- 2020年03月18日 15:51
初監督作『一度死んでみた』が公開!誰もが目にするヒットCMメーカーが語る“面白さの公式”
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女優・広瀬すずが人生初のコメディ映画に挑戦し、吉沢亮や堤真一をはじめ豪華俳優陣が出演する3月20日公開の注目映画『一度死んでみた』。同作は、KDDI/au「三太郎」シリーズや日野自動車「ヒノノニトン」、家庭教師のトライ「教えてトライさん」など、誰もが一度は目にしたことのあるCMを手掛ける浜崎慎治氏の初の監督作品となる。
数々のヒットシリーズを生むCMディレクター・浜崎氏が考える、現代に受け入れられる「面白さ」とは何か、そして今作でチャレンジした「面白さ」とは何か、同氏に話を聞いた。
「広瀬すずはやっぱりすごい」
―まず、改めてこの『一度死んでみた』とはどんな映画なのか教えてください。
この映画はコメディなんですけど、他にもいろいろな要素が詰まっていて、僕はよく「闇鍋」みたいな映画だと言ってます。何が出てくるかわからない、ワクワクする映画になったのかなと。広瀬すずさんの初コメディ映画になりますが、そこを軸に吉沢亮さんや堤真一さんを筆頭にすごい俳優さんたちが大勢出演している、まさに大人の文化祭のような作品ですね。

―浜崎さんにとって初の長編監督作品になりましたが、制作中はどんなことを考えていましたか?
毎日毎日、豪華な出演者がカメラ前に来られて凄いなと思いながら、とはいえ出演する皆さんは決して遊びにきているわけではなく、とても真剣に役柄のことを考えて、作品を良くするために来ていただけました。
僕は普段CMを制作しているので、基本的には決まった絵コンテ通りに撮影を進めていますが、この映画の撮影ではその場に集まった役者さんのお芝居を見てから、少し調整させていただいて、という現場の手作り感がありました。CMの場合はひとつの商品があって、そこから派生して撮っていくのが一般的なんですけど、映画は少し根っこが違い、単純に映画の世界は楽しいと思いました。“ものづくり”ということに対して、非常にピュアな環境だなと。
―作品を振り返って特に印象に残っているシーンはありますか?
いろいろなシーンが思い出深いんですけど、一つは堤さんとリリーさん(リリー・フランキー)が屋上で会話するシーンですね。死んでしまった役柄の堤さんとリリーさんが、屋上で「いろいろなことに死ぬ前になんで気付けないんだろう」と話す場面ですが、二人の普段の掛け合いの良さが出ていて。
このシーンは天候の影響もあり、結果的に一発撮りでOKになったんですけど、やっぱり1回目の芝居が一番いいということはよくあるんです。必ずしも何度も撮影すれば良いシーンになるわけじゃなく「一回しか撮らない勇気」というのもあるなと思わされました。

―なるほど。
もう一つは、劇中の重要なシーンで広瀬さんが歌うシーンですね。彼女自身、これまで歌うということの経験は多くなかったと思うんですけど、しっかりと完璧に形にしてくれて。やっぱり広瀬すずってすごいなと。撮影は一年半前ですが、ちょっとお会いしないうちにどんどん変化していて、その会うたびに変わっていく感じが20代はすごいなと。

面白さの“根っこ”を掴めるかがポイント
―面白い絵を撮るという作業は、あらかじめ持っている完成図に近づけていくようなイメージですか?それとも現場で想像を超えるような場面が多かったのでしょうか。
僕のやり方は、ある程度のイメージを持って現場に挑みますが、まず役者のお芝居を拝見してから再考するという方法です。ただ、あるシーンが自分の想像していたもの以上になる体験は何度もしました。脚本に文字で書いてある以上に、役者さんが動くことで、どんどんと違った形になっていく。それができるのは役者さんたちが最高のパフォーマンスを見せたからこそなんだろうな、と。
監督の仕事は、役者の方がやりやすい“箱”を作るのが仕事で、いざカメラの前に立ってもらったら、あとは選ばれし者たちの仕事で、委ねるのが正しいんだろうと思うようになりました。多少修正を入れることはあっても、大きくは演者さんたちを信用する方がいいんだろうな、と。
―これまでのCMから今回の映画まで、浜崎監督は「面白い」ということをとても大事にしている映像作家だと思いました。面白さを引き出す工夫があれば教えてください。
「面白い」ってすごく難しくて、その人が持ってるものを出せたとしても、人が見て面白いと思うかどうかはまた別の話なんです。
さらにその逆もあって、その人がそういう言い方でセリフを言うからこそ笑えることもあったりして。そう考えると、笑いって芝居の技術の集大成とも言えるかもしれません。その人が今までどう生きてきたかっていうのも大きく関わってきますし。
今回、やっぱり広瀬さんは笑いの勘がすごく良くて、普段からしっかり相手の出方をよく観察されている方なんだなと改めて感じました。
―監督は普段から面白い方に反応されますか?
うん、やっぱり「面白い」って難しいんですけどね。あるとすれば、僕は10人の人がいたら5〜6人が面白いって言ってくれるもの、そういう大きなパイを取りに行くことを常に目指しているように思います。
もちろん1人が決定的に面白いと感じる尖った笑いがあることは間違いありません。そういう狭いけど刺さる人には刺さる笑いもあるけど、僕はどちらかと言うと子どもから大人まで笑えるものを目指したい。それはCMを作る上でも普段から心がけています。CM畑はお茶の間に近いので、やっぱりそこを忘れないように意識していますね。