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独裁大統領もソーシャルメディアをフル活用

 独裁者はマスメディアを支配しようとするが、一方でソーシャルメディアを嫌う。新聞やテレビ放送、ラジオ放送などのマスメディアはコントロールできるのに対して、SNSやツイッターのような市民主導のソーシャルメディアはコントロールが難しいからだ。その上、ソーシャルメディアを介して盛り上がった民主化運動で、北アフリカ諸国の長期独裁体制の転覆が続いたからなおさらである。

 ところがベネズエラのチェべス(Hugo Cha'vez)大統領は違う。反米主義者であることもあって、米国などの西欧諸国から独裁者のレッテルを貼られることが多い同大統領だったが、ソーシャルメディアを嫌うどころかフルに使いこなしている。同大統領のFacebookアカウントには15万人以上のファンが付いており、またTwiterアカウントには約184万人の国民がフォローしている。

 Facebookのページには、以下のスクリーンショットの例のように、時にはカストロ氏の動画やゲバラ氏の似顔絵が現れたりする。リビアのカタフィ( Qaddafi)大佐の写真が出ていたこともあった(一時、カタフィ氏のベネズエラ亡命説も浮上)。米政府が煙たがるのも仕方がないか。

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 次は同大統領のTwitterページ(@chavezcandanga)である。

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 チェべス大統領は最近特に、このTwitterを国民へのメッセージツールとして頻繁に利用している。6月上旬にキューバでガン手術を受けたり、その後の治療でも祖国を離れることが多く、海外のキューバからつぶやき続けたのだ。重病説が流れたこともあって、健在であることをアピールするため先週には40以上のツィートを投稿続けた。カストロ氏と対談している写真や、見舞いに来たサッカー選手マラドーナ氏との歓談写真を付けたりもした。サッカーの南米選手権の準決勝(7月20日)のベネズエラ対パラグアイ戦もカストロ氏と共にキューバでテレビ観戦をし、PK戦で祖国が惨敗した時は、病院のベッドから
"In my modest opinion... THEY ROBBED US OF THE VICTORY GOAL! And I hope that with this I'm not offending anybody!" と、勝利を詐取されたと主張するツィートを発信したりもした。異国の病床から国民の悔しさを代弁するメッセージである。こうした大統領のツィートの内容はすぐに、ベネズエラ国内の公共テレビ局の放送番組中の画面にポップアップ表示されたというから、マスメディアとの連携もすごい。祖国を離れていてもTwitterのお陰で、国民の身近に大統領がいつも存在しているという演出が実現したのだ。

 
 でも、ここで疑問が。ソーシャルメディアを駆使してプロパガンダを実施するとしても、多くの国民がソーシャルメディアと接していないと意味がない。意外なのだが、南米の国々は一般に裕福でないのに、ソーシャルメディアがかなり先行普及している。しかも反米色が根強く残っているにも関わらず、米国産のTwitterやFacebookが浸透している。興味深い。

 中でもベネズエラでは、ソーシャルメディアが深く根を下ろしている。15歳以上の国民のTwitterリーチ率(2011年3月時点)は21%で、世界で5番目に高い。またFacebookの浸透率も目を見張る。3000万人弱の全国民のうち1/3に相当する約1000万人がFacebookを利用しているのだ。インタネットユーザーのほとんどがFacebookを使っていることになる。

●ベネズエラのTwitterリーチ率
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●ベネズエラのFacebook浸透率
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 FacebookやTwitterに加えて、Flickr(chavezcandanga's photostream)やYouTube(misionchavezcandanga)も活用し、それらを束ねたWebのホームページも備えている。最近のWebには、以下のような写真が掲載されていた。

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 ソーシャルメディアの活用が欠かせなくなってきたといっても、現実にはまだまだテレビなどのマスメディアの影響力のほうが大きい。ベネズエラは石油資源に頼っている国だが、同大統領はその石油産業を国有化したり、また資産家の財産を没収してきたため、富裕層の反発が強い一方で、国民の大半を占める貧困層から高い支持を得てきていた。このため富裕層が保有していたマスメディアは、反チェべス的な内容を報道することが多かったが、今ではそのマスメディアもチェべス派に掌握されている。公共テレビでは毎日曜日に同大統領が司会する5時間の番組「Alo' Presidente」(こんにちは大統領)を放送するまでになっている。同大統領のツィートがテレビ画面に突然ポップアップ表示されるのも、当然なのかもしれない。


 
 12年の長期政権が続いているチェべス大統領は、マスメディアだけでなくてソーシャルメディアもうまく使いこなし、安泰のように見える。だが、あまりにも強権的な政治手法に批判が高まっているし、豊かな石油資源を持ちながら貧困層の生活にあまり改善が見られていないことに対する不満もくすぶっている。そこで来年の大統領選挙に向けて、反チェべスの動きが大きくなる可能性がなくはない。

 ただし野党の反チェべス勢力にとって、今のマスメディアに期待を持てないだろう。そこでソーシャルメディアに頼ることになるかもしれない。ソーシャルメディアはフラットなメディアであるだけに、チェべス派にとっていつまでも都合のよいメディアであり続けるとは思えない。すでに野党の大統領候補の一人であるLeopoldo Lopez氏は、Facebookページに40万人のファンを、Twitterアカウントに約30万人のフォロワーを抱えている。チェべス大統領が独裁者なら、ソーシャルメディアが落とし穴になるかもしれない。


◇参考
Hugo Cha'vez uses Twitter to run Venezuela from hospital bed(Guardian)
The Netherlands Ranks #1 Worldwide in Penetration for Twitter and Linkedin(comScore)
Indonesia, Brazil and Venezuela Lead Global Surge in Twitter Usage(comScore)
FACEBOOK USERS IN THE WORLD

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