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地方百貨店の後釜として存在感高める「ドン・キホーテ」 - 森谷信雄 (流通ジャーナリスト)

地方都市の消費の一端を担ってきた地方百貨店の店舗閉鎖が相次いでいる。最大の原因は「大手アパレルメーカーが、地方百貨店の売り場の選別に入っている」(百貨店OB)といわれているし、百貨店自体の改革が遅れてきたからだ。しかし、それだけではない。今や、地方の中心市街地ではすっかりお馴染みになっているドン・キホーテが、その競合先になっている上、閉鎖店の受け皿になっているのだ。

(Rodrigo Reyes Marin/AFLO)

従来、地方百貨店はオンワードホールディングスや三陽商会、ワールドといった、大手アパレルメーカーの手厚い支援で売り場が支えられてきた。

だが、地方百貨店の衣料品売り場の存続自体が危ぶまれている。というのもアパレルメーカーと運命共同体だった百貨店の不振で苦境に立たされているからだ。

オンワードが国内外で600店を閉鎖することを明らかにしたり、三陽商会が2019年2月期(今期は14カ月の変則決算)が営業損益が赤字、4期連続の赤字見通しとなったり、レナウンも赤字が続くなどアパレル自体が厳しい状況にある。

かつて、派遣店員は出します。売れ残り商品は引き取りますと手厚い取引を展開してきたアパレルメーカーの全盛期の姿はそこにはない。

アパレルメーカーに依存した衣料品の売り場は、地方百貨店にとっていわば最後の砦となってきたが、その砦すらも「アパレルメーカーからの最終的な選別に遭い、維持できなくなっているのではないか」(ある大手百貨店OB)というのが現状だ。

地方百貨店にとってもアパレル売り場が構築できないようなら、もはや百貨店の看板をいつまでも掲げられない。

つまり地方百貨店自体がぬるま湯の中から脱出できなかったこともあるが、アパレルメーカーが影響していることも否定できないだろう。

地方の百貨店といえば、かつて休日に家族そろって出かけ、子供は屋上の遊園地で遊び、奥さんは衣料品などを買い、家族そろって店内の食堂で食事をして帰るという風景があったがそうした風景も見なくなった。

代わってショッピングセンターに出かけ、買い物をしてフードコートで食事をするというスタイルが定着したが、それすらも今ではEC(電子商取引)市場の拡大で変化している。

地方都市の風景は百貨店からSC、そしてドンキへ

地方都市の風景は百貨店からSC、そしてドンキへと代わっている。ドンキで育った若者世代が親となって、ドンキに子供を連れて出かけるようになっており、ドンキが家族で楽しめる〝レジャーランド〟になっているのだ。

全国的に店舗が増えて身近になったドンキが「地方百貨店の淘汰を促進する一因になるのではないか」(前出百貨店OB)という。

ドンキはすでに標準型の「ドン・キホーテ」を始め大型の「MEGAドン・キホーテ」、買収したユニーの業態転換店舗などドンキと名の付く店舗を全国で約380店を展開し、地方都市の駅前や駅近くにある商店街にもドンキがある風景はごく当たり前になっている。

ドンキは衣料品、日用雑貨、食品がそろう上、ブランド品まである。総合スーパー(GMS)だけではなく、地方百貨店が扱っていた商品ともバッティングする。

百貨店がかつて晴れの日の商品をそろえ、晴れの日を演出する場であったとするならば、現在のドンキは、ブランド品や時計貴金属など晴れの日の商品もそろう〝カジュアル化した百貨店〟ともいえる。

「ドンキの進出には地元の経済界ももろ手を挙げて賛成」

しかもドンキの親会社、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は22年12月までにドン・キホーテとユニーのダブルネーム店舗を100店に増やす計画と加速度的に店舗を増やしており、ドンキは一段と身近になっている。

このように地方の主役も変わってきている。かつて、ドンキといえば深夜営業を背景に、自動車やバイクなどの騒音問題で地元から疎まれたこともあったが、それが今や「ドンキの進出には地元の経済界ももろ手を挙げて賛成」(ある商工会議所役員)という声もあるほど。

むしろ地方都市の中心市街地に積極的に出店してくれる小売業はドンキくらいしかないのも実情だ。中心市街地の空洞化を防ぎたい、地元からも歓迎されている。

ドンキはかねてパチンコ店の跡地や、家電量販店、さらにスーパーの跡地への出店は得意中の得意だったが、最近は地方百貨店の跡地への出店も増えている。

ロードサイド型の宮崎県内唯一の百貨店であったボンベルタ橘は、かつてイオンの傘下だったが、イオングループから離脱、地元から資本を集め県民百貨店として再生を目指していた。

だが今年2月1日、ドンキを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が買収した。

岐阜県の柳ケ瀬店でも名鉄が運営していたファッションビル「メルサ」をドン・キホーテに業態転換した。

和歌山県和歌山市の「和歌山店」もかつて丸正百貨店の跡地だし、東京都大田区で地方百貨店の雰囲気を残していたダイシン百貨店もMEGAドン・キホーテに転換している。

さらに今年3月20日には仙台市にあった旧さくら野百貨店跡地をPPIHが再開発すると一部に報道されたりして、今や閉店したり、行き詰まった地方百貨店の受け皿となっている。

ドンキも今や若者だけの店ではない。「つけまつ毛ドーンとあるような品ぞろえばかりではない。夕方のピーク時間には食材を購入する主婦の姿が目立ちます」(目黒区に住む主婦)。

来店客の高年齢化が進み、前社長の大原孝治氏は2019年6月期の決算発表の席上で「ドン・キホーテが大人になってしまった」という。

それはドンキの品ぞろえが大人を意識するようになって、本来メーンの顧客だった若者が離れてしまっているという危機感の裏返しでもあるとみられるが、反面、シニアの客層の取り込みに成功したともいえる。

ドンキは若者だけでなく、今では老若男女が来店する場なのである。しかも疲弊した地方の中心市街地になくてはならぬ存在となっている。地方都市の中心市街地の風景はドンキが変えていくのか――。

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