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生まれつき耳が聞こえない31歳のワーママが有名企業を辞めて目指す難聴児の学習支援

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難聴児のうち92%は「聞こえる親」から生まれる――。

生まれつき聴覚障がいを持つ子どもは1000人に1〜2人の割合で誕生するといわれています。一方、遺伝によるものは少なく両親が難聴ではないケースは9割以上にのぼります。以前は2歳ごろになるまで気づかないことも多かったそうですが、現在は新生児スクリーニングによって生後3日で判明することも。医師から突然我が子の障がいを告げられ戸惑う両親が多いのも現実です。

株式会社「デフサポ」の代表・牧野友香子さん(31)

そんな難聴児や親の教育支援に取り組む女性がいます。株式会社「デフサポ」(東京都)の代表・牧野友香子さん(31)です。自身も生まれつきほとんど耳が聞こえず、また現在は難病で片耳難聴の娘を育てる母親でもあります。今月には、小学生向けの教材開発に向けたクラウドファンディングもスタートしました。活動に向けた思いを牧野さんに聞きました。

幼稚園から大学まで、聞こえる人だけの一般校で過ごす

牧野さんは大阪府出身。2歳のときに先天性の重度聴覚障がいが発覚しました。今でもほとんど耳が聞こえず、補聴器をつけても人の声は聞こえません。

幼少期の牧野さん(本人提供)

一方、母親のサポートや口語での言語訓練を受けたこともあり、幼稚園から高校までろう学校といった特別支援学校ではなく地元の公立校に通いました。

中学校の修学旅行で東京ディズニーランドを訪れた牧野さん(中央、本人提供)

大学受験でも難関国立大学である神戸大学に現役合格。就職活動の際もリーマンショックの余波で厳しい採用が続く最中、大手電機メーカーのソニーに一般採用枠で内定し、2011年に入社後は人事部門で研修などを担当していました。

ソニーの人事部門で勤務(本人提供)

「幼稚園から大学まで、そして会社に就職した後も、健聴者だけの中に交ざって生活をしていたこともあり、必然的にコミュニケーションのコツを学んでいきました。もちろん聞こえないことで苦労したことは数え切れないほどありますが、事前の対処もできるようになり、日々楽しく過ごしてきました」と牧野さんは話します。

耳が聞こえない中での育児、娘の難病が発覚

しかし、25歳のときに改めて難聴に対する課題を感じるきっかけが訪れます。それは、2014年に長女を出産したことでした。

長女が50万人に1人が発症する骨の難病を持っていることがわかったのです。そして、片耳の聴覚に障がいがあることも判明しました。

「生まれたばかりの娘の泣き声に気づくことができないので、夫が家にいないときは一睡もできませんでした。ただでさえ耳が聞こえない中での育児は大変なのに、なんで障がいがある子どもが生まれたんだろう…と絶望し、初めのころは毎日泣き続けていました。それでも我が子は一日一日どんどん大きくなっていく。この子の将来のためにもできることをやろうと思うようになりました」

Kelly Sikkema on Unsplash

何かできないかと模索し始めた牧野さん。情報を集めたり実際に行政に話を聞きにいったりするうちに、教育の選択肢が限られていることや、育児に関する情報が少ないことに気が付きました。「難聴の当事者として、そして障がいを持つ子どもの親として自分の経験や知識が役に立つのかもしれない」。牧野さんはブログで発信をすることにしました。

発信を始めてほどなく、難聴児の親から「経験談を知ることができて参考になった」「子どもが何に困るのかが具体的にわかった」と連絡がきたり、また「不安で先が見えない」と子育てに関する相談が寄せられたりするようになりました。2016年に東京と大阪の2ヶ所で対面のワークショップを行ったところ、ブログだけでの告知にも関わらず約40人が参加。悩む親たちの姿を目の当たりにしました。

「特に、病院等の医療機関では人工内耳の手術など「聴覚」を活用する方法が中心になり、学校や療育などの公的機関では、手話を中心とした「視覚」を活用する方法が中心です。

本人提供

同じ悩みに対してもそれぞれの機関から受けるアドバイスが全く異なることもあります。どうしたらいいのかわからず右往左往してしまっている親御さんがたくさんいることがわかりました」

活動当初は仕事の傍ら、就業後や休日の時間を使い相談を受けていましたが、その件数も徐々に増加。次女を2016年に出産したこともあり、仕事と2人の子どもの育児、そしてデフサポと3つの活動を同時に続けることには難しさがありました。

「入社後、2回産休・育休を取り、ようやく仕事に集中して取り組めるタイミングでした。でも、これまで相談に乗ってきている方たちに対して、中途半端なことをしたくない。最後までかなり悩みましたが、退職することに決めました」

2018年3月、7年間勤めたソニーを退社し、デフサポの事業に専念することにしました。

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