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「在宅勤務なんてPC1台あればできるでしょ」でも、実際は違った──3年間の試行錯誤でたどり着いた「テレワークの工夫」

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地方でNPO法人を運営しながら、サイボウズで副(複)業している竹内義晴が、実践者の目線で語る本シリーズ。今回のテーマは「在宅勤務とテレワーク」。新型コロナウイルス感染症対応で在宅勤務を実施する各企業。だが、実際にやってみるとさまざまな不都合も。この難局、どう乗り切るか。

ご存じの通り、いま、日本は新型コロナウイルス感染症(以下、新型ウイルス)の影響で大変なことになっている。

政府はこれ以上感染者を増やさないために、患者・感染者との接触機会を減らす観点から、企業に対してテレワークによる在宅勤務を強力に呼びかけている。

テレワークといえば、これまで「PC1台さえあれば仕事ができる」といううたい文句をよく耳にしてきた。わたしは2017年の春からテレワークをはじめて約3年になる。会社が東京、自宅が新潟の在宅勤務だが、多くの業務をPC1台で行ってきた。

しかし、普段、会社という「仕事に最適化」された環境で働いている人にとって、PC1台さえあれば、本当に在宅勤務は可能なのか、まったく不都合がないのか……と言ったら、疑問が残る。

また、サイボウズで複業を始める前から、ずいぶん長く在宅で仕事をしてきたが、フリーランスの人が在宅で「自由に」はたらくのとも、ちょっと違うと感じている。今回、初めて在宅勤務を体験した人にとって、きっと多くの不都合があっただろう。

しかも、今回は多くの小中高、特別支援学校が休校となった。子どもが家にいる環境での在宅勤務には、課題を感じた人も多いはず。「この環境で、いつまで仕事をすればいいのだろう……」と、不安を抱えている人もいるのではないか。

そこで、この記事では、今回の国難で急遽、テレワーク・在宅勤務をしなければならなくなったあなたに、少しでも快適に仕事をしていただくことをテーマに、3年間の試行錯誤でたどり着いた、体験に基づくお話をしたいと思う。

テレワーク・在宅勤務の困りごと―業務編

まず、在宅勤務をするにあたり、多くの人が体験しているであろう困りごとについて挙げてみたい。

在宅勤務の困りごとには、大きく「業務のこと」と「プライベートのこと」の2つに分けられる。

社内の情報にアクセスできない問題

多くの企業では情報セキュリティの観点から、情報の社外持ち出しは厳しく制限されていることが多い。日常の業務が紙ベースの場合、会社の情報を持ち出すことができず、在宅での業務に支障がでている人も多いだろう

また、情報がデータ化されていても、社内情報にアクセスできないケースも多いはずだ。そもそも、自宅で使えるPCがない、ネットワーク環境がない人もいるだろう。

紙の書類を受け取れない/提出できない問題

請求書や領収書などをはじめ、社外のやりとりは紙で行われる情報も多い。請求書が手元に届かないと仕事にならない経理の人もいるだろうし、立て替えた領収書が提出できずに、経費の清算に困っている人もいるはずだ。

印鑑による上司の承認も、物理的に不可能だ。

作業環境が悪い問題

オフィスの机や椅子は仕事に最適化されている。そのため、高さの調整ができ、クッション性も優れたものが多い。

だが、自宅の机や椅子は長時間仕事をするには快適とは言えず、肩が凝ったり、腰が痛くなったりすることも少なくない。

また、「ノートPCだと画面が小さくて疲れる」といった問題もあるはずだ。

コミュニケーションが難しい問題

在宅勤務では、日常のコミュニケーションが圧倒的に難しくなる。対面のように気軽に相談できないし、慣れていないとテキストのやり取りも面倒くさい。トラブルや急ぎの業務を文章で伝えなければいけないのは、かなりのストレスだ。

ツールの使いかたが分からない問題

社内ではグループウェアなどの扱いは比較的慣れているものの、社外からリモートアクセスする方法や、テレビ会議システムの使い方など、仕組みはあるが、使いかたが分からないケースも多い。

情報システム部門は、社員からの問い合わせでてんやわんやだろう。

たとえば、今回の新型ウイルス対応では、サイボウズも基本、在宅勤務となった。テレビ会議を行うと「ドキュメントの共有ってどうやるの?」といったやりとりが多く聞かれ、「サイボウズの社内でも、ツールの使い方に慣れていない人、意外と多いんだな」と思った。

