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なでしこ“勝たない戦略”は問題ない?〜ロンドン五輪マネジメント的雑感②

オリンピックの女子バトミントン競技で、負けを狙った無気力試合をおこなったとして、4チームが失格処分になったそうです。各チームが無気力試合をおこなった理由は、リーグ戦勝ちあがりを決めた後の試合で、決勝トーナメントの組み合わせを有利に運びたいと言うもの。ことの是非については、いろいろ賛否の分かれるところなのかもしれません。

ちょうどその一日前に、日本の女子サッカーチームなでしこジャパンが、決勝トーナメント進出を決めた後の予選リーグ最終戦南アフリカ戦を「引き分け狙いだった(佐々木監督)」との発言があり、ネット上では賛否が闘わされていたところでもありました。なでしこの場合は、前半戦を様子見で戦力ダウンで闘い同組で首位争いをしていたスウェーデンが引き分けたことを聞き、日本が引き分ければスウェーデン1位日本2位でトーナメントに向かうことになり、苦手なフランスとの対戦を回避できると、後半の「シュート禁止」指示を出したとか。もうひとつ、勝った場合次の試合への移動距離500キロという事にも嫌気しての“戦略”だったとも言います。

これらの先々を見通して試合を「勝たない」ようにすすめることを、「戦略」とみるか「スポーツマンシップにもとる行為」と見るか、意見の分かれるところかと思います。以下、私の意見を企業マネジメント的観点から申し述べてみます。

ビジネスで企業のやり方の是非を判断する場合には、そのやり方が「顧客」に対して礼を失してしないか否か、という絶対的な判断基準が存在します。すなわち、どんなに経営上素晴らしい戦略を思いつこうとも、それが「顧客」の期待を裏切ったり「顧客」の信頼を損なうようなものであるのならばそれは「是」とはされず、避けるべき行為であると言うことです。ただ、今回のオリンピックの問題がその基準で考えることが非常に難しいのは、「顧客」が誰であるのか、という議論が別に存在するからでもあります。

すなわち、実際に競技場に試合を見に来た人たちやテレビの衛星中継で観戦した一般のスポーツファンを「顧客」とするなら、上記のバトミントンやなでしこの試合は「顧客」の期待を裏切る行為であり、その意味では「やってはいけない」に属するものであると思われます。他方、「勝たない」という思惑をもって試合に臨んだ国々を応援する立場の人たちを「顧客」とするなら、これらの行為は決して非難されるものではないと言うことになるのです。すなわち、「顧客」を基準に考えた場合、そのどこをメインの「顧客」するかで見解は分かれるわけであり、これらの行為を一概に問題行為と断じることはできないと言えるのです。

しかし、近年のビジネス界においては企業行為の是非を問う際に、「顧客」という基準以外にもうひとつもっと根源的な基準である「コンプライアンス」というものが存在します。この「コンプライアンス」は常々申し上げているように、単に定められた法やルールに従っていればいいというものではないとこが重要なおさえどころでもあり、例え法には違反していなくとも企業モラルの点から考えてどうなのか、という観点で社会的批判を受け市場からの退場を余儀なくされるケースも間々あるのです。

さてこの観点から上記のオリンピック競技を考えてみると、スポーツにおける「コンプライアンス」とはまさしく「スポーツマンシップ」そのものであると思われます。「スポーツマンシップ」を選手宣誓等でよく耳にする「正々堂々、全力で戦うこと」と定義づけるなら、上記のバトミントンやなでしこの「勝たない」行為は問題行為とされてもいたしかたのないところなのではないか、と思うわけです。しかもオリンピックはスポーツの世界最高峰を決める権威ある大会である点、さらになでしこに関して言うなら、前年のサッカーワールドカップを制覇したチャンピンチームの行為としてどうなのか、という観点からもその運営モラルは問われてしかるべきなのかもしれません。

おまけで言うなら、非ニッチ大手企業の企業戦略におけるセオリーは「策を弄すれば得るもの薄し」であります。なぜかと言えば、マーケットリーダーやチャレンジャーが、全力を出さずに策を弄することは、かえって組織運営リズムを崩しなねないことでもあるからです。なでしこジャパンの「引き分け狙い」は懲罰には当たらないと、関係機関がコメントを発表していると言いますが、次のトーナメント初戦ブラジル戦でチームがリズムを崩すことになりはしないかという不安要素も含め、佐々木監督のワールドカップ・チャンピオンチームのマネジメントとしては個人的には疑問が残るところであります。

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