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絶滅寸前のウナギを爆食していたのは高齢者だけ、実態を踏まえずに「国民の関心事」とするマスコミ - 松岡久蔵

今回は食をめぐるナショナリズムが50代以上のオッサン、高齢者によって作られたものだということについて書こうと思う。

まず、前回の記事でここ10年程度の牛肉の国内生産量は横ばいなのに対し、輸入量は約2割増となっており、今や国内消費の約6割を占めるようになっている現状について書いた。牛丼や焼き肉の外食チェーンの広がりで、日本人はここ10年ほどで確実に肉食傾向が強まってはいるが、和牛ではなく安価な輸入牛を消費してきたということだ。

【関連記事】「韓国や中国に日本の宝が盗まれた」イチゴや和牛でナショナリズムを煽るメディア

写真AC

さらに、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、年代別の牛肉1日1人当たりの消費量(平均値)で2011年と2017年を比較すると、60代が約3割増となったのを除き20~50代までは軒並み低下している。20代に至っては約2割、消費量が低下した。もともと肉食になじみのなかった高齢者層が安価な牛肉を食べるようになったことや、若者を中心とする、食嗜好の多様化などがこの結果につながったと推察される。

高級な和牛にしても、高価なことに加え、主な食べ方であるすき焼きは準備に時間がかかるため、単身世代が多い若者には身近な食費とはいえない。主な消費層は基本的に中高年層だろう。これらのことを考えると、日本の牛肉消費は「高価な和牛は資金力に余裕のある中高年が家族と一緒に食べ、高齢者も安価な輸入肉を中心に食べて消費を底上げしてきた」といえる。

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ウナギもサンマも年金生活で余裕のある高齢者が爆食

もはや絶滅が危惧されているウナギについても、総務省の2018年の家計調査によると、年齢層別(単身世帯)のウナギのかば焼きへの年間支出額は、34歳以下がなんとわずか18円、35~59歳が276円。それに対して60歳以上は1351円となっており、若者がまったくウナギにありついていない反面、年金や貯蓄で暮らしに余裕のある高齢者が圧倒的にウナギを消費していることがわかる。

2018年総務省「家計調査」より、年齢層別(単身世帯)のウナギのかば焼きへの年間支出額

中国や台湾に食い散らかされているとセンセーショナルに報じられたサンマも同じで、一世帯当たりのサンマ支出額は1983年の2065円をピークに低減し、2017年では880円と最低水準となっているのだ。日本人の大多数が食べているのは冷凍モノのサンマで、時間が経っているから安いという面があるのも見逃せない。

どちらの魚も「日本の風物詩」「庶民の魚」とさも日本人に身近なイメージが作られているが、実際に食べているかといえばそうでもない。つまり、和牛をはじめ、日本の大メディアが「海外から盗まれる」と騒いでいる食品から、実は日本人はすでに離れているのである。

偏向報道の原因は大手メディアの「オッサン化」

なぜこのような中高年の志向や主義に偏った報道がなされるのだろうか。理由は簡単で、新聞やテレビなど大手メディアの人間自体が高齢化しており、「オッサンによるオッサンのためのオッサンのメディア」になっているからだ。

詳しく説明しよう。確かに現場で取材する記者は30代くらいまでの若手が多い。記者は基本的に体力勝負の仕事なので、若くないとやってられないからだ。ただ、彼らが取材した原稿をチェックしたり、企画を考えたりするのは、デスクと呼ばれる管理職になる。彼らは基本的に40代後半から50代で、関心はもちろん同世代と共通のものになりがちだ。サンマにしてもウナギにしても和牛にしても、実態を踏まえずに「国民の関心事」とするのもやむをえない。

これを端的に表しているのが捕鯨問題についての報道だ。日本政府は2018年末に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、大メディアが「国際連盟脱退以来の大問題」と報じた。

Pixabay

しかし、考えてみれば、捕鯨文化のある地方は別として、鯨肉が食卓に並ぶのは少数派。戦後の食糧難の時代にタンパク源として重宝されたことはあるにしても、捕鯨をめぐる欧米諸国や環境団体とのやり取りなどは記憶としてもあいまいだろう。50代より上の世代はまだ捕鯨問題が大きく報じられていた1970〜80年代を知っているから、大きく見えるだけだ。

