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「原発事故で夫の浮気癖が激しくなった」ある原発事務員の女性が語る3.11からの9年間 離婚をしたことは良かったが…… - 渋井 哲也

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あの日から9年 福島で「原子力 明るい未来の エネルギー」標語を作った“少年”はいま から続く

 東日本大震災にともなう東京電力・福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の事故から9年。さまざまな時の経過が流れたことだろう。当時、福島第二原発(福島県富岡町、楢葉町)で事務員として働いていた真美さん(40代、仮名)も、大きく運命が変わった一人だ。10年目の前に、避難先のいわき市内で話を聞いた。


一部地域を除き、2017年4月1日には富岡町の避難指示が解除され、住民の帰還も認められた(2019年4月撮影)

「現場の作業はしないので、被曝放射線量は低いです」

 筆者は震災後、原発で働いていた女性たちの取材をした。作業員の男性の話は当時、数多く報道されていた。しかし、ある取材で、原発で働いていた女性に出会った。原発で働くとなると建屋内での作業者をイメージするが、女性はどんな仕事をしているのか。そんな関心から始まり、ツテを頼って、何人かと会うことができたうちの一人が真美さんだった。

 真美さんは震災当時、富岡町在住。職場は3次請負の事務作業で、8年間、仕事をしていた。手取りは15万円程度。月給にすると、同じ地域のパート労働者よりも、数万円ほど高かった。やがて同じ原発で作業員として働く男性と結婚する。子どもが一人いた。

「現場の作業はしないので、被曝放射線量は低いです。会社としては、作業員の被曝線量を管理しています。検診をしたり、ホールボディカウンターの数値を3か月に1回チェックしていました。

(年間の被曝線量の計算上)3月31日を過ぎると、ゼロに戻ります。決まった線量を超えると、作業員は働けなくなります。その場合は、作業員が足りなくなりますので、新たに登録をする人が必要になります」

以前は犯罪者が紛れ込んでいたことも

 どんな人でも作業員になれたのだろうか。

「作業員になるには入所試験がありましたが、落ちる人はあまりいませんでした。知っているなかでは過去に一人だけ落ちましたが、2日目の試験で追加合格していました。あとは、健康診断と経歴を見ますが、私が働いていた3次請けの会社では、所長が確認します。そして2次請けの会社がOKを出せば、基本的には大丈夫です。

 ただ、いろんな人がいます。以前は犯罪者が紛れ込んでいたこともあります。見極められません。うちの所長は、更生していればいいという考えでした。4次請けになると、派遣や臨時の作業員が多くなっていました。実際に、どんな人なのかはわからないことが多いんです。というのも、事務員と作業員はなるべく会話をしないことになっていたからです」

 真美さんが働いていた会社の事務員は女性が複数人いた。働き方もさまざまで、例えば、午前中は第一原発、午後には第二原発で働く人もいたが、真美さん自身は一日中、第二原発の事務所で作業をした。

「私たちは見殺しだろうと思っていたんです」

 2011年3月11日は、点検作業が終わったために、4次請け会社の作業員4人の雇用を解除していた。この手続きは午前中で終わった。作業員は建屋に入ると、線量計が手渡される。その数値を合計すると、蓄積線量がわかる。それをA4の用紙に記入した線量通知書を作成する。通知書を作業員たちに手渡していたところ、地震が起きた。14時46分のことだ。

「這いつくばるようにして机の下に逃げました。近くの男性が『大丈夫だから……』と言っていました。女性の事務員に『とりあえず、廊下へ逃げよう』と言われて、廊下に出ようとしました。でも、冷蔵庫が移動してドアの前にあって、観音開きになっていました。

 その後もちょっとだけ揺れて、また揺れる。その繰り返しでした。脱出不可能だ、と思っていました。“安全神話”は持っていませんでした。もともと、原発で何かあったら、私たちは見殺しだろうと思っていたんです」

 その後、なんとかビルから脱出ができ、敷地内のグラウンドに集められた。すると、携帯電話で「津波10メートル」との情報を得ていた人がおり、女性だけでも先に帰宅させようとなった。真美さんは同僚の車に同乗し、帰宅しようとするが、国道6号は双葉警察署付近まで数キロにわたって混雑していた。

 帰宅すると停電だった。夫は第一原発の作業員だったが、夜勤だったために自宅にいた。一緒に子どもを迎えに学校へ向かった。しばらく、親子3人で車の中にいたが、職場が心配だった夫とともに第一原発に行こうとした。すると、途中で警察官に止められる。電話をするが、ほかの作業員は電話に出ない。どうすることもできず、浪江町の実家へ避難することにした。

震災から8年目、夫の浮気が発覚した

 その後、葛尾村、会津地方、埼玉県、東京都、群馬県、千葉県を転々とした。4月になって、会社から割り当てられたいわき市のアパートに住む。子どもはいわき市内の学校に転校した。富岡町は、同じ福島県内の三春町内で小中学校を再開したが、住まいからは遠いので選択肢にはなかった。それからずっといわき市内に住んでいる。

 これだけ聞けば、家族3人で避難生活をし、一緒に協力しあって、困難を乗り越えてきたように見えなくもない。しかし、そんな簡単な話ではない。実は、震災から8年目を迎えようとしたとき、夫の浮気が発覚した。相手は、同じ会社に勤めている20代の女性だった。子どもが夫の古い携帯をいじっていたときに、LINEの履歴を見つけてしまったのだ。

 しかも遊べたのは、人に出会う機会が増えたからだけではない。原発事故の避難者には、精神的賠償として一人当たり毎月10万円が東京電力から支払われた。その賠償金はすべて夫の口座に入った。真美さんは総額を知らない。

「当初は、東電のお金は、子どもの将来のために貯めておこうと思ったんです。しかし、実際には、その賠償金を、浮気での遊び金に回したのではないか、好き勝手やっていたんじゃないかと疑っています。いつまで口座に振り込まれていたんでしょうかね」

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