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【読書感想】ミッシングワーカーの衝撃: 働くことを諦めた100万人の中高年

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ミッシングワーカーの衝撃: 働くことを諦めた100万人の中高年 (NHK出版新書)
作者:NHKスペシャル取材班
発売日: 2020/03/10
メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)

労働問題を取材する中で、著者たちに見えてきたのは、雇用統計にすら反映されず、労働市場から“消えた”状態となっている中高年たちの存在だった。その数、100万人超。働き盛りのはずの40代・50代に、いま何が起きているのか?日本経済にまで負のインパクトをもたらす、労働市場の「落とし穴」とは?誰もが陥りかねない「消えた労働者」の実態と、その問題の背景、そして解決の糸口に、密着取材で多角的に迫る!

 「ミッシングワーカー」という言葉を知っていますか?

 中高年のひきこもりが可視化されてきているのですが、そんな中高年の増加には、本人や家族だけに原因や理由があるわけではないのです。

 高齢化社会で、親が長生きするようになり、誰かが介護しなくてはならなくなる。

 その一方で、いまの中年世代は「結婚しない(できない)人」がどんどん増えてきているし、非正規労働者の割合も増えてきて、収入も少ない。

 そこで、高齢の親と同居して生活している中年の子どもが、増えているのです。

 親と同居している独身中高年に、果たしてどのような問題があるのだろうか。仕事が順調で親も健康であれば、何ら問題はない。しかし、もし正社員ではなく、非正規労働に従事しているとしたら、問題はないがリスクはある。

 先に述べたように、非正規労働は短期間の有期雇用であり、期限がくれば転職をしなければならない。そして年をとればとるほど、次の仕事が見つかりにくくなる。しかも、同居している親が病気になったり、介護が必要になったりすれば、仕事を得て働くまでのハードルがより高くなってしまう。

 さらに、この問題を深刻化させてしまうのが親の「年金」だ。親世代は、一億総中流のサラリーマン世帯が主流だったため、多くの人はある程度の厚生年金をもらうことができる。そうすると子どもが無収入でも暮らしていけることができるたえ、周囲に問題が顕在化しにくくなるのだ。

 その結果、親の年金に依存しながら、介護に専念するような生活を続けた中高年が、働くことから長期間遠ざかってしまい、ハローワークに仕事を探しに行く気力さえ失ってしまうという問題が生じている。

 雇用統計上、求職活動している人は「失業者」と位置づけられ、データとして数えられる。40代、50代の失業者は、72万人に上る。しかし、求職活動をせず、長く働いていない人は「失業者」にも数えられない。

 そうした人たちが、40代、50代で103万人にも上ることが、今回の私たちの調査によって明らかになった。働き盛りの世代が雇用統計から消えたままになっている状態(=「ミッシングワーカー」)を放置しておいていいのだろうか。

 親の介護のために仕事をやめて同居し、年金でやりくりしていたけれど、親が亡くなってしまうと、年金はもらえなくなってしまう。

 いざ働こうと思っても、長い間仕事をしておらず、世間とも疎遠になっているなかで、再び若い人に混じって働くのは怖い。

 こうして、「ミッシングワーカー」が生まれるのです。

 そんな甘いこと言ってないで、働けよ!と言いたくなる人もいるでしょうけど、働いていない期間がしばらくあった僕には、その「怖い」という気持ちがわかるような気がします。

 仕事というのは、ルーチンワークになっているからこなせるところがあって、新卒ではじめて職場に行ったときのことを思い出してみれば、けっこうハードルが高いものですよね。

 仕事の現場というのは、「できない人」、とくにそれが高齢の人の場合には、けっこう居心地の悪いものでしょうし。

 それにしても、「職探しをする気力さえ失ってしまった人(=ミッシングワーカー)」が、「仕事を探しているけれど見つからない人(=失業者)」よりもずっと多いということには驚きました。

 実際、この「介護目的での離職をきっかけに、仕事ができなくなってしまう人」というのは、現場ではすでに大きな課題として認識されていて、この本のなかでは、介護者をサポートする組織の担当者が「介護をしていても、短時間、デイサービスに預けている時間だけでもいいから、仕事を続けたほうがいい」とアドバイスしています。

 仕事は一度離れてしまうと戻るのが不安になるし、外で働いていることによって、社会とつながっている安心感が持てるから、と。

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