあり、中村も菅との協議に加わって説明している。普通に考えれば、財務省の彼らは菅に決裁文書に昭恵の名前が何度も出てくることを報告したはずだ。

 にもかかわらず、菅は24日、あたかも決裁文書を見てくれ、と言わんばかりの会見を開いている。財務官僚が説明を忘れたか、それとも官房長官がうっかり口走ってしまったのか。どちらにせよ結果、改竄前の文書内容が大問題になる。実に間の抜けた話なのである。

 この菅、佐川、太田、中村という森友国会対策の四人組が、文書改竄の経緯を解明する鍵を握っているのは疑いようがない。それに加え、事務次官の福田淳一、官房長の岡本薫明や矢野康治、理財局次長の中尾睦、国有財産審理室長の田村嘉啓、国有財産企画課長の冨安泰一郎といった当時の面々。彼らも文書の改竄にかかわっているか、知りうる立場にあった。だが、国会では与党の数の力で多くが国会招致を免れ、尋問されてもシラを切り続けてきた。

 財務省内では、会計検査院の審査に備え、森友学園との土地取引が法に触れないか、検討した。そのときの文書ものちに明らかになった。遺書はそこにも触れている。

〈新聞紙上に掲載された本(2018)年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である〉

 民事裁判では裁判長が認めれば、証人出廷しなければならない。昭恵夫人の証人出廷なんてことになれば、埋もれてきた数々の虚をあぶり出すことができる。なかでも遺書に何度も登場する四人組の一人、太田などは気が気でないかもしれない。

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