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「属人性排除」+「ローコストオペ」の最強モデル

 私が最近セミナー等でとりあげる元気な会社にアークランドサービス(3085)スタジオアリス(2305)があります。前者はかつ丼「かつや」の飲食チェーン、後者はショッピングモールに必ず入っている子供写真館として、ご存知の方も多いはずです。この2つのビジネス、一見何の関わりもないもないように見えますが、経営者目線で見れば、そのビジネスモデルが極めて似通っていることに気がつくでしょうか。
 

誰でも揚げられるようになったおいしいとんかつ

 アークランドサービスのここ5年の業績は極めて堅調で、「かつや」を毎年、直営、FC双方の形式でハイペースで出店し、既存の飲食店、特に町のとんかつ屋さんから客を奪い続けています。
 このお店では、通常のかつ丼が一杯490円で提供されています。店舗に行ったことのない方は「安かろう、まずかろう」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。少なくとも私は町の(有名店ではない)とんかつ屋とそん色ない味とクオリティを実現していると思います。それもそのはず、豚肉は北米・カナダ産の高品質のものを大量購買して、タイムリーにチルド状態で店舗配送する体制を確立しており、衣は生パン粉にこだわっています。最も重要な揚げ工程ですが、こちらは、完璧に温度管理された独自開発の「オートフライヤー」のおかげで、アルバイトが揚げてもも職人とそれほど変わらないクオリティのものが提供されます。
 その結果、店長一人が正社員、残りはアルバイトという人員構成とシンプルなオペレーションで、十分においしいかつ丼を割安価格で提供できています。ちなみに正社員の平均給与は、平均年齢33歳で479万円です。
 

誰でも撮れるようになった子供達のベストショット

 スタジオアリスのここ5年の業績もなかなか堅調です。多彩な衣装とディズニーキャラクター、従業員の巧みな接客で子供をあやし、デジカメを連写して、記念写真需要を総なめにしています。最近では、マタニティセミナーを全店舗で展開し、無料で妊婦さんの写真を撮って、台紙に貼ってプレゼントしています。当然この台紙は、半分以上が空白です。妊婦さんは、出産後に赤ちゃんを抱いて再びスタジオアリスに戻ってきます。そして子供が三歳になれば、今度は七五三でロックオンです。この「出産前からの囲い込みモデル」は需要創出という視点で見てもなかなか良くできていますが、肝心の写真のクオリティはどうなのでしょう。ちょっと前まで学生をやっていたような若い従業員に、写真館でこの道何年のプロと同じレベルのものが撮れるのでしょうか?
 心配するには及びません。ここでは日本が世界に誇る、高性能プロ用デジタルカメラが大活躍しています。細かな調整の必要はほとんどありませんし、とにかく何十回も連写して、モニター画面に全て並べて映せば、素人に近いカメラマンが撮った写真でも、ベストショットの1枚や2枚は必ず見つかります。
 その結果、平均年齢28歳、平均給与374万円の正社員と、子供をあやすアルバイトさんだけで、立派な写真館が運営できるようになりました。こうして町の写真館は次々に客を奪われ、廃業に追い込まれています。
 

商店街ビジネスは、「属人化の排除」と「ローコストオペ」で大きく伸びる

 これまで商店街の中にあったような、店主の技量や個性(属人性)が売りだった商売ほど、技術進歩や環境の変化でその「属人性」が排除され、ローコストオペレーションモデルが確立されると、業界の先行者は一気に成長し、商店街の個人商店は没落します。
 経営者目線で見れば、「属人性の排除」と「ローコストオペレーションモデル」の組み合わせをいち早く実現することは、事業拡大の王道であるといえるでしょう。また、投資家目線で見れば、旧態依然の業界において、こうした企業をいち早く見つけて投資するところに、その「目利き力」の真骨頂があると言えます。メガネトップしかり、QBハウスしかりです。
 

マックジョブ化の流れの中でこだわるべき属人性とは?

 ただ、従業員目線ではどうでしょうか。これまで苦労して技術を身につけ、誇りを持って続けてきた自分の仕事がある日突然、「誰でもできる仕事(英語ではマックジョブというみたいですね)」に変わり、家族を支えるほどの稼ぎは得られなくなります。技術革新に人件費の安い新興国の台頭が加わり、今、多くの業種でこの「マックジョブ化」が進んでいます。誰もが経営者にはなれない以上、私達は、生き残るために、自分の専門領域の中で、「徹底的に属人性にこだわれる分野(ずっと個人の差別化要素が残る分野)はどこなのか?」ということを日々考えて、仕事をしていく必要があるということなのかもしれません。
 

まずはビジネスの肝を見抜く眼を養いませんか

 余談ですが、8月24日に、究極のローコストオペレーション小売業とも言える百円均一ショップの事例を用いた企業分析研修を日経ビジネススクールにて実施します。単純な財務分析に留まらない総合的な企業分析のスキル(私はこれをビジネスの肝を見抜く眼と呼んでいます)を基礎から身につけたいと思っている法人営業担当者、取引先の審査担当者、個人投資家の皆さんにはうってつけの内容になっているかと思いますので、ご興味のある方は是非ふるってご参加下さい。普段、本業が忙しくてなかなか公開講座を担当できないのですが、私は年に1回、こちらの講座で「ブログ見ました」と声をかけてくれる皆さんとお話できることを楽しみにしています。

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