
新型コロナウイルスを巡る事態は、刻々と変化している。WHOがパンデミック(世界的な大流行)であることを宣言し、感染者は増え続けている。それにより、医療現場は大きな負担を強いられている。
「私の病院では感染者を収容する『陰圧室』が満室です。いま突貫工事で陰圧室を増設していますが、空気中のウイルスが漏れないよう室内の気圧を下げる特殊な構造のため、急ぎの工事には不安があります。もっとも、ほかの指定医療機関も似たり寄ったりのようですが……」
苦渋の表情で打ち明けるのは、感染症指定医療機関に勤務するA医師だ。
「二類感染症相当」に指定された新型コロナウイルス感染者の治療は、全国に約400ある感染症指定医療機関が受け持っている。
「二類感染症相当に指定されることによって入院費の公費負担などが可能になりましたが、結果として対応できる医療機関が限られてしまった。そのため、指定医療機関では感染症専門医が土日返上で24時間に近い体制で勤務している。
もちろん現場は患者のために全力を尽くしますが、新型コロナへの対応はゴールが見えず、『いつまで続くのだろう』というメンタル面の負担が大きい」(A医師)
クルーズ船の乗客を含む国内の感染者は1300人を超えて増加の一途だ(3月12日時点)。こうしたギリギリの闘いが続く中で、医療現場からは「すべての感染者」に対応することよりも、「重症者への対応」を優先すべきとする声があがっている。前出のA医師はこう訴える。
「いまの仕組みでは37.5度以上の発熱が続けばウイルス検査の対象になり、症状が軽い人でも検査をしたら隔離し、それで陽性と診断されたら、いくら元気でも2週間程度入院する必要があります。この間に、ベッドが足りず、重症化する怖れのある患者を受け入れられないことが最も心配です。たとえ重症化してもなるべく早い段階で適切な治療を受ければ回復の見込みはある。だからこそ、症状の軽い人ではなく、重症になりそうな人を優先的に診療できる仕組みが求められます」
つまりは、感染者が増え続けて「予防」に限界があることが見えてきた以上、一人ひとりが感染予防とともに「重症化」を避けるための知識を身につける必要があるということになるだろう。
※週刊ポスト2020年3月27日号