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新型コロナで関連死を防げ!「医療的ケア児」をめぐる切実な涙の訴え(水島宏明)

 3月16日(月)NHKが新型コロナウィルスの感染が拡大する中で様々な人たちの不安に答える緊急特別番組を総合テレビで放送した。

新型コロナ緊急生放送『いま、あなたの不安は何ですか?』

 内容は「視聴者密着」の画期的なものだった。

 番組のホームページには次のように書いてあった。

テレビを「どんな不安でも話せる場」にすることを目指した、生放送特番を放送します。

この特番ではNHKの“総合力”を結集。安心につながる確かな最新情報をお伝えする「NHKスペシャル」「ニュース番組」、生活情報の「あさイチ」「ガッテン!」、教育・子育ての疑問に答える「ウワサの保護者会」、マイノリティの声を届ける「ハートネットTV」など、各番組の個性や得意分野を活かし、視聴者とネットでつながりながら、日頃の報道だけでは伝えきれない、さまざまな不安やお悩みの声をうかがい、各分野の専門家と一緒に向き合っていきます。

みなさんの質問をお寄せください。

出典:NHK NEWS WEB 特設サイト「新型コロナウィルス」

 「あさイチ」や「ガッテン!」など様々な番組スタッフを放送するNHKだからこそ可能な番組といえた。

 感染予防の専門的な医師やこのテーマを取材してきた専門記者に生放送で答えてもらう形で視聴者から寄せられて切実な声に一つひとつ回答していくものだった。

 筆者がとりわけ注目したのは、日頃はETVで福祉のテーマを取りあげている「ハートネットTV」がどんな立場の人の問題をこの総合テレビの枠で放送するのかだった。病気や障害を抱えて、とりわけ深刻な影響を受けている人たちのことが放送されると思ったからだ。

 「ハートネットTV」からは、重度の障害などで「たんの吸引」など日常的に医療的な介護を必要とする「医療的ケア児」と呼ばれる子どもたちについて取材している男性ディレクターが登場し、そうした子を介護をする親たちの切実な声を伝えた。学校が一斉に休校になったことで、そのしわ寄せが親たちに行ってしまう実態があった。

(脳性マヒで全介助が必要な高校1年生の息子がいる母親)

「介助が大変です。日中は学校でしてもらっていたことを家で引き受けることになり腰がきついです」

(進行性の筋肉の疾患を抱える高校2年生の息子がいる母親)

「(人工)呼吸器をつけて、いつも楽しみに学校に通っていましたが家にこもりきりでかなりきついです。家以外に居場所がありません」

 そうしたケースを短く伝えた後で、番組では慢性肺疾患のある小学4年生の浜本優慈さんと母親の春華さんの家と中継をつなげて直に声を聞いた。「今どんな不安を抱えていますか」という質問に対して、春華さんの話は最初から涙まじりだった。

「はい・・・。ちょっと泣いてしまいそうなんですけど」

 涙まじりの声で春華さんは話した。

慢性肺疾患のある小学4年生を抱える母親の浜本春華さん)

「やっぱり学校が休校になったことで、学校がすべて担ってくださっていたことが家で全部しなきゃいけなくなったことがたぶん、心神的に。体力的にも疲弊している家庭が多い・・・」

 短い放送時間ではこの母親の春華さんの訴えの意味を理解できた人は多くないだろう。

 実は「医療的ケア児」をめぐっては母親たちの努力で、重度の子どもたちを学校に通わせる取り組みがこの数年、各地で進められてきた。

 母親が自ら付き添って「たんの吸引」などを学校で行うなどの実践を示して、次第に学校でもそうした看護や介護などもしてもらえる場所を増やしていった経緯がある。本当に涙ぐましい努力だったと思う。

 このテーマはなかなかニュースでは放送されずに「ハートネットTV」などで細々と報道されてきた問題だ。「家」で一身に介護や看護を背負ってきた母親たちにとっては、ようやく日中は「学校」にも委ねる仕組みが出来たところだったのに、一斉休校で再び「家」に負担が戻ってしまう構図になってしまったのだ。

 春華さんの訴えは続いた。

(慢性肺疾患のある小学4年生を抱える母親の浜本春華さん)

「我々、育児と介護と看護と3つを担った上で、家事をして、それで子どもの命をつないでいくことを家庭でしなければならないんですが、やっぱりうつまでこれが続くのか。いつまで家庭で踏ん張ってそこを担わなければならないのか、というのは今、全国の医療的ケア児とか障害児を抱えている家庭はみなさん同じように感じていると思います」

「すいません。ちょっと泣いてしまって・・・」

 最後にこう締めくくった春華さん。スタジオのMCが必ずしも十分に「医療的ケア児」をめぐる背景を説明しないでそのまま感染症の専門家に話を降ってしまったため、一般の視聴者にどこまで伝わったかはかなり疑問だが、スタジオではこの後で「消毒液がないと命の危機に直結する」などの医療的ケア児をめぐる問題も提起された。

 これもさらっと紹介されただけで一般の視聴者にはよく分からなかったに違いない。

アルコール消毒液の不足は医療的ケア児にとって命に直結する切実な問題だ

 NHKも3月13日に関東ローカルのニュースでは報道しているが、全国放送ではまだくわしく報道していない。

 東京都内の医療的ケア児を抱える母親はニュースで次のように訴えている。

「消毒液がどこに行っても手に入らず、とても困っています。在宅で医療的ケアを行っている人たちにとっては命綱のようなもので、とても深刻です。国が優先的に消毒用品を配るなど何らかの措置を考えてほしい」

出典:NHK首都圏NEWS WEB(3月13日)「 医療的ケア必要な子の親に危機感」

 このままアルコール消毒液などが医療的ケア児の家族に届かない状況が続けば、新型コロナウィルスではない死者が出てしまう。

震災のときに生じていた避難所などでの震災関連死。それと同じような“新型コロナ関連死”だ 

 新型コロナ対策で誰もかれもが大変な状況に追い込まれれている。

 そうなったときに、真っ先に「しわ寄せ」が医療的ケア児などの弱者に行ってしまう構図がある。

 おりしも、NHKが「新型コロナ あなたの不安は何ですか?」を放送した3月16日の夜。この番組の前後のニュースは、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で無差別殺傷事件を起こした植松被告への死刑判決を伝えていた。

 「障害者は死んだほうがいい」と主張し続けた植松被告だが、新型コロナの問題が広がる今、私たちは「お前は間違っていたのだ」と社会全体で示していくことが必要ではないだろうか。

※Yahoo!ニュースからの転載

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