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コロナ騒動で鬱憤たまる若者とアクティブシニアの分断が深刻化


卒業式も軒並み中止(イメージカット。時事通信フォト)

 いつまでも元気に活動的なシニアが増える一方で、時間と金を次世代へ何も引き継ごうとしない勝手気ままな姿勢を批判するような言説がネットを中心に目立つようになった。新型コロナウイルスによって生活に様々な不便が生じているいま、これまでよりもそういった声が強まっている。ライターの宮添優氏が、リポートする。

 * * *
 新学期を迎える春は、本当なら新しい出会いへの期待に胸を膨らませる季節だ。しかし新型コロナウイルスが世界中に広がった2020年春に限っては、若者たちは鬱々とした気分にさせられている。全国の小中高校で「休校」措置がとられ、卒業式は取りやめもしくは大幅に規模を縮小して実施。入学式も早々に取りやめとなった学校もある。

 時間があっても旅行へ出かけることも叶わず、アルバイトをしようにも客が少ないからとシフトを減らされて稼ぐことすらできない。自宅幽閉を余儀なくされている彼らが、SNSに次々に不満をぶちまけるのも無理はない。

「俺たちじゃなくて、高齢者の外出自粛を要請するのが理にかなっていませんか? 実際、感染者も高齢者が多く、体が弱っていたり疾患があれば致死率だって高い。それなのに高齢者は自由に遊びまわって、その結果感染したり人にうつしたり、中には亡くなる人がいて"日本で感染拡大が止まらない"なんて言われても。休校後一週間は家に閉じこもってましたが、馬鹿らしくなって普通に友達と遊びまわっています」

 こう話すのは、都内在住の大学3年生・都築翔太郎さん(仮名・21才)。ふだんはニュースをチェックする習慣もそれほどないが、学校へ行けず出かけることもできず、自宅にこもっていたら嫌でも新型コロナウイルスについてのニュースばかりが目につく。すると、高齢の感染者がジムに通っていたり外食に出かけていたり、ライブハウスに足を運んでいると伝えられていた。自身の感染を認識しながら「フィリピンパブ」で遊んでいた人までいる人については、さすがに年代に関わらず無頓着すぎる人だとは思うが……。

 都築さん自身は就職活動も始まるタイミングだが、このまま様々な自粛が続けば、自身の将来にも影響が出るのではないかと懸念する。

 春から新社会人の都築さんの先輩、丸尾研さん(仮名・21才)も、似たような不満を訴える。

「私たちは一生に一度の卒業式も我慢し、家に閉じ込められていました。なのに感染にもっとも気をつけるべき高齢者が自由に遊び回っている様子なのは納得がいかない。確かに、活動的な若い人がウイルスの媒介者になれば、当人の発症がなくても、うつされる高齢者が増えるという理屈は理解できます。ただ、高齢者は遊んでいい、若者が外に出ていてけしからん、怖い、ダメというのは違いませんか?」(丸尾さん)

 丸尾さんが主張するように、すべての高齢者が感染症対策に無頓着なわけではない。だが、テレビや新聞などで報じられた感染者の情報がSNSで繰り返し表示され、早朝からマスク販売に並んでいるのは年寄りばかり、といった写真が拡散される。

そういった情報ばかり目にしていると、若者はウイルスの媒介者になりやすいので外出を控えるようにと念を押されたのに……と不自由を強いられたことへの恨みもわいてしまう。そして、この世の高齢者すべてが好き勝手をしているせいで自分の日常が脅かされているように感じてしまうらしい。

 実は丸尾さん、大学の卒業式後に渋谷のクラブを貸切って「パーティ」を開催する予定だったが、キャンセルを余儀なくされていた。しかし、3月中に規模を縮小してではあるが、開催を再度決めたという。

「クラブの方には自粛要請があったようですが、近くのレストランを借り直してやります。お店的にも、客が減っている中で"助かる"そうです。高齢者が勝手なら、僕らだって多少の振る舞いは許されないと」(丸尾さん)

 感染症対策を台無しにしかねない丸尾さんのプランは、決して正当化できる行為ではない。パーティ開催を引き受けた飲食店も、大きな問題があると言わざるを得ない。だが、丸尾さんに限らず逆ギレしてしまうほど高齢者への反発をおぼえ、ヘイトと言えるほどの感情をもってしまう若者たちが出現しているのも事実だ。新型コロナウイルスの脅威に晒された全世界で、老人ヘイトは拡がっている。民放キー局外報部記者の話。

「アメリカやヨーロッパの若者たちが、コロナウイルスを"老人排除剤"などといってネット上に書き込み茶化しています。海外でも、日本と同様に学校の一斉休校が相次ぎ、若者のフラストレーションが溜まっていて、当局の自粛要請を無視して若者たちはこっそり集まったりしているようです。ドイツでは、自粛反対派の若者が集まり屋外パーティが各地で行われているという話もあり、現地当局が危惧しています」(キー局外報部記者)

 新型コロナウイルスをきっかけに生じた世代間のあつれきは、わが国だけの特殊な問題ではないようだ。日本では「休校なのになぜ子供が出歩いているのだ」といった内容の、高齢者からだと思われるクレームが役所や学校に向けて届けられることが増えている。海外においてもこうした報道を見聞きした高齢者から、市役所などに「クレーム」が寄せられているという。

 世代間の対立はいつの時代にも存在してきた事象だ。最近のあり方がこれまでと少し異なるのは、SNSで自分が気に入った情報ばかり無意識に集めてしまっていることだろうか。その結果、若者による高齢者への感情が「ヘイト」と呼べるほどの憎悪に変わりつつある。この悪循環を断つには、「あなたの見ているネットにすべてがあるわけではない」という現実をひとつひとつ確認させる、地道な作業を重ねるしかなさそうだ。

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