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特集:「コロナ不況」への経済対策を考える

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状況はめまぐるしく変化しています。今週は東京五輪の1年延期が決定。すかさず東京都は週末の「外出自粛要請」。そして3月27日には2020年度予算が成立の見込みです。次は間髪を入れずに、「大型補正」の編成に取り組まなければいけません。

何しろ世界経済を襲っているのは「リーマン級」の事態なのですから。とはいえ、「景気対策として何をすべきか」は難しい問題です。感染症の拡大を止めつつ、同時に景気の底割れも回避しなければならない。その間のバランスをどう考えるべきか。しかも、やるなら即効性のある対策でなければならない。本号では、①定額給付金、②キャッシュレス延長、③ツーリズム支援 の3点を提案してみたいと思います。

●ようやく政府が認めた「景気は、厳しい状況」

3月の月例経済報告(3月26日)において、内閣府はようやく基調判断から「緩やかに回復している」との文言を外した。新たな文言は「厳しい状況にある」。問題を直視することが解決への第一歩であると考えれば、いささか遅きに失した感はあるけれども、景気が厳しい局面にあると政府が認めたことを素直に歓迎したい。

あらためて、なぜ2月の月例経済報告(2月20日)で基調判断を変えなかったのか。先月の「関係閣僚会議資料」を読み返してみると、どうやら「GDPが大幅マイナスになったのは、消費税増税のせいではありません!」と言いたかったからのようである。

ご高尚の通り、昨年10-12月期GDPは▲7.1%(年率)という大幅マイナスであった。誰が見ても、消費増税の影響があったと考えるだろう。しかしその評価が定着すると、2度と消費税を上げられなくなってしまう。政府としては、なによりもそのことを警戒したので、景気の「緩やかな回復」という文言にこだわった。今から考えるとくだらない「忖度」だが、先月下旬時点の政府の認識はその程度であったということに気づかされる。

そうでなくても、1997年4月の増税局面(3%→5%)ではアジア通貨危機や山一・北拓ショックが追い打ちをかけている。2014年の増税局面(5%→8%)でも景気が腰折れしかけて、黒田・日銀の追加緩和でかろうじて踏みとどまった。

今回の増税も、直後に世界的なコロナ不況が追い打ちをかけた、ということになると、つくづく消費税は「呪われた税制」である。次なる増税は、「縁起でもない!」と頭から却下されてしまいそうである。

○基調判断の推移

例によって、上方修正を+1、下方修正を▲1として基調判断の変化を示したものが下記のグラフである。こうしてみると、前回の「景気の谷」が2012年末であったことはほぼ間違いないだろうが、事後的に判定される「景気の山」は2018年秋とみるのが妥当ではないかと思う。現在はそこから5段階も引き下げられている。2015~16年のチャイナショックから資源価格急落のタイミングと比べても、落ち込みが深いことが窺える。

○基調判断の歴史

●これから見えてくる「厳しい状況」の中身

思えば今年の日本政府は、いろんなことに「忖度」しなければならなかった。習近平国家主席の訪日が延期されるまで、中国からの入国制限ができなかった。今週は東京五輪の延期が決まった翌日から、東京都が週末の外出自粛を呼び掛けている。

そして今日、3月27日には参議院で2020年度予算が成立する見込みだが、それが済んだらすぐに大型補正予算の編成に取り組まなければならない。ようやく余計な配慮をしなくてもよくなったところだが、景気の現状を示すデータが揃い始めるのは来週以降となる。

○当面の重要経済指標(日米)

現時点で想定される日本経済の「厳しい状況」を整理しておこう。

*個人消費:3月月例経済報告によれば、「3月前半の新幹線利用者数は前年比で半減」「外食売上はパブ・居酒屋で落ち込みが目立つ」「百貨店売上はマイナス幅拡大。コンビニ販売も前年比減に。スーパー販売は買いだめの動きもあり前年比増」とある。
――人の移動が止まることで、消費の需要が瞬時に「蒸発」してしまっている。もっとも極端なのはイベント、クリエイティブ関連で、「自粛」によって営業機会そのものが失われている。また、インバウンド売上の激減も響いている。

