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「ただただ気持ち悪かったです」19歳の実娘への性的暴行で父親に有罪 “逆転”の理由 - 「週刊文春」編集部

「父との毎日は非常識であり、ただただ気持ち悪かったです」

 2017年、愛知県で当時19歳の実の娘に性的暴行を加えたとして、準強制性交の罪に問われた父親(50)に対する3月12日の名古屋高裁判決。無罪とした一審を破棄し、懲役10年の逆転有罪が言い渡されたことを受け、娘はそうコメントを出した。

 一審の名古屋地裁岡崎支部は、娘が中学生の頃から性的虐待を受け続けたこと、性行為に同意はなかったことは認めた。しかし、娘が拒めた経験などもあるとして、「身体的、心理的に抵抗するのが著しく難しい状態につけ込んだ」という“抗拒不能”の要件を満たしていないと判断したのだ。


逆転勝訴を喜ぶフラワーデモの呼びかけ人ら ©共同通信社

 司法記者が解説する。

「父親側は『抵抗できない状態ではなかった』として無罪を主張していた。冤罪防止の観点から認定にはハードルはあるが、抗拒不能を厳格に判断した地裁判決には疑問の声が相次いだ」

 昨年3月には、同事件を含めた4件の性暴力事件で無罪判決が下された。これに対し、性暴力の被害女性と支援者たちが、抗議のための「フラワーデモ」を各地で実施。刑法改正を求め、法務省に申し入れを行った。

 注目の中で下された今回の逆転有罪。名古屋高裁は「意に反した性行為を繰り返し受け、経済的な負い目を感じていたことを踏まえれば抵抗できない状態だったことは優に認められる」と娘を救済。一審判決は「抗拒不能を正当に解釈していない」と指摘した。

性暴力に対する司法判断はなぜ変わってきたのか?

 さらに福岡高裁も2月、酒に酔った女性への準強姦事件で逆転有罪を言い渡した。3月には知的障害がある養女を被害者とした監護者性交事件の一審無罪を破棄、地裁に差し戻している。

 性暴力に対する司法判断が変わりつつある現状を、法曹関係者はこう分析する。

「17年6月に性犯罪を厳罰化した改正刑法が成立したのに伴い、最高裁の司法研修所などは性犯罪被害の研修に熱心に取り組んできた。その結果、被害者は恐怖のため明確な拒絶ができないケースが少なくないという見方が裁判官の間に広がりつつある。にもかかわらず、『嫌なら拒否できるだろう』との旧態依然とした考えに当てはめた判決が続いたことで、裁判所は理解が進んでいないとの批判の声が上がっていました」

 今回の高裁判決は、批判を打ち消すメッセージの意味もあったのではという。

「裁判官はあらゆる権力から独立するとはいえ、世論は気にする。社会問題となった以上、高裁は慎重に検討したのでしょう」(同前)

「魂の殺人」とも呼ばれる性暴力。被害者を二度傷つけないためにも、法廷での正確な判断が求められる。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年3月26日号)

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