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- 2012年08月02日 08:04
楽天kobo「大炎上」、三木谷社長「拙速だったという反省はない」と吠えた朝
今日は素足にスーツの奇妙なサラリーマンの話などのんびり開陳する予定だったのだが、楽天の三木谷社長がkobo問題に関し日経で吠えていらっしゃったので、急遽割り込みにて。
koboのスタート失敗については、おとといエントリーで3つの失敗の複合と書いた。
1 ローカライズ失敗による、「設定すらできない謎端末」問題
2 事前の宣伝「日本語書籍3万点」>蓋を開けたら「2万点で、半数以上が青空文庫」といった類の「誇大広告」問題
3 こうした問題を指摘した大量の楽天市場「koboユーザーレビュー」を全て削除するという「驚きの荒技」問題
社長インタビューの詳細は日経の記事で見てもらうとして、上記問題について三木谷社長は、なんと語ったのか。
まず「1 ソフト面の問題」だが、「おおむね48時間以内に初期トラブルは収束しています」とのことだ。まだ本棚とかショップの部分で問題は山積だが、「重要なことは、いかに早く解決するかだと思っています」とのことなので、ユーザーとしては早期解決を願うしかないのかなと。
「2 誇大広告」は、インタビューではほぼスルー。悪いと思ってないんだろう。
「毎日、1000点くらい増えていて、7月末までには合計3万点弱、8月末で6万点までいく予定です。その時点で、たぶん国内最大になる。その後は『年内に約20万点』というのがひとつの目標になってきますね」
約束違反については一言も触れず、上記のように「輝かしい今後」を強調しておられる。「7月中3万冊」の約束がなぜか「3万点弱」と微修正されてるのがカワイイかも。
しかしすでに「7月中3万冊」が実現したのか検証しておられる方がいる。それによると「8/1 0:00時点で、22176冊、うち青空文庫など無料コンテンツを除くと9611点」だそうだ。仮に青空文庫まで入れたとしても「2万2000冊」を「3万冊」ないし「3万冊弱」と言い張るのは、常識的には厳しいのでは。
「3 ユーザーレビュー全削除」については、やはりというか、三木谷社長の指示で行ったとのことだ。まあそうだろうなあ……。現場の方、お気の毒に。
この件に関し社長の言をまとめると、「コボのサイトはメーカーサイト。だからスクリーニングする」とのことだ。
これについてはすごく疑問がある。
まず単純に「スクリーニング=全削除」ではない。差別用語を使っていたり事実無根の誹謗中傷が入ったレビューに「限って削除する」のを、スクリーニングと言うのでは。「悪評だから削除」「とにかく全部削除」は、明らかにおかしい。
次に、コボの販売サイトはメーカーサイト「ではない」と私は思う。
koboのメーカーは、あくまでカナダの「Kobo」だ(いくら楽天子会社とはいえ)。楽天のkobo紹介サイトから「kobo touchを購入する」を選ぶと、ショップである「楽天24」に飛ばされ、そこで購入することになる。レビューがあるべきはここ。つまりあくまで「楽天24」という店舗の販売サイトだ。
「販売サイトのレビューを全削除」は、どう考えてもおかしいだろう。
それを「メーカーサイトだから全削除」ですらなく「メーカーサイトだからスクリーニング」とは、ずいぶん綺麗な言葉にロンダリングしたものだ。宗教テロ・オウム上祐の論旨すり替えを思い出したよ私は。
それにこれだと、「良いこと、悪いこと含め、あるべき姿を参考にしていただくのがレビューですが、不完全な状態からスタートしたkobo Touchのレビューの場合、かえって誤解を招くのではないかと判断しました。」としたkobo担当執行役員の説明と矛盾するけど。役員は「メーカーだから削除した」とは一言も言ってないわけで。
