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潜水艦元艦長が教える「コロナ鬱」にならないための“閉鎖空間ストレス・コントロール術” - 「週刊文春デジタル」編集部

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 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、政府は2月25日に不要不急の外出の自粛を求める基本方針を発表。全国的にイベントが中止になり、在宅勤務を導入する企業も相次いだ。

【画像】潜水艦内の士官室はこんなところ

 3月2日から急遽始まった全国の小中高校での臨時休校も重なり、幅広い世代が自宅に籠もらざるを得ない“巣ごもり”生活が続いている。募っていく一方のストレスを、どのようにコントロールすればいいのか。

 究極の「閉鎖空間」とも言える潜水艦で12年間任務にあたり、潜水艦「はやしお」艦長などを務めた元海将、伊藤俊幸氏(金沢工業大学虎ノ門大学院教授)に、海上自衛隊流のストレス・コントロール術を聞いた。


海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」内の3段ベッド(防衛省海上幕僚監部提供) ©️時事通信社

潜水艦での生活はどうなっているのか

 私が長い時間を過ごした潜水艦での生活は、文字通りの「閉鎖空間」です。しかし、どんな毎日なのかイメージできない人も多いでしょう。まずはそこからお話しします。

 潜水艦は、20代から50代までの立場も年齢も違う乗員約70人で航海しています。任務によっては1ヵ月以上、狭い密室で共同生活を送ります。

 それだけの人数が集まっていますが、嵐の日でも船体は揺れずとても静かです。居場所を悟られてはいけない潜水艦にとって、食器が棚に当たった音ひとつで敵に位置が知られてしまうので、艦内で音を立てることは厳禁。加えて、酸素も限られていますから、有酸素運動はおろか体操も難しい環境です。

 位置を知られてはいけない以上、電波も発信できません。家族と連絡を取ることも出来ず、インターネットもつながりません。出港後は、本部と連絡を取ることさえほぼない。当然、太陽の光を浴びることもありません。

 日本は世界第6位の排他的経済水域の広さを誇る海洋国家です。そんな広大な範囲を舞台に、過酷な環境のなかで日夜、失敗の許されない任務が課せられています。考えただけで息が詰まるストレスフルな環境です。気性が荒いもの同士の小競り合いも日常茶飯事ではないかと思うかも知れません。

 しかし、航海中に大きなトラブルは起こりません。それは、なぜなのでしょうか?

食堂で『ロッキー』を鑑賞して気分転換

 私の艦長時代、乗員のストレスをコントロールするためにしていたことで、まず思い出すのは、彼らに「任務以外のことに頭を切り替える時間」を与えていたことです。

 閉鎖空間にいるからこそ、潜水艦内のことではない全く別のことに意識を向けさせる。緊張状態が長く続くと、自律神経にも悪影響を及ぼします。半ば強制的に「いま船のなかにいる」ということから頭を切り替える必要があるのです。

 そこで重宝したのが、映画鑑賞でした。出港前に基地に常備されているDVDを借りこみ、食堂で上映します。映画が始まると、任務が終わった乗員が次々に集まり、途中からでも同じ画面を見る。音を出してはいけませんから、全員がヘッドフォン姿。しーんと静まりかえった、ヘッドフォン姿の自衛官で埋め尽くされる薄暗い食堂……。想像すると異様な光景かも知れませんが、こうして映画の世界に没入します。

 私が勤務していた頃は『ロッキー』など、流行のハリウッド映画をよく見ました。涙腺の緩い私は、見終わった後につい感動して涙を流してしまいましたが、泣くとスッキリして効果的でした。

 ほかにも、私たちの頃はトランプを持ち込んでブラックジャックなどに興じていました。いまの乗員たちはゲーム機も持ち込んでいるようです。単に娯楽ということではなく、ストレスをコントロールするうえで、いつもと違うことに没頭する時間は非常に重要なのです。

 ある研究で自殺の多い都市について調査したところ、その都市は「職住近接」が進んでいて「通勤がない」ことが大きなストレス要因となっていたそうです。これも映画鑑賞と同じ理屈でしょう。職場と住居との間で「切り替え」ができないと、ずっとひとつのことに意識が向けられて、ストレスのかかった状態が続いてしまう。在宅ワークが求められているいまだからこそ、大切な視点だと思います。

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