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完成直前「謎の死」を遂げた主人公 ドキュメンタリー映画『馬三家からの手紙』監督インタビュー - 野嶋剛

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 3月21日に東京・新宿の「K’scinema」で、ドキュメンタリー映画『馬三家からの手紙』が公開された。

 中国・瀋陽の「馬三家労働教養所」(以下、馬三家)に収監された「法輪功」のメンバー、孫毅(スン・イ)が、その過酷な拷問や弾圧、釈放後も続く監視、嫌がらせなど、自身やメンバーに対する人権侵害の実態を告発する作品だ。

 2012年、米オレゴン州の女性が購入した中国製のおもちゃの箱から、英語で書かれた手紙が見つかった。馬三家の実態を訴えるSOSで、世界で大きな反響を呼び、中国の労働教養制度の廃止にもつながった。

 この手紙を馬三家での作業中に輸出用のおもちゃの箱に隠した人物こそ、本作の主人公・孫毅である。

 彼は石油会社の資源探査が専門のエンジニアで、学歴も高く、英語も堪能だった。しかし、中国で「邪教」として弾圧されている法輪功を修めたことで、馬三家に送られてしまう。

 2010年に釈放された後も、監視と拘束が断続的に続き、映画制作の過程で、身の危険を感じて中国からインドネシア・ジャカルタに亡命したが、映画が完成する前に突然の不審死を遂げた。

 孫毅と二人三脚で作品を作り上げ、日本上映にあわせて来日した中国系カナダ人のレオン・リー監督に、映画の中ではほとんど触れられていない主人公・孫毅の死をめぐるミステリーについて、詳しく話を聞いた。

*一部映画の内容を含みます

「同じリスクなら映画を撮ります」

インタビューに応じたリー監督(筆者撮影)

野嶋剛 映画の中では、孫毅と監督の対話も描かれていますね。最初は監督から彼に接触したのですか。

レオン・リー そうです。

 2012年の年末、米国のニュースで孫毅の手紙が報じられました。悪名高い馬三家のことは知っていましたが、驚いたのは、その馬三家の内部から密かに手紙を出し、遠く離れた米国の女性が受け取ったというプロセスです。手紙を書いた人にどうしても会いたくなりました。

 とはいえ、それは海の中の針を探すようなもので、ジャーナリストや活動家など、中国の知人たちに探してもらいましたが見つかりませんでした。

 それから3年が経過し、諦めかけたときに、「見つかった」と連絡が入ったのです。信じられませんでした。最初はSkype(スカイプ)を通して彼に話を聞き、筆跡も確かめて、本人だと確認できました。

野嶋 映画に出ることは当然、孫毅に大きなリスクが生じます。本人は出演を最初からOKしていたのですか。

リー 私が「あなたの話を映画にしたい。ですが、あなたの安全に影響する心配もあります」と言うと、孫毅はこう答えました。

「私はいま法輪功のチラシを作り、法輪功を学ぶ人々をサポートしています。映画を撮って捕まっても、チラシ作りで捕まっても、結果は同じです。同じリスクならば、私はあなたを信じて映画を撮ります」

 それで作品を撮ることになったのです。

古い友人のような感覚

野嶋 監督は、彼と何度会いましたか。

リー 1度だけです。映画にも出てきますが、亡命先のインドネシアで会いました。私はブラックリストに載っているので、中国には行けません。それまではSkypeでの対話でした。

野嶋 孫毅とインドネシアで会った時はどんな会話をしましたか。また、監督の彼に対する印象はどうでしたか?

リー 初めて会ったのに、古い友人のような感覚を抱きました。作品制作のために、パソコンの画面を通してずっと話し合ってきましたからね。

 孫毅は本当に温かみのある人でした。インドネシアは暑くないか、慣れないところはないか、何を食べたか、撮影チームのみんなは大丈夫かと、とにかく気を配ってくれるのです。優しい兄のように感じられました。

 映画の中で、手紙を受け取った米国人の女性がインドネシアに来ます。孫毅は彼女に花束を渡しましたが、撮影の前の晩にこう言うのです。

「アイヤー、花を買いにいかなきゃ。遠い所から会いに来てくれるのだから」

 孫毅はインターネットで「友情」を意味する花言葉の花を探しました。ところが、その花がとても高くて、100米ドルぐらいしたのです。

 私が「映画の予算から出します」と言っても、「このお金は私が出さないといけない。自分に会いに来てくれるのだから」と聞きません。彼はそんな人でした。

「家で死んでくれ」という警察の意思

野嶋 孫毅は2016年の亡命で、どうしてインドネシアを選んだのでしょう。

リー 当時、彼は再び拘束されて体調をひどく崩していました。警察は、彼が拘置所で死ぬことによって責任を問われたくないので、一時的に釈放したのです。「家で死んでくれ」という警察の意思でした。

 我々は、釈放の一瞬のチャンスにかけて彼を救い出そうとしました。ただ、外国のどこへ行くのかという問題がありました。条件の1つは、中国旅券の保持者がビザ免除で行けるところか、空港でビザ取得ができるところ。もう1つの条件は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)があるところです。そうでないと、彼は追放されてしまいます。

 じっくり考えて、インドネシアを選択しました。幸い、警察は彼がもうすぐ死ぬと信じていたようで、手配はされていませんでした。北京を避けて、他の都市の空港を使って出国しました。

野嶋 映像で見る限り、福建省アモイの空港ではないですか?

リー そうです。インドネシアへ、アモイから直行便が飛んでいました。同時に私たちはジャカルタのUNHCRに連絡し、保護証明を取得させました。彼の出国の成功は幸運でしたが、冷や汗ものでした。

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