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ご近所のコロナさん問題

 ちょっと家庭の事情もあって複数の町内会を掛け持ちしている、というか顔を出しているんですけど、実家の近くの町内会で「コロナウイルス患者が近所に出た」と言って騒ぎになったんですよ。

 もうね、パニックですよ。

 実家近所の知り合いという知り合いから、誰だ、何処に出たんだ、何処に行ったと連絡多数で情報を求める人で大パニック。

 私なんかは「おい、少しは落ち着けよ」と思うわけですが、しかし騒いでいる人たちからすれば「山本さんは、実際は実家から離れて住んでいるんだから悠長に言っていられるのだ」という話になる。

 でも、こういう「犯人探し」に駆り立てられる人たちの熱量は凄いんです。どこそこの爺さんを最近見かけないとか、あそこの一家が一昨日急に引っ越したとか、そういう人力相互監視モードに簡単になってしまうんです。その前にも、院内感染が報じられた病院に勤務をしていた看護師(私の姪のママ友)がどうやら感染したようだという噂が流れ、住んでいるマンションに入らせるなと住民がマスクとレインコートで「武装」し、マンションの入り口を封鎖して騒ぎになりました。

 その結果、封鎖したはいいもののマンションの中の住民が出られなくなり、買い物に行きたい奥様方と感染の噂のある女性をマンションに入れたくないおっさんとの間で内部抗争が発生し、無事に奥様方が勝利、多数のトイレットペーパーを買い込んだ奥様方に交じって感染を疑われた女性も凱旋帰宅しておられるという物件になりました。もちろん、ご本人はまったく感染しておらず、何も問題なかったようです。

 先日、田中信彦さんが中国における町内会にあたる「居民委員会(居委会)」を解説する記事を発表しておられ、日本と中国の間での町内会の実力の差をひしひしと感じる事件だったなと思い返すのであります。

徹底的な隔離はなぜ実行できたのか~中国の「大衆を動かす仕組み」の底力 https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2020032601/index.html

 日本の町内会で言えば、中国の居委会とは違って単なる寄り合いベースで、中国共産党から指示や連絡や情報が降りてくることはなく、あったとしても市役所の職員さんや市議会議員さんたちから個別に「今度、こういうことがあるのでよろしくお願いします」という要請ベースの話が基本です。

 また、民生委員さんも含めて「やらなければならないこと」に対して「それに対応できる人員」が圧倒的に不足しているので、話を承っても身の回りの手の届く範囲内だけに連絡を回してそれで終わり、ということのほうがどうしても多くなります。もちろん、管理しているマンションの組合や地元の商店街、大規模商業施設の施設長といったところには連絡を回すんですけど、町内会ができることは町内美化や独居老人・障碍者への声かけと付き添い程度で、出来ることは少ないのです。

 そこに降ってきたのがコロナウイルス騒動です。言うなれば、レベル1で銅のつるぎを装備したぐらいのパーティーがドラゴンに遭遇したようなもんです。こんなの受け止められないわけですよ。

 町内会長が最近連絡取れないなと思ったら、奥さんが泣きながら電話してきて保健所や学校や福祉施設などから大量の協力要請がやってきてご本人が精神的にパンクして寝込んでしまった、と。いやお前、先週駅前のドラッグストアで早朝にマスク買うために並んでる元気な姿を見たぞ。

 綺麗事として「住民の問題は地域で解決しましょう」と言われても、受け止める側がヒマな老人とボランティアが大多数の寄り合いでしかない町内会にそんな負担は担い切れないので、何か起きると私のような人間が駆り出されることになるのです。

 で、起きたことは「うちの町内会の区域内にコロナ患者が複数出たと言われたので、どうにかならないのか」という無理難題であります。

 そんなの受け止められるわけねえじゃんかよ。そもそも、コロナウイルス感染者を特定してどうにかしようというのが無理だ。むしろ、それが誰なのか突き止めようとするな。そう思うわけです。

 ところが、次に発生するのは犯人探しのような、コロナ感染者の特定を急ごうとする高齢者の動きなんですよね。どこそこの小学校のママが罹ったらしい、あそこの配達員が怪しい、根拠のない情報が大量に乱舞します。それでいて、本人が本当にコロナウイルスに感染していたら「すみません、あなたはコロナウイルス患者ですか?」と訊きに行く高齢者本人が危ない。

 結果として、町内会の皆さんから「山本さん、若いし元気そうだから訊いて来てよ」と言われる。そこでなんで私に白羽の矢が立つんだよ。お前らは馬と鹿とのハーモニーですか。

 私のやることは「そもそも特定しようとするな、自宅から出ていないかどうか確認するのは保健所や役所の仕事だから」とブチ切れて役割は終わりです。お疲れさまでした。

 さらに日が経って、どこからか「この町内会では感染者が増えて数人いるらしい」という噂が出回り始めます。まあ確かにいてもおかしくはないんだろうけれども、20万人以上いる都市で数人いたところで誰が患者なんだか分かるはずがないじゃないですか。しかし、町内会のお年寄りたちは「市長さんは頑として教えてくれないが、市議会議員さんはうまくやってくれて、誰が患者なのか知っていると言っていた」と自ら不安定な噂を拡散している始末です。

 この感覚、どこかで感じたなあ。そうだ、「人狼」だ。みんながみんな、あいつが狼ではないかと疑心暗鬼になっている。医学的にではなく、民主的な議論の結果「あいつが狼である」と認定されて吊るされるという。コロナウイルスが怖すぎて、誰が感染者かという問題にのめり込んだ結果、確たる話などどこにもないのに、誰かが感染者に違いないと探し出して安心しようとするのです。

 そして、自分自身が感染者になってしまっているかもしれないという認識もない。

 そりゃあコロナウイルスは恐怖かも知れないけど、まずは不要不急の外出はなるだけ行わず、万一出かけなければならないとしても手洗いは怠らず、たくさん食べて良く寝て万が一罹ってしまっても対処できるように心身を健やかにしておくことが最大の対策であるわけです。

 いまでこそお前らコロナ感染者が怖ろしいって言ってるけど、つい先日、小池百合子が都知事のふりして「重大局面」とかいう記者会見をやった日、大挙して24時間営業のスーパーに買い占めに走ってたじゃねえか。普通はそういうところで感染する危険があるんですよ。黙って家帰って腹筋でもやってろ。そのように思います。

 そして、今度は嫁選びに失敗した総理大臣の安倍晋三さんが記者会見をして、なぜか「やるべきことは国民の結束だ。町内会はもっと連絡を密にして毎日会議をやろう」とかお年寄りは言い始めるのです。お前ら全然話を聞いてないだろ、外出するな、集まるなって言ってんだよ。なに町内会の意義にいまさら目覚めてるんだよ。お前の葬式を今日出してやろうか。

 今日にいたっては、さっき聞いた話では町内会年寄り有志が連れ立って、駅前の繁華街や飲食店にたむろしている若者たちに解散のお願いをするのだと雪の中を出かけて行ったと聞きました。何してんだよ。そもそもお前ら今朝もドラッグストアの前に並んでただろ。どの口で若い人たちに「集まるな」と言うつもりなんでしょうか。

 家にいろって言ってんだよ。たったいま、声を枯らして電話越しに怒号をお伝えして私も少し興奮しておりますが、どうか皆さまに置かれましては穏やかなコロナ自粛月間をお過ごしいただけますよう。

やまもといちろうメルマガ「人間迷路」

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