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【読書感想】EU離脱

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EU離脱 (ちくま新書)
作者:鶴岡 路人
発売日: 2020/02/06
メディア: 新書

Kindle版もあります。


EU離脱 ──イギリスとヨーロッパの地殻変動 (ちくま新書) 作者:鶴岡路人
発売日: 2020/02/21
メディア: Kindle版

内容紹介
2020年1月末ついにイギリスが正式にEU離脱へ……
これまでの経緯とこれからの課題がこの一冊でわかる!

2016年6月23日、イギリスにおけるEU残留の是非を問う国民投票での離脱派の勝利は、世界中に大きな衝撃をもたらしました。その後、保守党のメイ首相の下で行われたEUとの離脱交渉は混迷を極め、ジョンソン首相に交代。数度の延期の末、2020年1月末、ついに正式な離脱となりました。「紳士の国」「経済合理性で動く」といったイメージとは真逆のイギリスの迷走ぶり。なぜこんなことになったのか――。

本書では、イギリスとEUの両面からブレグジットの全体像をわかりやすく解説しています。イギリスが失うものとはなにか? 一枚岩になれないEUはどうなるのか? これまでの経緯とこれからの課題が見通せる、最速のブレグジット・ガイド。なお問題山積のヨーロッパの現在を最も正確に論じる一冊です。


 2016年6月23日のイギリスの国民投票でのEU離脱決定と、その後のトランプ大統領の誕生は、「世界がポピュリズムで変わっていく」と、僕を不安にしたのです。
 あれから4年近くが経ったのですが、「世界の終わり」のような事態には至っておらず、イギリスは紆余曲折がありつつも、ようやく2020年1月末にEUを離脱しました。



ブレグジット推進したファラージ氏「最後です」  欧州議会で別れの演説


 なぜこんなに時間がかかってしまったのか、EUがどんな存在であるかよくわからないまま離脱に賛成した人が多かったのではないか、国民投票をやりなおして、取りやめることはできないのか?

 僕はそんな疑問をずっと持っていたのですが、EU離脱の経過とその意義について、わかりやすく説明してくれたのがこの新書だったのです。

 本書は、2016年6月の国民投票自体の検証を目的としてはいないが、ここまで述べてきたことに関連して、触れておきたい数字がある。それは、国民投票における年齢層別の投票結果である。公式の統計ではないが、アシュクロフト卿の調査(Lord Ashcroft Polls)によれば、18歳から24歳までの年齢層では、実に73%が残留だったのに対し、65歳以上では60%が離脱に投票した。若年層ほど残留の比率が高い。25歳から34歳でも62%が残留だったのである。

 これが意味することは、イギリスにおいても、若年層の間ではEUの存在が当たり前になっており、自らの将来を考えるうえでもEUという大きく広がった空間が意識されていた事実であろう。この点に関して、他のEU諸国の若年層と大きな相違はないのだといえる。

 イギリスがEUに加盟して40年以上が経つなかで、それ以前の時代を知らない年齢層──つまり生まれたときからEU加盟国であった世代──がここまで「ヨーロッパ化」していたことは、特筆に値する。
「イギリスはヨーロッパではない」というのは、45歳以上に限定の議論なのだろうか。もちろん、そこまで単純な議論は慎むべきだが、離脱票が残留票を上回り始めるのが、45歳から54歳の年齢層であることは示唆的である。

 「高齢層が若年層の未来を奪った」という評価は、残酷なまでに現実なのである。長く労働党の下院議員を務め、現在は上院議員のジャイルズ・ラディーチェは、国民投票結果を受けて孫の一人から、「じいちゃん、あんたの世代が僕の人生を台無しにしたんだよ」と涙目で言われたことが忘れ得ないと述べている。

 こういうのを読むと、本当に離脱でよかったのか、とか、これからの世の中を支えていくであろう若年層と高齢者が、同じ「一票」であることは正しいのか、とか、いろいろ考えてしまいます。
 EU離脱に関しては、イギリスの経済的にはデメリットだらけですし、北アイルランドの国境問題など、これまでEUの一員であったことで覆い隠されてきた問題を再燃させることにもなったのです。

 EUにとっても、イギリスという大国をメンバーから失うことは、大きな痛手であり、はじめての「離脱」を経験することになりました。
 そもそも、イギリスは「大国」であるがゆえに、EUの単一通貨ユーロを採用していない、出入国管理を撤廃したシェンゲン協定に参加していない、などの「特別扱い」を受けつつ、EUの単一市場の恩恵を大きく受けている国でもあったのです。

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