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「早朝デートする?」人気アパレル元社長のセクハラLINEが“2重で”アウトな理由――弁護士が解説 - 海老澤 美幸

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 若い女性に人気の「アースミュージック&エコロジー」などを展開するストライプインターナショナルの石川康晴氏が3月6日、社長を辞任した。

 石川氏は女性社員らに対して複数のセクハラ行為があったとされ、2018年12月に社内で臨時査問会が開かれ、厳重注意を受けた。しかし同社は「(石川氏の)セクハラ行為は認められず、処分もなかった」と説明している。

「ファッション業界の労働環境はブラックな面も否めない」と話すのは海老澤美幸弁護士。

 海老澤弁護士はファッションエディターから弁護士に転身した異色の経歴の持ち主で現在はファッション・ローをメインに扱っている。ファッション業界の契約関係やコピー商品問題が中心だが、最近では「労働問題」の相談も増えているという。

 そんな海老澤弁護士に今回のストライプインターナショナル石川康晴氏の一件はどう映ったのだろうか。

「一連の報道でお騒がせした」として3月6日にストライプインターナショナルの社長を辞任した石川康晴氏 ©共同通信社

◆◆◆

「何時に寝る?」「このLINE、内緒だよ」

――石川氏の件は、朝日新聞デジタル(3月4日)で『服飾大手社長がセクハラ』と報道されたことがきっかけでした。社内の査問会では2015年8月~18年5月にあった4件の事案が報告されたそうです。

海老澤美幸弁護士(以下、海老澤) そもそもセクハラには「環境型」と「対価型」の2つがあるとされています。「環境型」というのはたとえば職場にヌードのポスターが貼ってあることを労働者が苦痛に感じているような、働きやすい環境という意味で適切でないケース。「対価型」というのは、セクシャルな言動に応じない場合に減給や異動などの不利益が伴うケースです。

 報道を見ると、石川氏は会社のオーナーかつ社長(当時)という立場から女性従業員を誘っており、女性従業員からすれば、従わなければ不利益を受ける可能性があるという点で「対価型」といえます。セクハラの基準は被害者本人の「主観」が基本的に考慮されます。一方で平均的な女性労働者であればどう感じたか、という「客観的」な基準も加味されて判断されます。その主観・客観という両方の視点から石川氏の件は「悪質」であり、まさにセクハラと言えるのではないでしょうか。

――具体的に、朝日新聞デジタル(3月5日)に掲載されたLINE画像によると、深夜0時を超えてから「何時に寝る?」「このLINE、内緒だよ」「1時半に15分だけ、抜けてくる? 話、する?危険かな? ●●号室」(※部屋番号は加工されている)と女性社員を宿泊している部屋に呼び出そうとしたケースが紹介されています。

「話、する?危険かな? ●●号室」LINEが“アウト”な2つの理由

海老澤 まずポイントになるのはこのLINEが「深夜」ということでしょう。早朝あるいは深夜という労働時間外に上司の立場から指示を出していることが不適切です。

 そしてもうひとつのポイントは「1人でホテルの部屋に」来るように誘っていること。これは一般的に見ても「不快」「従いたくない」と感じられるものでしょう。しかもこの社長の誘いに応じなかったら何らかの不利益があるかもしれない――「勤務店舗を変えられる」「給料を下げられる」――もちろんそれらはメッセージに明示されていませんが、被害者としてはそういうことを考えてしまうので、このLINEはセクハラにあたると考えます。

 もしも業務上必要な話があるのであれば、それは「労働時間内に」「店舗や事務所など」のしかるべき場所で行われるべき。つまり「時間外に」「彼の部屋」に1人呼び出して、というのはアウトです。このLINEのやり取りが事実であれば、証拠として残っている以上言い訳は通らないのではないでしょうか。

「新幹線代、ホテル代、出すから、●月、東京に来ませんか?指定休で」

――別のSNSメッセージも朝日新聞に掲載されています。「新幹線代、ホテル代、出すから、●月、東京に来ませんか?指定休で」「ホテルは東京駅の辺りで取りますよ」「石川と寿司デート」(※抜粋。一部加工されている)という内容です。

海老澤 上司・部下という職場の関係にも関わらず「ホテルを取る」「デート」などというメッセージを送っていることが、一般基準でセクハラと判断する材料になるでしょうね。

 法律上でいうと、男女雇用機会均等法(11条)が「職場において行われる性的な言動で労働者の対応によりその労働条件につき不利益を受けること、またはその性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」をセクハラと定義し、雇用主(=社長)に対し、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備する等、雇用管理上必要な措置を講じることを義務付けています。守らなければ国から是正勧告を受けたり、違反企業として公表されたりすることになります。

――仮にセクハラを受けた被害者が石川氏に文句を言いたいというケースはどうなるのでしょうか。

海老澤 民法の「不法行為」(民法709条)に基づいて損害賠償請求などをすることになります。この場合、会社に対しても使用者責任(民法715条)を追及することも可能です。より悪質で同意なく性行為に及んだというケースですと、強制わいせつや強制性交など刑法上の責任も問題になってきます。

 民事訴訟を起こす場合は、セクハラにより心理的にショックを受けて治療が必要となった、休業せざるを得なくなった、退職を余儀なくされた……そういうことに対して損害の補填を求めるケースが多いです。金額はケースバイケースですが、セクハラが原因で休業しなければならなくなったり、退職にまで追い込まれてしまったようなケースでは、慰謝料のほか休業損害や逸失利益の支払いまで認められることもありますので、高額になりますね。

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