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ドイツ・メルケル首相の矜持

日本では「一国の指導者」という人はなかなか思いつかないが、ヨーロッパでは「指導者」として歴史に名を残す首相や大統領が思いつくだけでも、フランスのドゴール大統領、イギリスのチャーチル首相、旧ユーゴのチトー大統領など、何人か存在します。ドイツのメルケル首相も、後世、そのような人に名を列するのではないかと思っている。

先日、メルケル首相は、テレビ演説で、新型コロナウイルスの感染防止は「東西ドイツの再統一や第二次世界大戦以来、最大の挑戦」だと語り、さまざまな措置に対する国民の理解と協力を呼び掛けた。

ドイツではすでに食料品店や薬局などを除く商店の閉店、学校の閉校、EUの合意に基づき外国人の入国を禁止する国境の閉鎖などの措置を打ち出しているということで、イタリアやフランスなど他のヨーロッパ諸国と同様、レストランやカフェ、レジャー・観光施設も含まれていることだろう。

独裁国家の「指導者」なら躊躇なく取る措置であろうが、旧・東ドイツ出身のメルケル首相にとり、自国民や外国人の移動の自由や受け入れ、難民の受け入れを含む外国への開放政策はとりわけ重要であるりか、戦後ドイツという国家にとって譲れぬ価値として存在してきたポリシーの変更となるだけに、たいへん重い決断だったのだろうし、大人の判断だったろうと思う。

あのメルケル首相でさえ、そうせざるを得ない事態の深刻さがあるわけであるが、それを受けとめるドイツ国民も、その影響を受ける人々にある寛容さには、その指導者への信頼の度合いも含まれるような気がしてならない。

EU加盟国としては当然のことかもしれないが、単独ではなく「EUの合意に基づき」外国人の入国を禁止する国境の閉鎖するというプロセスをとることも、非常時であるだけにルールある手続きとして逆に輝きを放つ。

こんな折だけに一国の指導者には、それぞれの判断の価値が、ふだんから、だれのため、なんのために、政治をおこなっているか、その人格ととともに見極められる。

政治家としての存在根拠さえもが問われる方から非常事態にかこつけ発せられる「要請」とは重みが違う。

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