それにしても日経新聞は「不具合が出たからインタビューを申し込んだ」わけじゃん。その場でこんだけ「進軍ラッパ吹きまくってる」ってのは、むしろ感心した。
普通はそれ、「購入者に向けて謝る機会を設けていただいた」と理解すべき場面だから。
そのインタビューで上記のような不思議な論理を振り回し、「僕としては上々の滑り出し」「コンピューターリテラシーが低い方にとって初期設定は、多少難しいところがある」「拙速だったという反省は、ないです」とか、よく言ったなあと。社内に反対する人間がいないから、社会でも無意識に「俺様主義」になっちゃうんだろうか。
ネットのヘビーユーザーの一部からやたらと嫌われている経営者は、ワタミの渡邉美樹社長とか三木谷社長だろう。彼らやファーストリテイリングの柳井社長は、積極的に発言するため社会的に目立つ。そのためやっかみ含めていろいろ言われる面がある。
たとえば連結売上9兆円以上という日立製作所の社長の名前なんか、普通の人は知らないでしょ。私は渡邉さんとかこれらの方々、むしろ好きだけどね。
実際、「楽天の携帯メルマガを解除できない不具合」について書いた折、「三木谷が悪い」的反響を多くもらって面食らった。私は特段三木谷社長に悪感情とか持っていなかったし、そのような細かな案件など社長に原因があるとは思えなかったからだ。
それで興味を持ったので、友人知人の新聞記者連中と飲んだ折、こうしたベンチャー経営者の人柄や功績に関していろいろ聞いてみたくらい。
それにしても不思議なのは楽天の広報だ。なにやってるのよと。
企業に社会的問題が生じたとき、社長含めて経営陣の発言をコントロールするのは、クライシスマネジメントの基本だろう。「どのタイミングで」発言させるのか。「どういう態度で」発言させるのか。もちろん嘘をつかせてはいけない。
そりゃもちろん、危機に際し経営者が生の肉声で思いを発言するのは、極めて重要だ。しかし執行役員と発言が矛盾した上に「反省はないです」「上々の滑り出し」とか語らせちゃったら、広報の敗北だろ。「社長とにかく余計なことは言わずに謝っといてください」くらいコントロールできなかったのか?
koboのスタート失敗については、おとといエントリーで3つの失敗の複合と書いた。
1 ローカライズ失敗による、「設定すらできない謎端末」問題
2 事前の宣伝「日本語書籍3万点」>蓋を開けたら「2万点で、半数以上が青空文庫」といった類の「誇大広告」問題
3 こうした問題を指摘した大量の楽天市場「koboユーザーレビュー」を全て削除するという「驚きの荒技」問題
社長インタビューの詳細は日経の記事で見てもらうとして、上記問題について三木谷社長は、なんと語ったのか。
まず「1 ソフト面の問題」だが、「おおむね48時間以内に初期トラブルは収束しています」とのことだ。まだ本棚とかショップの部分で問題は山積だが、「重要なことは、いかに早く解決するかだと思っています」とのことなので、ユーザーとしては早期解決を願うしかないのかなと。
「2 誇大広告」は、インタビューではほぼスルー。悪いと思ってないんだろう。
「毎日、1000点くらい増えていて、7月末までには合計3万点弱、8月末で6万点までいく予定です。その時点で、たぶん国内最大になる。その後は『年内に約20万点』というのがひとつの目標になってきますね」
約束違反については一言も触れず、上記のように「輝かしい今後」を強調しておられる。「7月中3万冊」の約束がなぜか「3万点弱」と微修正されてるのがカワイイかも。
しかしすでに「7月中3万冊」が実現したのか検証しておられる方がいる。それによると「8/1 0:00時点で、22176冊、うち青空文庫など無料コンテンツを除くと9611点」だそうだ。仮に青空文庫まで入れたとしても「2万2000冊」を「3万冊」ないし「3万冊弱」と言い張るのは、常識的には厳しいのでは。
