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リーマンショックと比べ鈍い、政府の中小企業対策 東京商工リサーチの友田信男常務・情報本部長 - 中西 享 (経済ジャーナリスト)

新型コロナウイルスの感染拡大でヒトとモノの動きが止まり、「コロナ不況」の長期化が心配される中で、東京商工リサーチの友田信男・常務取締役情報本部長に2008年に起きたリーマン・ショックとの違い、今後の倒産件数の行方などについて聞いた。

(Ca-ssis/gettyimages)

Q 今回の新型コロナウイルスとリーマン・ショックと比べた場合、違いは何か。

友田本部長 リーマンは金融セクターから始まり、ほぼ同時に大企業、グローバルに拡大して、そのあとタイムラグがあって中小企業に影響が広がった。「上」から「下」に向かう流れだった。今回の「コロナ」は、旅館、飲食、小売などインバウンドといった「川下」部門から、全国に一気に広がって、大企業にも影響を及ぶ形で、リーマンとはまったく異なる展開となっている。

Q 企業は新型コロナウイルスの影響をどうみているのか。

A 3月13日の正午までに東京商工リサーチの調査で情報開示した525社のうち、新型コロナウイルスの影響に触れた企業は335社で、このうち115社が売上高や利益の減少など業績などへのマイナス要因を挙げた。業績予想の修正分のマイナスを合算すると、売上高が5172億円、最終利益が1232億円。

売上高の修正額の最大は旅行大手のエイチ・アイ・エスだった。しかし、企業は感染拡大の終息が見えないことから、この影響について見通しが立たないため、売上や業績の見通しが出せないところが多く、悪い状況はまだ表に出てきてなく水面下に隠れている。これが出てくるのは4月からで、今の状況では断定はできない。

Q 企業の倒産件数はこの数年、減少傾向にあった。「コロナ不況」で倒産件数はどのくらい増えそうか。

 リーマン・ョックの起きた08年は1万5646件、翌年の09年は1万5480件と1万件を大きく超えていた。その後、13年の1万855件以降は1万件を下回り減り続けてきたが、19年は8383件で11年ぶりに増加した。増えた理由は、個人消費の低迷と消費税の増税が影響したが、09年に制定された中小企業を対象とした金融円滑化法が実質的に昨年3月に終了したことも響いている。

今後の倒産については、いつの時点で終息宣言が出るかによるが、一つは消費者の財布のひもが緩む5月のゴールデンウィークまでに終息宣言が出ているかどうか、その次は東京オリンピックが開催される前の6、7月が注目点となる。いまのままで行けば3月、4月に倒産が急増することはないが、年間では1万件を超える可能性が高い。

Q 発表されている政府の支援策は効果があると思えるか。

 リーマンの時は政府が即座に30兆円の信用保証枠を設定し、金融円滑化法も制定して中小企業の金融支援策を打ったが、今回は1兆6000億円の中小企業向け対策を発表しているが、リーマンと比べて鈍い。前回同様の30兆円規模の支援策を打ち出してくれれば、企業経営者も安心感を持ち、企業マインドも回復するのではないか。対策は早く打たないと経営者は疲れてしまい、効果が薄れてしまう。

Q 増税した消費税を減税する案が浮上しているが、効果があると思うか。

 GDP(国民総生産)の6割が個人消費なので、消費税率を5%かゼロにまで戻せば、落ち込んでいる個人消費を喚起させる効果はあると思う。しかし、消費税を変更すると、商店の現場はレジのソフトを修正しなければならないなど、その対応が大変になると思う。

6月以降は従来型の赤字リストラも増加する

Q 中国に依存していたサプライチェーン(部品の供給・調達網)が寸断られたことで、製造業だけでなく、サービス業へのダメージが大きかったのはなぜか。

 製造業だけでなく、住宅、建築資材など生活関連物資の多くを中国に依存していたため、サプライチェーンが崩れたため納品が遅れる事態が多発している。建築資材が中国から届かないため、マンションや家が建てられないといった事態が起きている。アパレルも中国依存が大きいため、影響が出ているようだ。

今回の新型コロナの感染は全世界で起きているので、手の打ちようがない。地震などに備えるためのBCP(事業継続計画)を作っていても役に立たない。できることと言えば、生産の一部を国内に戻すしかない。人手にかかる作業を海外から人件費の高い国内には戻せないが、機械化でできるような仕事は海外から一部国内に戻すきっかけになるかもしれない。電機業界では一部でこうした動きが既に起きている。

Q 倒産はしないまでも、希望退職を募集するなど黒字リストラを行う企業が増えているようだが。

 上場企業はこの数年、為替差益で決算の底上げをしてきたが、今後は円安は見込みにくいため、差益を計上するのは難しくなる。昨年は36社、1万1351人が希望・早期退職した。今年の2月末までに希望・早期退職者を募集した19社、3471人の業績は、6社が最終赤字で、残る13社が黒字だった。

今年は、百貨店やコンビニ、食料品などのBtoCで黒字の業界大手の実施も目立つ。しかし、新型コロナによるインバウンド減少、グローバル市況の悪化で、サービス、アパレル、小売、消費財などを中心に、年初から業績の下方修正も増えている。このため、今年は年齢構成の是正やAI化などの構造改革を進める黒字リストラに加え、6月以降は従来型の赤字リストラも増加する可能性が高まっている。

Q 中小企業の休廃業も増えている中での、今回の新型コロナの影響は。

 倒産よりも現実味が高いのが、休廃業の増加だ。人手不足と高齢化が経営の重荷になっている中小企業の経営者は、お金を借りてまで事業を続けるよりも、「コロナ」を契機に事業をたたもうとするかもしれず、どうしようかと悩んでいる経営者の背中を押して休廃業に追い込む可能性がある。そうなると、最悪のケースは、今年の倒産件数は1万件に増加し、休廃業が昨年4万3000件だったのが5万件にまで増えるかもしれない。そうならないようにするために、政府の思い切った中小企業支援対策が必要だ。

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