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「売春せずに芸を売る」ストリッパーたちが生んだ"花電車"という文化

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かつて日本には300軒を超えるストリップ劇場が存在した。その中で、“花電車”と呼ばれる特別な芸を披露するストリッパーたちがいた。いまでは披露できる人は10人もいない。現在も花電車を披露する現役花電車芸人の挑戦を、ノンフィクション作家・八木澤高明氏が追う――。(第1回/全3回)

※本稿は、八木澤高明『花電車芸人 色街を彩った女たち』(角川新書)の一部を再編集したものです。

花電車芸を披露するファイヤーヨーコさん。『花電車芸人 色街を彩った女たち』より。
花電車芸を披露するファイヤーヨーコさん。『花電車芸人 色街を彩った女たち』より。 - 撮影=八木澤高明

戦後まもなく産声上げたストリップ劇場

日本には、かつて全国の隅から隅までに300軒のストリップ劇場があったという。ところが、年々その数は減っており、今では20軒に満たない劇場しか残っていない。都心にあり、常に観光客を呼び込める劇場以外は、いつまで存続できるのだろうか。地方で営業する劇場の経営は、風前の灯火といっていいだろう。ストリップ興行の母体である劇場ですらそのような状態のため、ストリッパーの数も、当然ながら減っている。

ストリップ業界は、常に低空飛行を続けてきたわけではない。ストリップは戦後まもなく、新宿で産声を上げた。はじめはストリッパーは動かない、ポーズを取ったまま上半身のヌードを見せる額縁ショーだった。それでも、戦後の解放感に浸った、娯楽に飢えた男たちはストリップ劇場に長蛇の列をつくった。

“花電車芸人”はいまや十指に満たない

そのうちにショーは過激化していき、性器を見せるようになる。それも当たり前のようになると、劇場の経営者やストリッパーたちは、次から次へと新たなショーを生み出していった。ステージ上でSMを披露したり、ポニーや犬と交わる獣姦ショーを催したり、果てはじゃんけんでストリッパーに勝った客とステージでセックスをしたりする、本番まな板ショーまで行われるようになった。ストリップ劇場は、女を買うことができる売春施設そのものといってよい状況になっていったのだ。

八木澤高明『花電車芸人 色街を彩った女たち』(角川新書)
八木澤高明『花電車芸人 色街を彩った女たち』(角川新書)

2000年代に入り、警察からそのような状況にストップがかかったこと、また女の裸がインターネットなどで手軽に見られるようになったことから、ストリップ劇場から客足が遠のくようになり、劇場は数を減らしていった。

ストリップ業界が浮き沈みする中、ずっと変わらない芸を披露し続けるストリッパーたちがいる。その芸は花電車といい、それを披露する芸人を花電車芸人という。

花電車とは、祭りなどで利用される客を乗せない電車を意味する。そこから派生して、遊廓で働いていた娼妓などが、本来の仕事であるセックスではなく女性器を使って芸をした(つまり「男を乗せない」)ことを、花電車芸と呼ぶようになった。

現在、日本で花電車芸を披露している者は、十指にも満たない。もしかしたら、ストリップ劇場が消える前に、彼女たちはいなくなってしまうかもしれない。花電車芸人は、極めて貴重な存在なのである。

その貴重な花電車芸人のひとりに、ファイヤーヨーコがいる。彼女はアソコから火を噴くことを得意としていた。

海外で“道場破り”に挑戦する夢

ナニワミュージックでヨーコを初めて取材をしてから約2年が過ぎた頃のことだ。夢物語と思っていたものが動きはじめた。花電車芸を行っている海外のストリップ劇場を訪ねて、お互いの芸を披露しあうのだ。

これまでにもさまざまな雑誌や新聞、テレビなどにも企画を売り込んできたが、誰も首を縦に振る者はいなかったと、その話をした大阪のメキシコ料理店で彼女は言っていた。

企画自体は面白いが、海外に行ってみなければ、果たして道場破りが成功するかどうかもわからない。そもそも芸の性格上、どうしても性器を晒さなければならない。それは、日本だけでなく海外でも違法行為である。それゆえに、最悪の場合は逮捕される可能性もある。マスコミを覆っている事なかれ主義からしてみれば、ゴーサインなど出るはずがないのだ。

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