その場に行かなければ仕事にならない問題

営業職をはじめ、仕事内容が「対面ありき」の場合、在宅勤務は難しい。また、製造業のように、物理的な「モノ」を扱っている場合も、テレワークのハードルはかなり高い。

テレワーク・在宅勤務の困りごと―プライベート編

次に、プライベートの困りごとだ。ここでは、個人的なことから、家族に関することまで挙げてみた。

気分転換しにくい問題

在宅勤務の場合、仕事とプライベートの切り分けがなく、気分転換が難しい。

今回に限らず、以前から在宅勤務が可能だったサイボウズでは、これまでも「ときどき在宅」といった働き方をする人は少なくなかった。

しかし、今回の新型ウイルス対応で「毎日在宅」となり、「在宅勤務には慣れていると思っていたけれど、毎日だとちょっとしんどい」といった声が聞こえている。経験があっても、慣れるまでは時間がかかるものだ。

運動不足問題

会社に通勤していれば、それなりに歩いたり動いたりする。だが、在宅勤務では動く範囲がトイレに行くぐらいで、運動不足になりやすい。

さみしい問題

家で仕事をするのは、意外と孤独だ。企画書を書いたり、プレゼンのスライドを作ったりするような、一人集中する作業にはいいが、同僚との何気ない会話はできないし、仕事で行き詰ったときに愚痴を聞いてくれる人もいない。

時間管理が難しい問題

在宅勤務の場合、仕事とプライベートの物理的な区切りがない。そのため、時間管理がやりにくい。

子どもの世話が必要問題

普段は保育園や学校に行っている子どもたちも、お父さん、お母さんが自宅にいると何かと絡んでくる。特に今回は学校が一斉休校になり、外出もできないため、子どもたちにも相応のストレスがかかっている。

また、子どもが自宅にいれば食事などの家事もしなければならず、その分の時間も割かれてしまう。

パートナーからのさまざまな依頼問題

自宅で仕事をしていると、パートナーから「買い物付き合ってくれない?」といった頼まれごとや、「今日って、時間ある? 病院まで送って欲しいんだけど」のようにさまざまな依頼を受けることがある。

もちろん、パートナーも悪気があるわけではないことは理解しつつも、「いま、仕事中なんだけどな……」と思うことも少なくない。

テレワーク・在宅勤務で試行錯誤を重ねた3年間

このように見てみると、在宅勤務は、テレワークの売り文句である「PC1台さえあれば仕事ができる」というわけではないことがお分かりいただけるだろう。

これらの問題を解決するために、「在宅勤務を快適にする〇つの方法」的なTipsも喜ばれるのかもしれない。だが、実際には「こうすればいいですよ」というほど簡単なものでもないのだろうと、わたしは思っている。

なぜなら、私自身、試行錯誤を重ねた3年間だったからだ。

だからといって、「在宅勤務は難しいので、やめましょう」とは思わない。むしろ、テレワークや在宅勤務の環境が整うと、長い目で見ると、場所の制約を受けない柔軟な働き方ができるようになる。

また、企業にとっても、テレワークを推進すると今回のような非常事態があったとき、事業が止まるリスクを減らすことができる

実際、いまでこそテレワークによる在宅勤務が比較的スムーズにできるサイボウズも、本格的な導入のきっかけになったのは、2011年3月に発生した東日本大震災だった。それ以来、さまざまな自然災害が起こっても、事業を継続できるようになった。

なお、今回の事態をふまえ、これまでサイボウズが取り組んできたテレワークに関する情報を以下のサイトで公開している。

サイボウズが取り組んできたテレワークに関する経緯や背景は、『サイボウズの「テレワーク」に関する情報を公開します』にてお知らせしています。

サイボウズの「テレワーク」に関する情報を公開します

ここからは、テレワークを始めるにあたり「今回の機会を生かすこと」や「少しの工夫で改善できること」を中心に紹介してみたい。

テレワーク・在宅勤務の工夫―業務編

まずは、業務におけるテレワーク・在宅勤務の工夫についてみていこう。

社内の情報にアクセスできない問題への対応

テレワークによる在宅勤務をオフィスと変わりなく行うためには、PC環境や社内情報へのアクセスは必須となる。

自宅のPCで、会社のPCが操作できるVDI(デスクトップ仮想化)を導入したり、ネットワークに接続できる社用ノートPCを持ち帰れるようにしたりする環境を整える必要がある。

サイボウズでは、多くの社員が普段からノートPCを利用している。セキュリティ教育を行ったうえで、社外からでもクラウド上のグループウェアに接続できるようになっている。

日常の業務も同じ環境で行っているため、今回のような非常事態でも、普段と変わりなく業務が継続できる

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