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コロナ黙殺、東京五輪・開催強硬派の言い分 - 新田日明 (スポーツライター)


(Sergio Yoneda/gettyimages)

徐々に現実味を帯びてきた。東京五輪・パラリンピックの延期、もしくは中止に関する話題に世界中で火がついている。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、WHO(世界保健機構)は、あれほど慎重だったはずの「パンデミック」を観念したかのように宣言。

米国のドナルド・トランプ大統領が東京五輪について「1年延期がいい。1年後に開催すれば、無観客で開催するよりいい選択肢だと思う」と発言し、さらにIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長も地元公共放送ARDの番組でWHOから大会中止勧告を受けた場合は開催を断念せざるを得ないとの考えを示した。

有力な大会関係者の間からも観測気球と思われるかのような開催可否についての発言は次々と飛び出している。IOC最古参委員のディック・バウンド氏が私的な見解としながらも開催の判断期限を5月下旬との見方を示し、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の中で五輪ビジネスに精通する「現実路線派」として名高い高橋治之理事も大会の1~2年延期論について触れた。

そのたびに日本政府や東京オリ・パラ大会組織委員会にうごめく「開催強硬派」が必死に火消しへと奔走していたが、さすがにトランプ大統領とバッハ会長の発言には「パワーバランスで言えば圧倒的に上の2人だけに、いくらこちらが否定しても逆に胡散臭くなって説得力を欠いてしまう」(東京オリ・パラ大会組織委員会関係者)とほぼお手上げ状態のようだ。

最後の最後まで可能性がある限り、開催を目指していく

これだけの危機的状況にもかかわらず未だ東京五輪の通常開催を訴え続ける開催強硬派の1人に「なぜ、あなた方は頑ななのか」と尋ねてみると次のようにまくし立てられた。

「ウイルスが蔓延し、日本だけでなく世界全体が大変な状況へと追い込まれていることは分かっている。だが、私たちは最後の最後まで可能性がある限り、開催を目指していく。振り上げた拳をおろすことは簡単だ。しかし今、ここで通常開催を断念し、延期や中止を決めれば日本は大混乱に陥ってしまう。正直に言えば我々は延期や中止、あるいは妥協案の無観客での開催も一切の視野に入れていなかった。それを不測の事態が発生したからと言っても、そう簡単には受け入れられない。

あなた方のようなメディアは延期、中止、無観客などと好き勝手に煽るが、実際にそうなる場合のケースをシミュレートしてみてくれ。たとえば延期と言っても、時限的に採用してきた職員も含め数千人単位にまで膨れ上がった大会組織委員会の職員たちをそのまま契約延長させるのか。人件費だけでも組織が傾く危険性が出てくる。

それに大会会場のリスケジューリングや代表再選考を含めた各競技団体へのアナウンスなど、ざっと考えただけでも『1~2年後』の短期間では容易に解決できるわけがない問題が山積みだ。何よりも日本の経済は大打撃を受け、数年間はそのダメージを引きずらなければならなくなるのは自明の理。具体的な数字は経済アナリストたちに聞いて欲しいが、全員の答えは『壊滅的打撃』で同じだろう」

やや感情的になっていたようにも思えた。確かに延期や中止、あるいは無観客での開催になったとしても日本にとって経済面での大打撃を筆頭に様々な弊害が生じることは避けられないだろう。

7月24日に東京の新国立競技場で〝勝利の開幕宣言〟をする

ただ逆に言わせてもらえば、この人物は自身の用いた「シミュレート」を新型コロナウイルスの終息宣言が出されぬまま東京五輪を通常開催で強行した際、一体どれぐらいの危険を生み出す可能性があるのかについて全くしていない。最も肝心なところに目をつぶり、大会の通常開催ができない場合のデメリットりを繰り返していた。そしてこの人物は今後の見通しについても次のように述べている。

「まだ開催まで4カ月ある。日本政府の自粛要請が功を奏し、そして世界各国も知恵を振り絞って未曽有の危機を乗り越えられると信じていますよ。今、日本全体、いや世界中がウイルスとの戦いに臨んでいる最中。これを乗り越えて必ず勝って7月24日に東京の新国立競技場で〝勝利の開幕宣言〟をする。それが私たちの夢なんですよ。何とか実現したい…いや、必ずさせる!」

気合や根性論だけでは、新型コロナウイルスを完全に封じ込めることなど限りなく困難だ。大衆受けする意味でも便利な言葉だったはずの「アスリートファースト」が、この人物から一切聞かれなかったのも気にかかった。通常開催へ暗雲が垂れ込める東京五輪は世論を無視する開催強硬派たちによって、おかしな空気に包まれているのは残念ながら事実のようだ。

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