- 2020年03月19日 20:51
世界中で「まともな人たち」も雪崩をうって買い占めに走り出してしまう理由
1/2新型コロナウイルスの影響で、日本では根拠もなくトイレットペーパーが品薄なわけですが、興味深いことにこの現象は日本だけではないようです。
(関連記事)
アメリカでも買いだめでスーパーは品薄に トイレットペーパーなど一部商品の販売制限も
2020年3月16日(月)12時02分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/03/post-92752.php
日本の場合、「トイレットペーパーの原料は中国から輸入していたから品薄になる」というフェークニュースがネットで広まり、またたく間にスーパーやコンビニの棚からトイレットペーパーが無くなってしまったのであります。
フェークを信じた情報リテラシーの低い者はおそらく1%もいなかったはずですが、その情報リテラシーの低い者が買い占めに走り出すと、その他99%の「まともな人たち」も雪崩をうって買い占めに走り出す、このような現象が起こり、「トイレットペーパーが品薄になる」というフェークは「現実」になってしまったわけです。
世界中で「まともな人たち」も雪崩をうって買い占めに走り出してしまう、そこにはどのような理由があるのでしょうか。
この現象をゲーム理論を用いて説明している記事がいくつかあり、興味深いです。
(参考記事>
古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」:
トイレットペーパーを「買い占める」ほうが”合理的”であるシンプルな理由 (1/2)
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2003/04/news092.html買い占めに走る消費者は「間抜け」なのか?
ゲーム理論「協調ゲーム」で考える消費者行動の合理性
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/030900081/?P=1トイレ紙買いだめ理にかなった行為か ゲーム理論だと…
https://www.asahi.com/articles/ASN3J5SVYN3JUPQJ00Q.htmlなぜ「在庫は十分」なのにトイレットペーパーが買えなくなるのか
御田寺 圭 2020/03/13 11:15
https://www.msn.com/ja-jp/money/business/%E3%81%AA%E3%81%9C%EF%BD%A2%E5%9C%A8%E5%BA%AB%E3%81%AF%E5%8D%81%E5%88%86%EF%BD%A3%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%AB%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%81%8C%E8%B2%B7%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B/ar-BB117uKQ
それぞれ大変興味深い考察です。
私は、ゲーム理論を学校で学生相手に今も講義をしています。
なぜ「まともな人たち」も雪崩をうって買い占めに走り出してしまうのか? 今回はわかりやすくゲーム理論の入門解説を試みたいと思います。
ゲーム理論に関心はあるがよくわからないという初心者の読者は、時間が許すならばお付き合いください。
・・・
最初に「囚人のジレンマ」問題でゲーム理論の基本的な考え方を説明します。
ゲーム理論の参考書で必ず出てくる有名な問題に「囚人のジレンマ」があります。
囚人のジレンマ問題
ある事件において共犯と思われる二人の囚人(囚人A、囚人B)が留置所に収監されている。決定的な証拠がない二人の囚人は完全に隔離された上で、双方に同じく以下の条件が与えられた。
・もし、あなたが黙秘し、もう一人も黙秘したら、二人とも懲役2年である。
・もし、あなたが自白し、もう一人が黙秘を続けた場合、あなたを無罪にする。もう一人は懲役15年とする。
・もし、あなたが黙秘し、もう一人が自白したら、あなたは懲役15年、もうひとりは無罪となる。
・もし、あなたが自白し、もう一人も自白した場合、双方とも懲役10年とする。
・もう一人の方にも、全く同一の条件を伝えてある。このとき、囚人がどちらを選択するのがよい戦略かというのが問題である。
ゲーム理論では、合理的な行動を予測するために、当事者の「利得」を場合分けした表を作成します。
※『木走日記』作成
この表の見方ですが、例えば囚人Aが黙秘し、囚人Bも黙秘した場合、左上のマスになります。
「ー2・ー2」(A・B)とあるのは、この場合、AもBも懲役2年(懲役をマイナスで表現しています)になることが示されています。
さて二人の囚人にとってどの選択が共通の利益になるのかはそれぞれの利得値の合計で判断できます。
合計値は、左上のマスー4、右上のマスー15、左下のマスー15、右下のマスー20です。
左上のマス、つまりAもBも沈黙すれば、双方懲役2年で最適解であることが分かります。
二人とも「二人が協調して黙秘することを選択すれば、二人の懲役は共に2年ですむ。」ことが最高の果実(専門用語では「パレート最適」と言います)であることを理解しているのです。
しかし、二人の囚人は完全に隔離されているので相談することはできません。
そうすると、囚人Aにとっては、囚人Bが自白しようが黙秘しようが、いずれも自白を選択する方が囚人Aにとって「最適な選択」(支配戦略)であるということ、つまり合理的な判断で「自白」を選択するのです。
囚人Aにとって黙秘した時の自分の利得はー17(囚人Bが黙秘ならー2と囚人Bが自白ならー15)で、自白した時の自分の利得はー10(囚人Bが黙秘なら0と囚人Bが自白ならー10)を比較して、合理的に利得の多い「自白」を選択してしまうのです。
この問題がなぜ「囚人のジレンマ」と名付けられているかといえば、二人とも「二人が協調して黙秘することを選択すれば、二人の懲役は共に2年ですむ。」ことが最高の果実(専門用語では「パレート最適」と言います)であることを理解しているにも関わらず、二人とも、それぞれ一人で考えた「最適な選択」(支配戦略:専門用語では「ナッシュ均衡」と言います)は、いずれも自白、結果二人の懲役は共に10年を選択してしまうということです。
※『木走日記』作成
- 木走正水(きばしりまさみず)
- 新聞・テレビの報道分析が高い評価を受けている。





