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任官拒否防大卒業生は非国民

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清谷信一(軍事ジャーナリスト)

【まとめ】

防衛大学「任官拒否」の卒業生35名は卒業式に出席許されず。

・防衛相、「任官拒否」者を卒業式に参加させぬ方針、問題なし。

・現役隊員を民間に出し、数年後自衛隊に戻す人事システム必要。

今年も3月22日に防衛大学の卒業式が行われたが、いわゆる「任官拒否」をした卒業生35名は卒業式に出席が許されなかった。このような差別は第二次安倍政権になってから始まった。そもそも「任官拒否」という言葉には差別や非難というネガティブなイメージが感じられる。

筆者は3月22日の大臣会見でこの問題を河野防衛大臣に質した。

Q:任官拒否については、第2次安倍政権から任官拒否を卒業式に参加させないというのは、いじめではないでしょうか。任官拒否をするということは、防衛大学校に入ってから、考え方が違うとか、自分が向いていないとか適性のこともあると思いますし、そういった人達をのけ者にする。卒業した人間を、やっぱりみんな一様にやるべきではないでしょうか。そういうふうには思われませんでしょうか。

A:特に思いません。

Q:先ほどの任官拒否の問題なのですが、任官拒否というのは非常にネガティブな印象を受けるのですが、これを変えるという御意志はございますでしょうか。任官拒否をした人達の中には、防大の中でのいじめ体質を嫌がったという人達はいらっしゃるんじゃないですか。実際問題、殴る蹴るは当たり前で体毛に火を点けるとか、風俗に無理やり行かせるとか、教官が主導して詐欺で200人の学生もやるとか、こんな連中と働きたくないと思うのは、やはり人情というところがあるのではないでしょうか。任官拒否を世の中で言う「いじめ」と非難する人が多いのですが、防大の方にもそういう色んな問題的な体質があるのではないですか。その改善等をやろうという何か努力はなさっていますでしょうか。

A:当然にパワハラやいじめ、あるいは傷害というのは、厳罰をもって臨まなくてはいけないと思っております。

河野大臣の見解は「任官拒否」という言葉にも、「任官拒否」者を卒業式に参加させない方針も問題がないとの見解だ。

写真)河野大臣記者会見 出典)防衛省Twitter

だが、これでいいのだろうか。このような差別的な「任官拒否」に対する仕打ちは、防に入れば任官するが当たり前である、という無言の圧力を受験生に与えるだろう。任官しない人間を「非国民」呼ばわりして卒業式にも出席させないという差別を続けるならば、それは戦時中に徒党を組んで女性のパーマや晴れ着を切って回った国防婦人会と同じメンタリティである。こういう卑劣なことをやっていれば優秀な学生を逃すことになるだろう。

「防大卒業後、任官しなくてもいい」というのは防衛省も定めたルールだ。任官しない理由はそれぞれだろう。入学して学んでみて、自分には適正がなかった、自衛隊が思っていたような組織ではなかった、在学中に別にやりたいとができた、あるいは後述するようないじめというもあるだろう。

そのように考えて任官を選ばずに別な進路を決めた学生を裏切り者扱いして、卑劣な仕打ちをすることは防衛省だけではく日本国の品格や常識すら疑われる

このような差別的な仕打ちは、任官拒否なら金返せという世論を増やすことになる。だがそれは非常に短絡的である。軍隊も自衛隊も定年までに術学校や幕僚指揮課程など隊内の学校や教育課程で何度も学ぶことになる。幹部(将校)は士官学校(防衛大学)を卒業したら教育が終わるわけではない。また任官すれば金を返さなくていいならば、着任初日で止めても文句は言えないことになる。また経済的に余裕がない家庭の師弟は防衛大を回避するようになるだろう。

その理屈ならば、自衛隊に入った人間は定年まで勤めないと何がしかの教育にかかった費用を返還しないといけなくなる。そもそも防衛大学の学生は職業として学んでいるわけで、それを返せというならば自衛隊を途中で辞める人間はそれまでかかった人件糧食費や教育費用を返さないといけないことになる。

元防衛大臣だった中谷元議員も尉官で退職している。彼は政治家になって、防衛大臣を務めた。そのような多様性や個人の選択の自由を否定することになる。定年までそのようにして縛るは民主国家とありようとは言えない。

写真)中谷元防衛大臣 出典)Jonathan R. Kulp, U.S. Navy

任官しない理由には大臣会見でも質したいじめの問題がある。防衛大学では殴るけるは当たり前の旧軍同様に陰湿ないじめが恒常化している。更には陰毛に火を付けるとか、風俗に行くことを強要されたり、これはいじめではなく、犯罪である。挙げ句は教官が始めた詐欺に200人もの学生がグルになったとかの事件まで起こしている。ところ防衛大ではその犯罪を組織的に隠蔽する体質がある。だから教官が始めた詐欺に200名もの学生が手を染めるのだ。普通の大学ではありえない不祥事だ。

防衛大は全寮制、つまり密室社会だ。だから陰湿ないじめが起こりやすい。そしていじめや犯罪を咎められない雰囲気がある。いうならば看守も囚人もぐるになったような社会だ。このなかでいじめや犯罪に異を唱えるのは大変勇気がいる。できない学生が大部分だろう。そしてそれが「当たり前」となって社会の規範から外れたモラルを持つようになる。

このような閉鎖社会では自分たち「常識」こそが常識であり、それを否定するものは敵として攻撃や排除の対象となるからだ。防衛省、自衛隊はこういう事に関する告発や訴えを黙殺、あるいは被害者を「敵」と認定して排除する組織なのだ。

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