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介護や子育ては、自己責任ではなく社会全体の問題です - 「賢人論。」第111回(後編)中島岳志氏

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今、日本では急速に少子高齢化が進んでいる。2019年に生まれた子どもの数は過去最低の86万4,000人、前年と比べても約5万4,000人減少した。しかし、少子化対策は依然として進んでいない。中島氏は、「子育てや介護の議論が、国が面倒をみるべきか個人が面倒をみるべきかという極端な話になってしまっている」と指摘する。

取材・文/木村光一 撮影/公家勇人

小泉環境大臣が育休を取るだけで大騒ぎになっている

みんなの介護 「少子化問題」について、中島さんはどのような考えをお持ちですか?

中島 それについては、まず、少子化を悪だとする見方に異議を唱えたいと思います。

フランスの歴史人口学者エマニエル・トッドによると、出生率低下の原因は女性の識字率の向上にあります。つまり少子化も、近代以降、教育の機会を得た女性が社会進出を果たし、さまざまな生き方を選択できるようになった結果であって、むしろそういう世の中になることを私たちは目指してきたはずなんです。

結婚しないことや子どもを産まないことを悪のように決めつけるのはおかしい。そこを議論の出発点にしない限り、有効な解決策は見つからないと私は思います。

みんなの介護 第1に女性の自主性を尊重すべきとうことですね。

中島 そうです。とはいえ、少子化問題をどうにか軟着陸させたいのであれば、女性ばかりにしわ寄せがいかないように皆で努力する必要があります。

実際、今、身の周りを見渡しても安心して子育てができるような状況とは程遠い。小泉環境大臣が2週間の休みを取るだけで大騒ぎになっている〝育休〟の問題をみてもわかるように、子育ては女性がするものという意識に変化はありませんし、保育園の〝待機児童問題〟も未解決のままですから。

それ以前に、経済的に不安定であることを理由に子どもを持つのを諦めている人がたくさんいることもわかっています。

とにもかくにも両親が共働きをしながら子どもを育てられる環境を整えることが急務です。そしてこれらは、いずれも国家が政策として着手しなければならない再配分の問題であり、自己責任の問題ではありません。

政治の役割はバランスを取ることにある

みんなの介護 かつては子どもの面倒を祖父母や隣近所が協力してみてくれていた時代がありました。しかし、今は核家族化が進み、都市化などで地域コミュニティも消えつつあります。

たしかに、そういう孤立無援ともいえる状況の中で子どもを産んで育てるのは困難です。といって、どこまで行政に求めていいものなのかわかりません…。

中島 この国では、子育てや親の介護をはじめとする社会福祉の問題について議論しようとすると、すぐに国が面倒をみるべきか個人が面倒をみるべきかというような極端な話になってしまいます。

本来、極論と極論をぶつけ合って白か黒か決めることが政治ではありません。

極論と極論の間にある無数の選択肢のどこを取るべきかを決めてバランスを取る。それが政治の役割であり、議論もそうあらねばならないんです。

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