実際、新聞を熱心に読んでいるインテリ層は日本政府のIWC脱退について「誤った決断だ」とする傾向が強かったが、一般人は素朴な感覚で「日本の食文化を一方的に抑圧する組織なんて、さっさと抜けて正解」と捉える傾向が強かった。

外務省の世論調査でも、約7割が脱退を評価している。外国政府や外国メディアの報じ方も批判的ではあったが、事前に国内メディアが騒いだわりには低調だったといえるレベルだった。

自分たちの記憶に基づいて、「あの時普通に食べられていたものが食べられなくなる」といったあいまいなイメージが報道で増幅され、若手が中心のネットメディアより影響力が依然強いがために拡散する。それがさも「国民の一大事」かのように。

捕鯨問題に熱心に取り組んでいるのは日本だけ

今日び、捕鯨問題に関して熱心に取り組んでいるのは日本だけだ。関係者によると、IWC脱退を日本政府が決断するきっかけとなったブラジルの総会でも、日本政府のスタッフが他国の倍以上であること自体がひんしゅくを買っていたという。

他国からすれば、なぜこんな時代遅れのテーマにそれほどスタッフを割くのか意味不明だろう。環境団体も捕鯨問題が旬ではなくなったため、批判するだけ批判しているだけで、かつてのような激しさはない。今や、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが脚光を浴びているように、気候変動に世界の関心は移っているのだから当然だ。

筆者は捕鯨文化は今回の脱退をきっかけに地方の食文化として定着することは望ましいと思う。鯨肉は新鮮でなければ血なまぐさくなり、かえって食味を落とし、鯨肉の価値を落とすと考えるからだ。そもそも、南極海の裏側まで出かけていくこと自体、非常に限られた時代の話であって、それがダメになったからといって政治やメディアが騒ぐ現代的な意味はほとんどないだろう。喜ぶのは役所や専門家も含めた「クジラ屋さん」だけだ。

ウナギを本当に一年中食べたいのか考え直すべき

クジラはさておき、サンマやウナギの食品ロスが問題となっていることにこそ着目すべきだろう。季節が来ると、生鮮のサンマやウナギがスーパーに並ぶが、売れなければ捨てられる。これこそ批判の対象とすべきだ。

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実は、サンマを懐かしむオッサン世代が若者だった頃の日本は、米ソ冷戦時代だったことや、中国などアジア諸国が経済的に貧しかったことを背景にあらゆる水産資源を食べつくす勢いの「水産王国」だった。マグロも同じだが、日本人がそれらを無制限に漁獲し安く供給されたのは、カネと食欲にモノを言わせていた面が多い。

ウナギにしても、商社が中国で養殖して牛丼チェーンやスーパーへの販売ルートが確立したことで絶滅寸前にまで追い込んだ経緯がある。いつまでも「暴力団の資金源になっている」と常とう句を繰り返す前に、なぜ裏社会のシノギになるほどの市場ができてしまったのかについて自省するのが先だ。ウナギを本当に一年中食べたいのか考え直すべきだろう。

私は基本的に新聞やテレビなどの記者クラブメディアは滅んだ方がいいと思う。理由はこの記事で書いた通り、課題設定や論調がオッサン向けのものに偏りがちな半面、既得権益が強すぎてネットメディアなどの参入ができず多様性を欠くからだ。記者クラブのオッサン記者が報じたいものではなく、様々な層の読者が読みたいものが提供されることを、一人の読者として切に願っている。

著者プロフィール

松岡久蔵
ジャーナリスト。マスコミの経営問題や雇用、防衛、農林水産業など幅広い分野をカバー。「現代ビジネス」「東洋経済オンライン」「ビジネスジャーナル」などにも寄稿。お仕事のご依頼はTwitterのDMまで。最新ニュースをお届けするLINE@はhttps://lin.ee/rgFmGXo。アニメニュースチャンネル「ぶっ飛び!松Qチャンネル」も配信してます!https://www.youtube.com/channel/UCuV1WijlpGR1V3wh5MRtIXA/featured

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