欧州で新型コロナウイルスの感染が急増している。これを受け、世界保健機関(WHO)は13日、「いまや欧州がパンデミック(世界的大流行)の中心地となっている」と話した。
なかでもイタリアで猛威をふるい、当局の情報では、14日時点でこれまで確認された感染者の総数は2万1157人、死者数は1441人にのぼった。死者数は前日に比べ175人増加。感染者数は、イタリア第2の都市・ミラノがある北部ロンバルディア州に最も多い(14日時点、1万1685人)。
国内の人々はどのように感じているのだろうか? また、今後他の国々はイタリアからどのような教訓を得るべきなのか――。市民の声と、専門家の見解を聞いた。
国内全土で移動制限が続く、各地の声は?
ミラノ(14日時点、感染者数1551人)でレストランを経営するアレッサンドロ・イタリアーノさん(38)は、「今は政府の指示に従い、状況が良くなることを信じ、国民が団結することが大切です」と力強く語る。

「もちろん、移動制限など厳しい措置による生活の大きな変化に、家族全員ストレスを感じています。僕が経営するレストランも一時閉店中です。多くのホテルも一時閉館し、観光業界で働く友人たちも、この先が不安だと言っています」
「でも逆に考えると、現在が辛い状況だから、この先は良い方向にいくしかない。きっと今は一歩立ち止まり、将来について考える時間が与えられたのです。不平不満を言う代わりに、家で家族とゆっくり過ごし、今後の夢や再スタートの計画を考えるほうが賢明です」
「一般的に社交が大好きなイタリア人にとって、キスもハグもできないのは苦痛です。でも、身体的に距離がある時期だからこそ、精神的にイタリア人皆が心を寄せ合い、この国を守るべきなのです」
また、日本ではマスクの品薄状態が続き、15日から政府がマスクの転売を政令で禁じるが、イタリアの状況はどうなのか。
「街では、マスクをしている人はあまり見かけません。そもそも、マスクは感染者が他者にウイルスを移さないために装着すると指示を受けているので、現段階では僕も装着する必要はありません」(筆者注:一方で、中立系新聞コリエレ・デラ・セラの報道によると、イタリアでもマスク不足が問題となり、ネット転売が横行しているという)
一方、ミラノからほど近い場所に位置するロンバルディア州北部のソンドリオで、一人暮らしをするロレンツァさん(70)。普段は明朗な彼女に電話をかけると、日常とは異なる故郷の光景を涙声で訴えた。
「レストランや商店はすべて閉まっている。車や電車などで移動する人に対し、警察が街や駅で外出の目的を記入した書類の確認をしている。これでは、まるでゴーストタウンだわ。こんなことがイタリアで起こるなんて、信じられない」
「隣町に住む高齢の母にも、会いに行けない。友達とも会えない。街で知り合いと会っても、挨拶のキスもできない。当たり前だった日常から切り離されて、家にずっと一人でいるのは辛すぎる…」
