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定期試験廃止の公立中学校長「生徒の学力は確実に上がった」

教え子と共に西郷校長も”卒業”する(撮影/浅野剛)

校則を全廃するユニークな取り組みをしてきた西郷さん(撮影/浅野剛)

 すべての校則を廃止したことで話題となった東京・世田谷区立桜丘中学校。10年の在籍期間のなかで、学校を大幅に改革した校長の西郷孝彦さん(65才)は、この3月で教員生活を終える。4月2日には、教育評論家の尾木直樹さん、麻布学園理事長の吉原毅さんとともに、新書『「過干渉」をやめたら子どもは伸びる』を上梓する予定だ。

【別写真】自身も“卒業”する西郷校長が、卒業式でにこやかに歩く

◆不必要な規則を除いたら学力が比例して急上昇

 親として気になるのは、こうした自由な学校生活を送る中で、学力が伸びるかどうかということだろう。公立中学校の宿命として、3年後には高校受験が控えているからだ。

 桜丘中学校では、定期テストの廃止が2018年の生徒総会で議決され、2019年度から実行された。そして今年2月には、定期テスト廃止後初めての高校受験を迎えた。「定期テストがないと、高校受験を乗り越えられないのでは」と不安視する声もあったそうだが、それはいい意味で裏切られた。

「2018年までは世田谷区内の中学校の学力テストの平均値が各校に伝えられたのですが、本校は非常に優秀な成績でした。この10年間で、生徒の学力は、確実に上がったといえます」(西郷さん・以下同)

 同校では、定期テストの代わりに、10点×10回のように小テストに分けて、週3回程度の試験を行うスモールステップ方式が採用されている。

 また、3Dプリンターやロボット操作のためのプログラミング教育を導入するほか、教科学習と英語学習を統合したアプローチのCLILも行われている。これは、“英語を使って家庭科の時間に料理を学ぶ”といったもので、英語教育の質的向上が見られ、生きた英語が身につきやすいと高評価を得ている。

 10年前は、都立の難関校である日比谷高校に合格する生徒が1人いるかどうかという状況だったが、ここ数年では進学者数を飛躍的に伸ばし、昨年度は5人が進学している。そして今年度は、受験傾向に大きな変化が見られた。

「本校に校風の似た、自主性に重きを置く高校を選ぶ傾向が顕著でした。特に今年は都立西高校を受験する生徒が増えました」

 西高校は、東大・京大合格者を年間各20人ほど輩出するトップクラスの進学校。難易度の高い独自の入試問題で知られるが、一方で生徒の意志や自主性が尊重されると評判だ。

「ほかには国際色をうたう高校を希望する生徒が多いですね。本校は英語の授業が充実していることもありますが、行動さえ起こせば、“世の中は自分の力で変えられる”と日頃から伝えていることもあり、“同調圧力”の強い日本にとどまらず、海外を舞台に活躍したいという生徒が増えています」

 本誌・女性セブン編集部で調べたところ、今年度は、都立では西高校に11人が合格したほか、日比谷高校に2人、国際高校に5人が合格している。慶應や早稲田など私立の人気校にも複数が合格した。

 超難関校として知られるラ・サール学園(鹿児島)に進学する生徒もいる。

「この生徒はラ・サールのことを自分で調べて“桜島をぐるっと回る遠足があって楽しそう”とか、“男子ばっかりで気を使わないのがいい“と、志望動機を目を輝かせながら話してくれました。誰の強制でもなく自分から“ここに行きたい”と決めて勝ち得た合格です」

 なぜこれほどまでにめざましい成果が出たのか。その答えは、“偏狭な受験制度を気にしない指導”にあると西郷さんは考えている。

「一般的には“自分の内申や偏差値はこのくらいだから”という発想で、志望校を選択します。でもここでは、“自分の個性に合う高校はどこか”“自分がやりたいことのできる高校はどこか”を考えて選ぶ生徒がほとんどです」

 偏差値ではなく、“自分とのマッチングで選ぶ”。それは、同校に広く浸透している。生徒たちに聞いてみると、スポーツの強豪校を選んだ生徒もいたし、バレエの道を究めるために高校進学はやめ、海外に飛び立つ生徒もいた。芸能界を目指す生徒もいれば、カメラマンになりたいと、専門的な高校を見つけてきた生徒もいた。

“やればできる”という気風は、生きづらさを抱え、教室に入れず廊下で過ごす生徒たちにも行き渡り、彼らも全員が自分に合った学校を選び、面接も試験対策もして合格を掴んだ。

 自分で選んだ進路。進学後も意欲的な毎日を送るはずだ。

◆撮影/浅野剛

※女性セブン2020年4月9日号

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