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独自取材!破産した老舗百貨店「大沼」、2年半前の幻の破産

1月27日、山形県唯一の百貨店「大沼」の破産が全国を駆け巡った。元禄17(1700)年創業の老舗が、業績不振にもがき破産した。

メインバンクだった山形銀行などの取引銀行もまた、大沼を支えてきた。だが、抜本再生を目指した支援が限界に達した2018年4月、ついに再生ファンドのマイルストーンターンアラウンドマネジメント(MTM)に再建を委ねた。しかし、MTMも再建は果たせず、2019年3月に大沼の執行役員らが出資する企業へ経営権が移った。地元企業の支援も受けたが、みのらず2020年1月に破産を申請した。

大沼が破産する2年半前の2017年。すでに、大沼が倒産を検討していたことは知られていない。この時はギリギリの交渉を重ね、何とか倒産を回避できたが、この選択が大沼の将来を大きく変えていく。

東京商工リサーチ(TSR)情報部が、大沼の幻の「倒産」に迫った。

私的整理か倒産か

TSRが独自入手した資料や関係者の証言によると、2017年5月25日、大沼は決済資金が不足する事態に陥った。

限られた時間のなか、山形銀行、FA(ファイナンシャル・アドバイザリー)会社、諸橋隆章弁護士(ライジング法律事務所、後の「大沼」破産申請代理人)らを中心に、再建の道筋を協議した。

大手家電量販店、百貨店、投資会社に次々とスポンサーを打診し、最終的に再生ファンドなど4社の投資会社が候補に残った。

4社は、米沢店や保険事業の承継か非承継、あるいは会社分割か第二会社方式か、などのスキームをそれぞれ訴え、最終的に2017年秋ごろMTMに優先交渉先が決まった。

実は、MTMが大沼の再建策として私的整理を検討している裏側で、密かに大沼の関係者らは破産と会社更生法を検討していたという。

私的整理、会社更生法、破産の3パターン

大沼の再建策は3パターンに絞られた。MTMは二次破綻リスクは残るが、一般債権者に被害を及ぼさない私的整理を軸に、協議を進めていた。だが、大沼は協議がまとまらなかった場合に備え、破産と会社更生法の準備を進めていた。そして、銀行側も債権者として会社更生法の申請を視野に入れていたという。

水面下での三つ巴の動きは、最終的に私的整理か破産の二つに絞られ、MTM案の私的整理が選択された。これで破産は潰え去った。

取材した関係者の一人は、「(破産の)5年前に抜本的な再生計画を立てていれば、大沼の歴史は変わっただろう。だが、ルールに縛られ、目的を達成できない状況だった」と裏側の事情を明かした。

再建には大沼の創業家、ステークホルダー、地域など、それぞれが覚悟と責任を示すべきだった。だが、既存ルールが壁になり、抜本的な改革はできなかった。取引銀行も大沼に長期間、様々な支援を続け、「限界の狭間で苦悩した」(関係者)という。

泥沼にはまった名門企業には、しがらみも多い。大沼の破産は、地方の名門企業が陥りかねない「将来の縮図」かもしれない。

山形唯一の百貨店だった「大沼」(2020年1月破産)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年3月19日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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