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新型コロナでロックダウンした“戦時下”のイギリスから日本が学ぶ教訓とは

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[ロンドン発]新型コロナウイルスの感染爆発で、イギリスではボリス・ジョンソン首相が3月23日夜、国家非常事態を宣言し、当面3週間の自宅待機を命じました。しかし首相、保健相はじめ対策の中枢が軒並み感染。チャールズ皇太子まで感染しました。まさに“戦時下”のイギリスは大丈夫か、日本への教訓は何か――最前線から報告します。

ロンドンの繁華街ピカデリー・サーカス

武漢の5倍にのぼる病床数の臨時病院をロンドンに設置中

ロンドンのウォーターフロント再開発地区ドックランズの国際会議場、エクセル展覧会センターでは新型コロナウイルスの患者を運び込む4000~5000床のNHS(国民医療サービス)ナイチンゲール病院の設置が英陸軍によって急ピッチで進められています。

エクセルは東京ドーム(建設面積4万6755平方メートル)2つ分が入る広さ(10万平方メートル)。患者が酸素を吸入するための液体酸素タンクも外部に設置されました。ナイチンゲール病院で働くことになるナイジェル・ケロウ医師が設置状況を連日ツイートしています。

中国では14の臨時病院が建設されましたが、湖北省武漢市に設けられた臨時病院は1000床でした。ロンドン南西部の、あるNHS(国民医療サービス)病院マネージャーは筆者にこう打ち明けました。

「エクセルに収容されるのは治療が困難な重篤患者だけです。ロンドンの拠点はエクセルを中心にロンドン東部の病院。マンチェスターやバーミンガムにも同じような臨時病院が設けられます。マンチェスターの友人は3月に入ってから休みがないそうです」

バーミンガムの展示会場は5000床、マンチェスターの会議場は1000床。いずれも4月中旬には改装が完了し、イギリス全体で新型コロナウイルス患者のために3万3000床を確保する予定です。イギリスは“巨大津波”を防げるかどうかの、まさに瀬戸際です。

ガラガラの地下鉄

「今のイギリスは2週間前のイタリアと同じ」

マネージャーは「今のイギリスは2週間前のイタリアと同じ。いつひどくなるか、それまでに何ができるかです」と話します。

このマネージャーが勤める病院の陽性患者は28日の時点で128人。集中治療室(ICU)ベッド数は34床ですが、来週には50床まで拡張。院内はレッドゾーン(防護具を完全装備)、アンバー(琥珀色)ゾーン(レッドゾーンより軽い防護具)、グリーンゾーン(防護具なし)の3ゾーンに分けられています。

「毎日ゾーンの大きさは変わり、レッドゾーンがどんどん大きくなっています。イースター休暇(今年は4月12日)ごろにピークがやって来るだろうと言われています。ICUのベッドだけでなく人工呼吸器も全然、足りてない。テレワークのためのパソコンも奪い合いです」

同病院では死者の数は先々週3人、先週7人、今週23人と増加。「これまで医師、看護師の数を増やすことが優先され、ICT(情報通信技術)への投資まで手が回らなかった。紙とペンを使った報告が多く、死者の集計が翌日ではなく翌々日に反映されることがあります」と言います。

イギリスも日本ほどではないにせよ、手間と金がかかるPCR検査の実施能力には限界があり、自己隔離中の医師や看護師が実際に陽性なのか陰性なのか判定できません。英政府は抗原検査による迅速診断をNHSの最前線のスタッフから順次、実施できるよう導入を急いでいます。

「国家非常事態が宣言され、都市が封鎖(ロックダウン)される前にパブやレストランなどの密閉空間で濃厚接触していたのがどれぐらいの数字になって現れてくるか、恐ろしいですね。日本もこうなる前に政府の指示には従ってほしいですね」とアドバイスします。

マスクをする人が目立つようになった

看護師長「突然、味覚や嗅覚がなくなった」

同病院では内科担当看護師長も新型コロナウイルスに感染し、発症に気付いた時の様子を同僚に報告しました。

「3月14日、それは勤務中に始まりました。全体的に気分が悪くなり、いつからそうなったのか全く分かりませんでした。味や匂いを感じなくなり、熱もないのに体がぽかぽかしました。病棟が暖かいからと思いました。とてもひどい疲労感がありましたが、忙しい勤務シフトのせいだと思いました」

「翌日、息切れ、発熱、疲労を感じ始めました。集中するのに苦労し、目がくらむように感じました。車を運転しようとしたあと、どこを走ったのか思い出せないのですが、新型コロナウイルスに感染したことに気づきました。それから2、3日のことは本当に思い出せません」

「たっぷり水分をとってからパラセタモール(解熱鎮痛薬の一つ)を服用するまでの間、眠りに落ちました。乾いた咳は出ていませんが、息切れは続いています。私はほどほどに健康な成人男性であり、この10年間、病気で休んだことはありません」

「何をすべきかは分かっていましたが、それでも驚きました。気分が悪くなった場合は上司のマネージャーに知らせ、家に帰って自己隔離して下さい。わずか1週間で職場復帰して同僚をサポートできることを今は本当にうれしく思います」

イタリアでは80歳以上の致死率は20.2%

イギリスではジョンソン首相、マット・ハンコック保健相、対策の柱となる数理モデルを作ったインペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授ら対策の中枢が次々と感染。クリス・ホウィッティ・イングランド主席医務官まで症状が出て自己隔離中です。

ジョンソン首相(Getty Images)

市民も気が気ではありません。アメリカの医師会が発行する米医学雑誌ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(JAMA)に掲載された論文によると、イタリアでは今年1月から無症状病原体保有者による「ステルス感染」が広がっていたようです。

イタリアの感染者は3月28日時点で9万2472人、死者は1万23人。死者は中国を3倍以上も上回っています。ちなみに中国の感染者は8万1999人。イギリスは感染者1万7312人、死者1021人です。イタリアと中国の、感染者に対する死者の割合(致死率)を見ておきましょう。

イタリアの致死率 中国の致死率
全体 7.2%(死者1625人) 2.3%(死者1023人)
0~9歳 0% 0%
10~19歳 0% 0.2%(同1人)
20~29歳 0% 0.2%(同7人)
30~39歳 0.3%(同4人) 0.2%(同18人)
40~49歳 0.4%(同10人) 0.4%(同38人)
50~59歳 1%(同43人) 1.3%(同130人)
60~69歳 3.5%(同139人) 3.6%(同309人)
70~79歳 12.8%(同578人) 8%(同312人)
80歳以上 20.2%(同850人) 14.8%(同208人)

70歳以上、特に80歳以上になると致死率がぐんと上がっていることが一目瞭然です。

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