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「女性活躍は大事だけど、本人次第だよね」ジェンダー多様性から目を背ける日本の経営者たち ジェンダー平等は利益を生む。それが世界の常識です - 小島 慶子

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 あれ? そういえば、202030って、どうなったんだっけ。「2020年までに、社会のあらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合を30%に増やす」という政府が掲げている指標。今年がまさにその年だけど、「いったいどれくらい達成されているのかしら?」と調べてみたら、程遠い数字でした。


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 IPU(列国議会同盟)によると、日本の国会議員に占める女性比率は参議院22.8%、衆議院9.9%で、193カ国中166位です(2020年2月時点)。女性閣僚比率はG7で最低の15.8%。またILO(国際労働機関)によると、2018年の世界の管理職に占める女性の比率は27.1%ですが、日本は12%でG7最下位。2019年の上場企業の女性役員比率は5.2%にとどまります(内閣府まとめ)。202030どころか、202020すら達成できていなかった……。

 なぜこんなにやる気がない(としか思えない)結果になったのか。

「諸外国に遅れているのはあまり悲観していません」

 今年の3月8日の国際女性デーに、非常に興味深い記事が新聞の一面を飾りました。朝日新聞が国内の主要企業のうち「女性役員ゼロ」の14社に取材したところ、女性幹部が誕生するための条件として、女性本人の意識改革や女性の採用数の増加が必要だと考えている企業がもっとも多かったというのです(それぞれ5社)。経営層の意識改革が必要と答えたのは2社、男性社員の意識改革が必要と答えたのは1社でした。

 その翌日、朝日新聞のデジタル版に、経団連副会長でダイバーシティ推進担当のANAホールディングス社長・片野坂真哉氏のインタビュー(男だらけの財界「個別企業が努力すべき」 経団連幹部)が掲載されました。

 片野坂氏は、日本企業の女性登用の状況があまり変わっていないことについて「制度を作っているのが男性中心だから、職場の取り合いになる。女性が力のあるポジションについたときに初めて動くのだと思う」と回答。経団連の幹部に女性が一人しかいないことについては「企業のトップの中に女性が登場することが第一歩。諸外国に遅れているのはあまり悲観していません」。経団連幹部にも2割を目安に女性を入れると決めてはどうかとクオータ制について聞かれると「規定から入るのはおかしい。シンボリックに女性を登用すると、その人たちも相当苦労します」と答えました。

 この他人事感はなんでしょうか。

日本は先進国でもっとも男女格差が大きい国であり続けている

 女性幹部を増やすと言いながら、経団連は企業任せ、企業は女性の意識任せ。「女性活躍は大事だけど、本人次第だよね」というのは、つまり知ってはいるけどやる気はないことの表れです。ちなみに2017年にOECD(経済協力開発機構)のモニカ・カイザー社会政策局課長は、「日本の女性幹部を増やすにはクオータ制が有効な手段になる」と指摘しています。

 世界経済フォーラムが毎年12月に発表するグローバルジェンダーギャップ指数の昨年のデータでは、日本は153カ国中121位でした。今回も前回も前々回もその前も、先進国で最下位。つまり、日本は先進国でもっとも男女格差が大きい国であり続けているのです。内訳を見ると、教育や健康面での差はないのに、政治経済分野における男女格差が非常に大きいことが特徴です。これをなんとかするべく、202030が提唱されたのではなかったのか。

性差別をする組織に優秀な人材は集まらない

 そもそも、なぜ女性幹部を増やす必要があるのでしょう。意思決定層に占める女性の割合が極端に少ないと、女性は社会の成員として重視されなくなるからです。男女の賃金格差や昇進の格差は解消せず、女性は男性の補助要員かつ無償または安価なケアワークの担い手として地位を固定化されることになります。

 男性の意思決定層から見たときに都合の良い働き手、つまり長時間の過酷な労働にも文句を言わずに耐え忍ぶ働き手が好まれ、出産などでキャリアを調整する必要がある女性は戦力外として排除されます。

 最近だと、東京医科大や聖マリアンナ医科大などの入試で女性が不当に点数を操作されて不合格になっていた事件がありました。「医師の仕事はハードすぎて、女性は出産や育児で辞めてしまうから育成しても無駄である」という理由から、そのような不正が半ば公然と行われていたのです。

 企業の採用でも「いやー、成績順で採用すると女性の方が多くなっちゃうから」などと平気で言う人が珍しくないですが、それも女性は主戦力じゃないよねという暗黙の合意が出来上がっているからです。れっきとした性差別であるにもかかわらず。そして、そうした女性差別のコストとして、男性は過酷な長時間労働に甘んじなければならないのです。しかし、そのような組織には、もはや優秀な人材が集まらなくなりつつあります。

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