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軽症の間に「かぜ」と「肺炎」を見分ける3つのポイント

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「かぜ」と「肺炎」を見分けるにはどうすればいいのか。病理医の市原真氏は「かぜではなく肺炎の場合は、症状が強く、そのレベルは経験のないものになる。そうした場合は医療機関を受診するべきだ」という――。

※本稿は、市原真『どこからが病気なの?』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、筆者が加筆・修正しています。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

かぜは「自力で勝てる感染症」

かぜは、「わりと短い期間で、人間が自力で勝てる感染症」のことをさす。

一方で肺炎とは、「人間が勝つのに苦労する、あるいはときには負けてしまうこともあるため、医療が慎重に手助けしたほうがいい呼吸器系の感染症」をさす。

本質的には、「放っておいても治るものがかぜ」。これが全てといっていい。

医療者はひっくり返るかもしれない。なんだその雑な定義は、と。でも診断をうける患者側はこの定義で覚えておいてかまわない。

典型的なかぜは、「鼻水、鼻づまり、ノドの痛み、だるさなど、複数の場所に複数の、軽度の症状が出てしばらく続いたあとに、特になにもせずとも治る」。

ここにはふたつのポイントがある。(1)複数の場所に軽い症状が出ていること、(2)時間経過と共に勝手に治ったということ。

(1)は治る前にある程度判断がつくが、(2)のほうは治るまでは判断できない、つまり時間経過を追って様子をみないとわからない判断基準であることに注意して欲しい。

たとえば、(1)をひっくり返してみよう。鼻水はないがノドだけがやけに痛い、あるいは鼻水も出ないしノドも痛くないが強いせきだけが出る場合(症状の場所が一箇所だけだが強い場合)は、実は「かぜっぽくない」のである。

例えば、ガンコなせきだけを症状とする場合、医者は(かぜにしては変だな、肺炎かもな……)と思って診療にあたる。

次に、(2)もひっくり返してみよう。何もしないで放置していたところ、熱が下がらず、せきが治まらず、全身のだるさがどんどん悪化した場合、つまりだんだん悪くなった場合は、「かぜっぽくない」。特に、せきと発熱が続くときには肺炎かもしれない。

病気を見極めるには時間経過が必要不可欠

(1)はお手軽な判断基準だ。症状が複数の箇所に及ぶかどうか、というのは確認がしやすい。ただ、意外と医療者以外の人は知らない。

これに対し、(2)はなんだか手遅れ感がある。「黙って見ていて悪くなったらかぜではない」なんて、ひどい!

でもこれこそが医療の本質である。病気を見極めるには時間経過が命だ。そして、未来は決して100パーセント予測できるものではない。

時間をかけて見てみないとわからない部分が必ず存在する。

イラスト=うてのての

かぜはまさに、「時間経過を加味しなければ診断できない病気」の代表である。原因となるウイルスが複数あるために、○○ウイルスが原因なら絶対かぜだ、といった定性的な一本道診断は不可能。

たんを採ろうが、血液を採ろうが、CTを撮ろうが、わからないときはわからない。診察室にいる瞬間だけの判断で「かぜである」と診察しきることは難しい。

ほとんどのかぜは診察室で予測ができる

こう書くと、なんだか現代医学もあてにならないなあ、と思うことだろう。でも、もう少し話を聞いてほしい。

実際には、ほとんどのかぜ(放っておけば治る軽度のウイルス感染症)は、診察室で「かぜでしょう」と予測が可能である。決定ではないのだが、かなり精度の高い予測ができる。その感覚は天気予報に近い。

人の体調にしても、天気予報にしても、今から1週間以内に起こることはわりと正しく予測できる。2週間後とか1カ月後の天気は当たらないことが多いが、これから3日間の予報が外れることはめったにない。

今日から3日間はたぶん雨が降るでしょう、と言われるのと、今日から3日くらい鼻水が続いて治るでしょう、と言われるのは、構造的にはかなりそっくりだと思う。どちらも基本的に当たる。

ただし、本当に雨が降り続いたか、本当にかぜだったか否かは、3日経ってみないとわからない。

このことを医者はよくわかっているから、降水確率が40パーセントくらいのときに念のため折りたたみ傘をカバンに入れてでかけるような気持ちで、患者に対して「かぜだと思いますが、悪化したらもう一度病院に来てください」と言う。

最も疑わしい確率にベットしておき、確率は低いがそれよりも一段悪い状況に備えておくのだ。

人体の防御システムはすごい

かぜの理解を進めるために、人体についての知識をもう少し詳しく書く。

人間の体は、24時間・365日、常に外敵の脅威にさらされている。ウイルス、細菌、気温、湿度、日光、食物に含まれる毒性のある物質……これらの“敵”を、完全にゼロにすることは絶対にできない。

ゼロどころか、私たちは常に、数百万、数千万の「敵になるかもしれないもの」に囲まれて暮らしている。でも案ずることはない。

生まれてこの方ずっとそうなのだ。あなた方はすでに、この過酷な環境をものともせずに、生きて暮らしている。これくらいの敵に取り囲まれている状態が「普通」なのである。

「世界はウイルスや細菌で満ちあふれている」

世界はそもそも、ウイルスや細菌で満ちあふれている。それがデフォルト。

必要以上に「除菌」を気にする必要はない。大事なのは、普通じゃない量(もしくは、種類)のウイルスや細菌に出会わないように気を付けること。そして、自分の体が敵を排除するシステムがきちんと働いていること。

人間の体は、生まれてからずっと、敵を排除して味方だけを取り込むシステムを発達させている。

たとえば鼻毛だ。空気中のホコリやチリ、さらにそこに含まれるウイルスや細菌をからめとって外に押し出す働きをもつ。きっとあなたも聞いたことがあるだろう。でも人体に敵が入ってくるのを防御する手段は鼻毛だけではない。

そもそも皮膚という皮が強烈な防御力を発揮している。お風呂に入っても水が侵入しない時点でとんでもなく高性能なバリアであることがわかるだろう。自然界に存在する、金属以外の多くは基本的に水が浸みるのだから、皮膚がいかにすごいかという話だ。

鼻毛、鼻水、胃酸……身体を守る頼れる守備隊

ほかにも鼻水をはじめとする粘液。鼻水でトラップされた外敵は、鼻をかむことで、あるいはくしゃみで吹き飛ばすことで、鼻水ごと体外に排出される。あるいは鼻からのどの奥を通って胃に流れ込んで、胃酸で倒される。

これらの幾重にもとりまく防御壁を突破したウイルスや細菌は、体の中に入ると今度

は多くの免疫……すなわち体内を守る守備隊によって攻撃を受ける。

つまり、体の周りに存在する無数の敵は、まずそう簡単には体内に侵入できないし、もし侵入しても防御側の総攻撃によって倒されてしまうことがほとんどなのである。あらゆる生命は、生き続けている限り、この敵を打ち倒すシステムを常時フル稼働させている。

その上で、なお防御をすり抜ける敵=病原体が、低確率で現れる。数々の防御を運良く(悪く?)かいくぐったウイルスが、体内で勢力を拡大しようとする。これがかぜの正体だ。

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