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米国の新聞コラム「10代に直球トーク」に掲載された"ギャップイヤー"議論

 米紙の若者ページで、家庭内の「ギャップイヤー」議論を特集

新聞の投書やコラムは時として、日常の断面を雄弁に捉えると私は思っている。米国はかねてより全国紙より地方紙が主流だ。米国オハイオ州の「トレド・ブレード紙(電子版)」が8月1日に、週刊コラム「10代に直球トーク(Strait Talk For Teens)」内で、"ギャップイヤー"をテーマにした。この人気欄は、同世代の若者が回答して、投稿者に知恵を授ける構成。これは、米国西海岸を中心に地方紙14紙にシンジケート配信される"共通コラム"となっている。回答者のまとめはローレン・フォーセラ女史(NPO代表)が担当している。

 今回の正式タイトルは「ギャップイヤーを取るかで親と衝突(Boy clashes with parents on gap year)」だ。相談で投書した高校生ジェフ君は、秋に大学入学予定だったが、入学前に南米でギャップイヤーを取りたいという。こういうテーマが取り上げられるということは、アメリカの家庭内で、「親元や教員から離れた非日常下での社会体験(ボランティアや正規外留学)・就業体験の課外活動」を示す"ギャップイヤー"が議論されていることを物語る。

 ジェフ君は貯金もあるが、ギャップイヤーの行き先で必要とあらばアルバイトもする。異文化に身を置くことは米国人にとって必要なことのはずというのが彼の主張。両親は総論では賛成だが、彼がこの秋、ストレートに大学に行かないという各論になると反対する。親の懸念はジェフ君が、"糸の切れた凧"状態になり、大学に行かなくなる懸念や、治安の悪いところに旅して犯罪にでも巻き込まれたら、目も当てられないということがネックになっているらしい。


同世代の若者のギャップイヤーに対する考え方は、一様にポジティブ!

 「僕は絶対ギャップイヤーから戻れば、大学に入学する。皆さん、どうしたら親を説得できるでしょうか?」という切実な相談だ。まず、同世代の若者の主な回答は以下のとおり。

20歳・女「今日、多くの名門大学が入学前のギャップイヤーか1年規模の海外留学を推奨している。それは現実の世界を観ることになり、あなただけでなく、未来の雇用主にとってもよいことのはずだ。私自身も行きたかった」

22歳・女「私は一人旅を学部のセメスター(1年2学期制)間にして、10数カ国に行けた。両親に、ギャップイヤーは大学生活のすべてを賭けてやるわけでもなく、その後の成績も心配ないと言ってみるのはどうだろうか」

23歳・男「僕の経験から言うと、3セメスター(1年半)もの間、どっぷり大学の授業につかり、身動きが取れなった。そこで公休(休学)を取って、10ヶ月間、アルゼンチン、チリ、ペルーを周った。その半分は現地のNPOで働いた。この経験は人生観を大きく変えたよ。ホステルに宿泊したときは、他国のバックパッカーたちと会い、終始刺激的だった。NPOや農園で働く機会はあるし、多くの一人旅をする女性も見かけたよ。事件といえば、泥棒にあったくらいで、大学にはちゃんと戻ったし、これから博士課程進学前だが、中国で旅を続けつつ、働くつもりだ」

20歳・女「私の母は、私に行く予定の国をリサーチさせて、計画書提出を義務付けた。同様に、あなたがギャップイヤーでやりたいこと、行きたいところの計画書をご両親に出したらどうか。大学に関しては、あなたが投書に書いたように『大学にはいきたいんだ』と強く言えばよい」

21歳・女「欧州では、1~2年ギャップイヤーを取るのは普通で、大学入学前に興味・関心を作る場を設けている。米国では、入学時期はともかく、4年で押し出されるように卒業して、社会で稼ぐという対比になっている。社会が規定するとおりにしてしまい、燃え尽きないでね(Don't burn out doing what society prescribes.)。入学延期して、ギャップイヤーを取ったらいいじゃない」


メンターの大人も、グローバル社会下、時代見据え"ギャップイヤー"を勧める

 ローレン・フォーセラ女史は今回の議論を以下のように結んでいる。
「ジェフ君  私はギャップイヤーを勧めるわ。私自身もこれまで何度か取得し、得るものは大きかった。取得するかは個人の"決め"次第。もしご両親が大学費用を学生ローンでなく支援してくれるなら、その重みは勘案しないとね。

 楽観的なようだが、1年同期から遅れることや1年齢(よわい)を重ねることは、一人旅にも、またそれをよしとしないご両親にとってもよいことではないかしら。

 ご両親が依然反対なら、とにかくあなたの直感に従うこと。たいていの親は、子供が戻ってくれば、手を差し伸べてくれる。大学生活のことを気にかけてくれる。

 多文化共生がグローバル経済においてますます期待されるにつれ、ギャップイヤーはこれまで以上に重要になってくる。若いうちに親元を離れ、異文化に触れることは、その後のあなたの人生に確実にインパクトを与える。多くの米国の若者は、過度の物質主義とデジタル化に由来する精神的な危機を経験している。多様な文化の中で、家族や地球を結び付ける生き方・働き方は重要です」 

日本でギャップイヤーが家庭内で議論される日はいつ?!

 ギャップイヤーの世界の先進国での捉え方は、こうだ。それは、"ブランク・空白"でなく、社会体験・就業体験の本格的な"課外活動"実施機会。そして、「ゆとり」とは無縁のエリート層を中心とした対学術との"メリハリ"を意味する。学術だけでは、高度なリーダー育成は無理がある。「正規外の活動」も織り交ぜたホリスティックなものが「人材育成」ではないか。ギャップイヤーの持つ"人材育成装置"としてのサイエンスの進展を調べることもなく、ただ"変革なき現状維持"に終始する一部の日本の大学の先生方の時代を越えて、こういう話題がこの国で"日常"となるのは、一体何年先になるんだろうかとふと思った。

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