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「コンサート中止で3月の収入もゼロ」 新型コロナで“貧困”に苦しむイベントスタッフ、演奏家 - 清談社

 世界中をパニックに陥れている新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)。日本でも混乱が続き、政府は2月26日に「感染拡大を防ぐため、スポーツや文化イベントの中止や延期」を要請した。以降、多くのアーティストが相次いでコンサートの中止を発表し、プロ野球のオープン戦や大相撲は無観客で実施されるなど、異例の事態となっている。

【画像】「来年以降もお先真っ暗」と話す塚本奈々さん(25)

 SNSにはコンサートの中止を嘆くファンの声があふれているが、エンタメ業界は死活問題に発展している。新型コロナ騒動に巻き込まれ、突如として働く場を奪われてしまった人々に話を聞いた(取材・文=真島加代/清談社)。

30万円の収入が、2月後半からゼロに

 某イベント企画運営会社のアルバイトとして働いている中田香菜さん(仮名・24歳)は「3月は一度も仕事をしていない」と話す。

――中田さんの会社の業務内容を教えてください。

中田香菜さん(以下、中田 イベント時の舞台の組み立て、コンサート場内の案内、物販や出演者向けのケータリングの手配など、イベントに関するあらゆる業務を行っています。私は短期で入るアルバイトを統括する部署にいるので、基本的には現場に出ません。

 普段なら、担当した現場の数に応じて月に30万円前後の収入がありますが、2月の後半から一度も出勤していないので収入はゼロです。アルバイトの掛け持ちもしていないので、このまま自粛の状況が続くと3月は給料の大幅減か、無収入になりますね。

――新型コロナの影響が出はじめたのはいつ頃でしょうか?

中田 2月の初めから不穏な空気がありました。当日入る予定だった学生アルバイトから「ウイルスが怖いので出たくない」という連絡が入るようになって、人手が足りず、私も現場に出ていました。また、イベント業務は接客業なので、本来マスクの着用は禁止なのですが、アーティストのスタッフ側がマスクを用意してくれたりと、特例続きでした。私自身は2月初め頃は「新型コロナってそんなに大変なの?」と楽観視していましたね。

――政府の自粛要請があるまで、アーティスト側もコンサートの中止に踏み切れずに困惑している印象でした。

中田 政府の自粛要請が出る前から、企業の展示イベントは続々と中止されていたんです。でも、ミュージシャンのコンサートは、チケットの払い戻しなどの問題があって、自主的にはなかなか中止にできなかったのかも。2月26日の政府が自粛要請を出したあと、うちの会社で予定されていたコンサートはすべて中止されました。うちの会社は関わっていないので状況はわかりませんが、2月29日と3月1日に東京事変がライブを決行したのは驚きましたね。

「こんなことで貯金を取り崩したくなかった」

――現在はどのように生活しているんですか?

中田 今は富山の実家にいます。私以外にもエンタメ業界で働いている友人は、みんなすごく困っていますね。アルバイトや契約社員でも現場に出勤しないと給料が発生しなかったり、という雇用形態で、私のように実家に戻っている人も多いです。実家なので食事の心配はないけど、東京で借りているマンションの家賃7万円はいつもどおり引き落とされますよね。

 貯金で家賃は払えるけど、こんなことで貯金を取り崩したくなかったです……。仕事がなくなってしまったので、マンションを引き払って地元に戻るか、東京に残るのか、両親と話し合って決める予定です。

フリーランス演奏家の憂鬱

 中田さんのように、人生の岐路に立っているのはイベントスタッフだけではない。舞台に上がる演奏家もまた、働く場所を失い困窮している。塚本奈々さん(仮名・25歳)は、フリーランスのトランペット演奏家として、さまざまな演奏会に出演していたが、「新型コロナが流行して以降、演奏に関するすべての仕事がなくなった」とため息をつく。


塚本奈々さん ©真島加代/清談社

――普段、フリーランスの演奏家としてどんな仕事をしているのですか?

塚本奈々さん(以下、塚本) 演奏会に出たり、教育機関の吹奏楽部で指導をしたりする依頼が多いです。自分で演奏会を主催することもありますね。指導や演奏会などで得る収入は、だいたい月に10万円ほど。仕事ではありませんが、フリーランスの演奏家にとっては、オーケストラのオーディションに出るのも重要な活動のひとつです。私はトランペットだけでは生活ができないので、掛け持ちでスーパーのアルバイトをしています。

――もともとギリギリで生活していたところに、新型コロナが流行したんですね。

塚本 そうなんです……。予定していた演奏会は規模を問わず全部中止、教育機関もすべて休校で部活動も禁止なので、生徒の指導もできずトランペットに関わる仕事は皆無です。部活の指導は1回8000円ほどですが、貴重な収入源なんです。

 芸術関係の知り合いは、みんな仕事がなくなってますね。引っ越しやティッシュ配りの短期アルバイトをして、どうにか生活しているみたい。私の場合は、もともとのアルバイトも明らかにシフトが減らされています。営業時間も短くなってるし、お客さんも少ないから社員だけで手が足りてるんですよね。

「来年以降もお先真っ暗なんですよ」

――今現在は、どのように生活をしていますか?

塚本 スーパーのアルバイトを続けつつ、短期で入れるバイトをしています。いつもトランペットの練習に使っていたスタジオも営業していないので、練習場所もないんですよ。ひとり暮らしをしているため、家賃もかかるし食費もかかる。音楽以外の仕事で稼ぐしかないです。

 でも、一番ツラいのはオーケストラのオーディションがないこと。私のようなフリーランス演奏家の多くは、オーケストラへの所属を目指して活動しているのですが、私の場合は、オーケストラのオーディション予定はありません。今年のオーディションが新型コロナのせいでなくなれば、来年以降もオーケストラに所属するチャンスすらもらえないということ。たとえ新型コロナが今年中に収束しても、フリーランスの演奏家にとっては来年以降もお先真っ暗なんですよ。

――大阪のライブハウスで感染者が出て話題になってますが、影響はありますか?

塚本 大打撃です! 3月末に小さな演奏会に出演する予定なのですが、当初は前売り1000円、当日1500円でチケットを売っていました。でも、大阪のライブハウスで感染者が出て以降、風評被害で集客ができなくなってしまったんです。急きょ前売り券を無料にして当日券は500円に大幅に値下げしました。でも、ライブハウスはチケットノルマがあるので、赤字分は出演者が補填しなければなりません。ボランティアどころか、お金を払ってみなさんに演奏を聞いてもらう状況です。

 ただ、私のように自腹を切ってでも自分たちの演奏を聞いてもらいたい、という演奏家はたくさんいると思いますよ。

 前出の中田さんは「ゴールデンウィークまでは現在の自粛ムードは続くのでは」と予想している。実際、政府は3月10日の対策本部で大規模イベントの自粛要請を10日間程度引き伸ばし、引き続き不要不急の外出を避けるように呼びかけている。新型コロナに翻弄されるエンタメ業界に、活路はあるのか。

(清談社)

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