「3 ユーザーレビュー全削除」については、やはりというか、三木谷社長の指示で行ったとのことだ。まあそうだろうなあ……。現場の方、お気の毒に。
この件に関し社長の言をまとめると、「コボのサイトはメーカーサイト。だからスクリーニングする」とのことだ。
これについてはすごく疑問がある。
まず単純に「スクリーニング=全削除」ではない。差別用語を使っていたり事実無根の誹謗中傷が入ったレビューに「限って削除する」のを、スクリーニングと言うのでは。「悪評だから削除」「とにかく全部削除」は、明らかにおかしい。
次に、コボの販売サイトはメーカーサイト「ではない」と私は思う。
koboのメーカーは、あくまでカナダの「Kobo」だ(いくら楽天子会社とはいえ)。楽天のkobo紹介サイトから「kobo touchを購入する」を選ぶと、ショップである「楽天24」に飛ばされ、そこで購入することになる。レビューがあるべきはここ。つまりあくまで「楽天24」という店舗の販売サイトだ。
「販売サイトのレビューを全削除」は、どう考えてもおかしいだろう。
それを「メーカーサイトだから全削除」ですらなく「メーカーサイトだからスクリーニング」とは、ずいぶん綺麗な言葉にロンダリングしたものだ。宗教テロ・オウム上祐の論旨すり替えを思い出したよ私は。
それにこれだと、「良いこと、悪いこと含め、あるべき姿を参考にしていただくのがレビューですが、不完全な状態からスタートしたkobo Touchのレビューの場合、かえって誤解を招くのではないかと判断しました。」としたkobo担当執行役員の説明と矛盾するけど。役員は「メーカーだから削除した」とは一言も言ってないわけで。
それにしても日経新聞は「不具合が出たからインタビューを申し込んだ」わけじゃん。その場でこんだけ「進軍ラッパ吹きまくってる」ってのは、むしろ感心した。
普通はそれ、「購入者に向けて謝る機会を設けていただいた」と理解すべき場面だから。
そのインタビューで上記のような不思議な論理を振り回し、「僕としては上々の滑り出し」「コンピューターリテラシーが低い方にとって初期設定は、多少難しいところがある」「拙速だったという反省は、ないです」とか、よく言ったなあと。社内に反対する人間がいないから、社会でも無意識に「俺様主義」になっちゃうんだろうか。
ネットのヘビーユーザーの一部からやたらと嫌われている経営者は、ワタミの渡邉美樹社長とか三木谷社長だろう。彼らやファーストリテイリングの柳井社長は、積極的に発言するため社会的に目立つ。そのためやっかみ含めていろいろ言われる面がある。
たとえば連結売上9兆円以上という日立製作所の社長の名前なんか、普通の人は知らないでしょ。私は渡邉さんとかこれらの方々、むしろ好きだけどね。
実際、「楽天の携帯メルマガを解除できない不具合」について書いた折、「三木谷が悪い」的反響を多くもらって面食らった。私は特段三木谷社長に悪感情とか持っていなかったし、そのような細かな案件など社長に原因があるとは思えなかったからだ。
それで興味を持ったので、友人知人の新聞記者連中と飲んだ折、こうしたベンチャー経営者の人柄や功績に関していろいろ聞いてみたくらい。
それにしても不思議なのは楽天の広報だ。なにやってるのよと。
企業に社会的問題が生じたとき、社長含めて経営陣の発言をコントロールするのは、クライシスマネジメントの基本だろう。「どのタイミングで」発言させるのか。「どういう態度で」発言させるのか。もちろん嘘をつかせてはいけない。
そりゃもちろん、危機に際し経営者が生の肉声で思いを発言するのは、極めて重要だ。しかし執行役員と発言が矛盾した上に「反省はないです」「上々の滑り出し」とか語らせちゃったら、広報の敗北だろ。「社長とにかく余計なことは言わずに謝っといてください」くらいコントロールできなかったのか?
- tokyo editor
- 出版社の編集者。出版業界の実態について執筆している。