*雇用:1月時点で完全失業率は2.2%→2.4%、有効求人倍率は1.57倍→1.49倍と既に悪化。アルバイト・パートの平均時給も1月から2月にかけて低下。
――普通、雇用は景気の遅行指標だが、4月からの派遣契約の打ち切りや内定取り消しを考えると、今後は急速な悪化が懸念される。消費関連のサービス業は「対面」の仕事が多く、多くの場合、「テレワーク」で代替することができない。

*外需・生産:コロナ・ショックにより、中国では1~2月の消費、生産が大幅に減少した。その後、ユーロ圏、米国にも順に感染が広がり、3月の景況感が急速に悪化している。日本経済としては当面、輸出にほとんど期待できない状況が続くことになる。これに伴い、生産も影響を受けるはずである。
――2月の鉱工業生産は、経産省予測では前月比+5.3%と大幅増加を見込んでいたが、実際には期待外れとなるのではないか。

●悩ましい「感染防止」と「景気対策」の兼ね合い

これだけ急速に景気が悪化するのであれば、素早く、大規模な対策を行うべきであろう。既に金融市場は、「リーマンショック以来」の不安定な反応を示している。幸いなことに、現在は金融機関に不良債権が集中しているわけではなく、生産設備が大きく破壊されているわけでもない。

ウイルス騒ぎが落着した時には、いわゆる「ペントアップ需要」(繰り越し需要)が一気に盛り上がる可能性もある。逆に難しいのは、「感染拡大の防止」というより優先順位の高い目標も抱えていることである。

景気にテコ入れをする必要はあるけれども、そのことによって感染を加速してしまっては元も子もないのである。この点をはっきりと指摘しているのが、キヤノングローバル戦略研究所の提言である。

○【緊急提言】コロナ・ショックの経済対策の基本的方向性について(3月24日)1

*マクロ経済対策が適度に、かつ、タイムリーに打ち出されることが肝要である。打撃を受けた企業や個人への直接的な支援を強力に実施することが必要である。*しかし感染拡大の防止という大目標のために、景気を敢えて悪化させているのが現在の政策である。

消費活動が無差別に活発になれば、人と人との接触が増えて感染リスクが高まるので、感染防止という景気よりも重要な大目標の達成が困難になる。

*強制的な消費の縮小によって、収入が途絶している企業や就労者は、感染防止政策の犠牲者であるから、救済しなければならない。政府がやるべきことは、これら債務返済・家賃等の支払い・生活費需品の購入などの最低限の出費に必要な資金を支援することである。

*(商品券の給付、外食や旅行への補助と言った)消費を無差別に喚起するこれらの政策は実施すべきではない。

もっともなご意見ではあるが、少々ストイック過ぎるような気もする。

何より消費が増えることが即、感染拡大につながるわけではない。ネット消費もあるわけだし、感染防止と景気浮揚をまるで二項対立のように捉えるのは行き過ぎであろう。感染防止が優先されるのは当然のこととはいえ、けっして「消費は敵」ではない

そして多くの「経済的な死」を招かないような配慮も当然、あってしかるべきである。例えば政府内では、観光業界を救済するために「感染が収まった後に4カ月程度の期間を設け」「最大で3万円程度のクーポン券を発行する」ことが検討されている。

「不要不急の外出の自粛」を呼び掛けている最中に、不謹慎だという批判が出ているけれども、コロナウイルス終息後に向けた「夢」を用意するのは、そんなに悪いことだろうか。今日のような不透明な状況下では、「命とおカネ」が絡んだ議論をすると、ついつい極端な意見が多くなってしまう。しかし、重要なのは実効性のある対策を考えることだろう。

1https://www.canon-igs.org/column/macroeconomics/20200324_6309.html

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