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”憲政の常道”を逸した、公約違反の法案可決後の「近いうち」解散の3党合意

(1)野田佳彦首相は先程(8日夜)、谷垣禎一自民党総裁、山口那津男公明党代表と会談し、3党が修正合意した消費増税関連法案を早期に成立させ、法案成立後「近いうちに信を問う」ことで合意したという。
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 2012年 8月 8日 22:12 JST
解散時期「近いうちに」=増税法案、成立へ―民自公3党首が合意

 野田佳彦首相は8日夜、自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表と国会内で会談し、3党が修正合意した消費増税関連法案を早期に成立させることで合意した。自民党が参院採決の条件としていた衆院解散の確約に関しては、法案成立後、「近いうちに信を問う」ことを確認した。これにより、増税法案は早ければ10日にも参院で採決され、成立する見通しだ。
 党首会談は、午後7時半から首相と谷垣氏が約40分間会談したのに続き、山口氏を交えてさらに約10分間行われた。首相はこの後、記者団に「先送りをしない政治を確認できた。(自公両党首の)重い判断に心から感謝したい」と述べた。解散時期を明示したかどうかについては「そういうやりとりはしていない。首相として、解散時期を具体的に明示的にすることは控えなければならない」と述べた。
 自民党は、内閣不信任決議案と首相問責決議案を提出する構えを見せていたが、党首会談で合意したことを受け、提出を当面見送る。新党「国民の生活が第一」など野党6党が提出した不信任案と参院7会派が出した問責案に自民、公明両党は同調しない方針で、両決議案は否決が確実となった。 
[時事通信社]

(2)まず、消費税増税関連法案は、現政権与党である民主党が2009年総選挙で選挙公約(政権公約・マニフェスト)に掲げていなかったのだから、内閣が衆議院を解散し、「国民に信を問う」のであれば、消費税増税関連法案を可決・成立させる前に、それを行うべきである。

もちろん、衆議院の選挙制度については、非民主的で民意を歪曲する小選挙区制を廃止し、民主的な選挙制度に改めておく必要がある。

消費税増税関連法案を可決・成立させてから国民に信を問う、というのは、2009年総選挙の意義を台無しにしていることになり、主権者国民への背信行為であり、その意味で憲法の議会制民主主義の理念に反する、といわざるを得ない。

(3)次に、細かいことであるであるが、憲法上重要なことを指摘したい。

衆議院を解散させる権限は如何なる政党の党首も、また内閣総理大臣でさえも、有していない、ということである。
衆議院解散権を有するのは「内閣」しかない(衆議院が自ら解散を決定することを認める立場に立てば、衆議院にもある)。

したがって、内閣の閣議決定もなされないまま、消費税増税関連法案を可決後「近いうちに」衆議院を解散することを、解散権を有しない民主・自民・公明の3党党首が密室における談合で決定すること(あるいは約束すること)は、内閣の権限を3党党首が事実上拘束することになり、憲法が全く想定しない異常なことと言わざるを得ない。

(4)第三に、2009年総選挙は、主権者国民が自公の財界政治からの転換を求めており、その結果として、政権交代が実現した。

にもかかわらず、与党第一党の民主党が野党第一党の自民党などと、消費税増税という重要法案について密室談合して事実上決定する、というのは、主権者国民の期待に反して、”事実上の大連立”になっていることを意味している。

これは、2009年総選挙で民主党はこの”事実上の大連立”を国民に説明していなかった以上、明らかな主権者国民への裏切りである。

また、小選挙区本位の選挙制度の下、言い換えれば、二大政党制の下では、二大政党が対決することが期待されているから、”事実上の大連立”は政治的に許されない。

したがって、民主党と自民党がどうしても大連立(事実上の大連立)をしたいのであれば、衆議院の選挙制度も参議院の選挙制度も二大政党制化を促進する小選挙区選挙・選挙区選挙を廃止して完全な比例代表制にし、かつ、選挙前に国民に大連立を公言してから、行うべきである。

(5)ところで、衆議院の解散時期となる「近いうち」とは、いつの時期なのか?

民主党は消費税増税関連法案を可決・成立させた直後に総選挙すれば、現時点では、党として壊滅的な大惨敗を喫する可能性が高いから、民主党代表でもある野田首相は、衆議院の解散総選挙をできるだけ遅らせたいと考えるだろうから、閣議で衆議院の解散を提案するのは、先延ばしされることだろう。

もし、先延ばしされないのであれば、民主党の国会議員を代表が裏切りことになり、民主党の代表としての資格・責任が問われるだろう。

他方、自民党は、民主党が次の総選挙で大惨敗する可能性が高いとして、できるだけ早い解散総選挙を切望しているのだから、消費税増税関連法案を可決・成立させた直後、あるいはそれから遠くない時期に野田内閣が衆議院を解散することを期待しているだろう。

もし、そうならなければ、谷垣自民党総裁は、野田民主党代表に裏切られ、結果的には、野田政権の延命に協力したことになる。

(6)さて、中小の野党は、先日、内閣不信任案を衆議院に提出した。
朝日新聞2012年8月7日21時37分.
中小野党が内閣不信任案提出、首相の決断迫る自民

 [東京 7日 ロイター] みんなの党、国民の生活が第一など、消費増税を含む一体改革関連法案に反対する中小野党7党は7日夕、衆議院議長に内閣不信任決議案を提出した。
(略)

財界政党である民主党・自民党に、一般庶民のために頑張ろうという議員がどれだけいるのか疑問であるが、それでも、何名かいるかもしれないので、あえて言っておこう。

消費税増税は、財界が求めているものであり、一般庶民のための政治ではない。
それゆえ、内閣不信任案に賛成すべきである。

(7)一般庶民のために行動する議員が民主党・自民党にほとんどいないとしても、あえて言っておきたい。

消費税増税に賛成しながらも早い解散総選挙を望まない民主党議員は、このまま内閣不信任案に反対し、消費税増税法案に賛成するのだろうか?

早い解散総選挙を望んでいる自民党議員は、このまま内閣不信任案に反対し、消費税増税法案に賛成するのだろうか?

あなたの期待は裏切られてしまうだろう。
だから、そのような民主党議員は内閣総辞職を求め、自民党議員は解散総選挙を求め、内閣不信任案に賛成すべきである。

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