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トランプは「アフガニスタン」から撤退できるのか - 篠田英朗

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 現在の「新型コロナウイルス」の世界的広がりの中で、イランが、世界で3番目に多い1万5000人近い感染者数を出している(3月17日現在)。

 そこで戦々恐々としている国の1つが、イランと長い国境線を共有する隣国のアフガニスタンだろう。本来であれば、あらゆる措置が講じられていなければならない状況にあるが、現在のアフガニスタンにはそのような余裕がない。

 平時から、医療制度が貧弱なままであることは言うまでもない。しかも現状の混乱を見ると、効果的な対応をとるのは、さらに難しいだろうと考えざるを得ない。ひとたび感染が広がれば、大変な事態になる。アフガニスタンにさらなる複合的な危機が訪れ、それによって世界的危機もいっそう深まっていったりしないことを祈るのみである。

 2001年のアメリカにおける9・11テロは、世界情勢を一変させた。アメリカによるアフガニスタン侵攻は、当時国土の9割を実効支配していた「タリバン」政権を崩壊させた。

 だが、それにもかかわらず、タリバンはその後も根絶されることがなかった。それどころか、現在では再び勢力を取り戻し、国土の半分を影響下に置いているとも言われる。アフガニスタンでは、その間ずっと戦争が続いてきた。タリバンに加えて、「アル・カイダ」勢力のみならず「イスラム国」(IS)勢力もアフガニスタンに登場し、戦争が続いてきた。

 もっとも2001年以前のアフガニスタンも、戦争続きの国であった。少なくとも1979年のソ連のアフガニスタン侵攻以来、戦争は終わることなく続いている。アメリカがアフガニスタン情勢を複雑化させたのは確かだが、アメリカだけがアフガニスタンの平和の障害であるわけではないことも、歴史を見れば明らかだ。

「対テロ戦争」の帰趨は、アフガニスタンの安定化によって決まるはずだった。もはや近い将来における「対テロ戦争」の劇的な終結を誰も予測していない情勢の中で、アフガニスタンはこれからどうなっていくのか。国際政治の面からも、コロナウイルスの面からも、先が見通せない大きな不安がある。

アメリカとタリバンの合意

 2月29日に、アメリカとアフガニスタンのタリバンとの間で「和平合意」が結ばれた。

 この合意によれば、14カ月以内にアメリカおよびその他の外国軍は、アフガニスタンから撤退する。代わりにタリバンは、いかなる外国のテロリスト勢力とも協力関係を持たず、アメリカ軍などへの攻撃を防ぐことを約束する。その間に暴力は軽減され、アフガン政府に拘束されているタリバン兵士とタリバン側に拘束されている政府軍兵士の交換がなされることになっている。

 この合意は、国連安全保障理事会など各方面で歓迎されてはいる。

 合意締結数日後の3月3日、ドナルド・トランプ米大統領は、タリバン政治部門の指導者と言われるムラー・アブドゥル・ガニ・バラダル氏と、異例の電話会談を行った。大統領選挙を控えたトランプ大統領の、アフガニスタン駐留の米軍撤退への意欲には、並々ならぬものがある。

 だが残念ながら、多くのアフガン人にとって、合意内容は先行きの不安を与えるものだ。果たしてアメリカが撤退した後のアフガニスタンはどうなるのか。タリバンは新たに原理主義の統治体制を導入し、女性を迫害したりするのではないか。

 アメリカの後ろ盾がなくなれば、カブールのアフガン政府がタリバンに軍事的に対抗し続けることは難しい。もちろんタリバンが支配体制を取り戻せば、恐怖政治の復活だ。歴史的な合意は、多くのアフガン人に未来への不安を与えている。

 それは杞憂かもしれない。合意の実現可能性は、決して大きいとは言えないからだ。

 すでにアフガニスタン政府のアシュラフ・ガニ大統領は、タリバンとアフガニスタン政府の間の新たな交渉を経ずして、一方的に捕虜の交換に応じたりすることはない、と明言している。ガニ大統領は1500人を解放するという大統領令を発したが、戦闘に戻らない保証が取れないとして、渋り始めた。タリバン側は、総計5000人の即時解放を求めて反発しており、隔たりは大きい。

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