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広島中央署の8500万円盗難事件「共犯者は警察内部に…」


広島中央署

「この事件には、共犯がいるはずなんです。広島県警は、真相を、もみ消している」

 そう憤るのは、地元紙記者だ。

 問題になっているのは、2017年5月に発覚した、広島中央警察署での窃盗事件。同年2月に、詐欺事件の捜査先から広島県警が押収した現金約9000万円のうち、保管していた広島中央署の会計課の金庫から約8572万円が消え失せていた事件だ。

 内部の犯行が疑われ、調査が進められたが、事件から3年近くたっても捜査に進展がなく、2020年2月に突然、「“容疑者” が死亡していた」と県警が発表し、世間を驚かせた。

 犯人と名指しされたのは、事件当時に同署員だった、脇本譲警部補(当時36)。脇本警部補は、盗難発覚前後に、競馬や借金返済などに8000万円以上のお金を使っていたとされ、2017年9月に自宅で死亡していたという。

 脇本警部補の死因は、検死がおこなわれなかったため、不明のままだった。しかし直接的な物証がないまま、「状況証拠は揃っている」として、県警は2020年の2月14日に、窃盗などの疑いで、脇本警部補を被疑者死亡のままで書類送検。3月11日に不起訴処分となった。警察発表では、単独犯だったとされている。

 だが、この県警の発表に今、警察内部からも疑問の声が上がっている。

「実際、広島県警は、水面下で2人の共犯者を捜査していたんですよ。脇本の人間関係を洗っていくと、県警OBのX氏と、現役女性職員のY氏が浮かび上がった。見立てはこうです。

 まずOBのX氏とY氏は、長年の不倫関係にあった。そして脇本も、Y氏と関係を持ってしまった。それを知ったX氏が激怒して、2人に金銭を要求した。それで、困った脇本とY氏が共謀して、署内から現金を持ち出した。当然X氏は、法外な金の出どころを知っていた――。

 県警は、そんなストーリーを組み立てたのです。事実Y氏には、何度か事情聴取もしていました」(捜査関係者)

 地元メディアの間でも、“3人共謀説” は広まっていた。

「脇本氏の共犯が捜査されているという話は、2017年ごろから地元メディアのあいだで知られていました。当時、捜査対象者の相関図が記された捜査資料まで出回っていて、そこには脇本氏に加え、X氏とY氏の名前も入っていました。Y氏については、詳細な行動確認記録まで書かれていたのです。

 つまり、内偵捜査がかなり進んでおり、逮捕直前だったということ。複数のメディアが、X氏とY氏の逮捕に備えて、彼らの自宅を張り込んでいました」(地元紙記者)

 だが、県警発表のとおり、事件は “脇本警部補の単独犯行” として、幕が下ろされた。

「あれだけ捜査していた共犯の話はいったいどうなったのか、X氏とY氏が突然 “シロ” になる新証拠が出てきたのか。何も説明がないまま、捜査は中止されたのです。県警内部でも、首をかしげる者は多いですよ」(前出・捜査関係者)

 脇本警部補は、手記のなかで、最後まで無実を訴えていた。

「彼の両親も、『息子の無実を信じている』と訴えている。簡単に、捜査を終えていいわけがない」(前出・地元紙記者)


2017年9月に亡くなった脇本警部補

 別の地元紙記者が続ける。

「少なくとも、脇本氏の単独犯ではない証拠は、出回った捜査資料以外にもあります。管理のずさんさを改めるために、中央署では2017年11月7日、盗難に遭った金庫に監視カメラを設置しました。しかし、そのまさに前日、なんと『金庫の中に2000~3000万円ものお金が戻されていた』というのです。

 当時、脇本氏はすでに亡くなっています。いったい誰が、そんな大金を金庫に入れたのか。まるで犯人が、一部を “返金” したかのようです。しかも、この件はいっさい公表されず、見つかった金の行方も不明だという、驚くような話なんです」

 複数の証言から浮かび上がるのは、まるで何かを隠そうとするかのような、“複数犯行説” の強引な捜査中止だ。

 3月11日、本誌は、共犯として捜査対象になっていたX氏が自宅から出てきたところを直撃したが、「(県警を)辞めて10年近くたつけえ、知らん。どこで(そんな話を)聞いたんや? わしは関係ない」と話すのみだった。

 そもそも、このX氏もY氏も、本当に “共犯” だったのか、もちろんわからない。これすらも、県警が作り上げた “ストーリー” にすぎなかった可能性もあるのだ。

 だが、「きちんとした結論が出ないまま、捜査が立ち消えになる」――県警内部から上がるのは、そうした異常事態への疑問の声だ。

 広島県警広報課に取材を申し込むと、金庫に戻されていた大金の行方も含めて、「個別事件の捜査に関する具体的な内容については、お答えできません」と回答するのみ。

 長年、警察内部の腐敗を取材するジャーナリストの寺澤有氏(53)はこう話す。

「警察が組織ぐるみで裏金を作り、幹部が私腹を肥やしているというのは、公然の秘密です。警察が何か問題を起こした警察官を取り調べる際、被疑者に “裏金の件をバラすぞ” と反発されると、とたんに弱くなる。だから警察は、身内の不祥事に甘いんです。

 今回のケースでは、脇本警部補の単独犯とすることが、警察にとって、あらゆる意味で都合がよかったということでしょう。気になるのは、盗まれた8572万円の行方です。

 このお金の取り分をめぐって、真犯人たちの間で “仲間割れ” でも起きない限り、関係した署員が口を割る動機はなく、真相は藪の中でしょう」

 広島県警の自己都合で、この事件の “結論” を出したのだとすれば、県警の信用失墜は免れない。

(週刊FLASH 2020年3月31日・4月7日号)

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