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前提条件が変わってしまった原油相場

原油相場は大幅続落し、2016年2月以来の$30/bbl割れを記録しました。先週 OPEC+ の減産協議が不成立となった後、サウジアラビアも増産と価格競争に転じるとの意向を示し、需給バランスに対する前提条件の変化に市場はパニックとなっています。

3月9日の NYMEX WTI 原油先物の終値は前日比$10.15安の$31.13/bblで、引け後の時間外取引は$30/bbl台前半です。

週明けの時間外取引はいきなり前週末より$8余り下がった$32/bbl台で始まり、追証に耐えられない損切りの投げ売りが安値を$27/bbl台に運びました。そこから$35/bbl近くまで戻った後は再び$30/bbl近辺に下げるなど荒っぽい値動きが続き、出来高は400万枚近い水準に膨れ上がっています。

サウジはこれまでほぼ1国で OPEC+ の協調減産を支えてきましたが、他の産油国の非協力的な姿勢に行き詰まりを感じ、米国のシェール業者など高コスト供給源を壊滅させる方針に転じたものと思われます。

米国のシェール産地では今年に入ってレイオフが拡大しているとされ、更にコロナウイルス感染拡大による景気減速や OPEC との価格競争で破滅的な状況に陥ることが予想されます。収益の低下と資金繰りの悪化に耐えながら事業を継続してきたシェール業者の多くは立ち直れなくなり、金融機関も数年単位で石油関連事業への融資に慎重となる可能性が高いでしょう。

$40/bbl台でも収益を維持できると高を括っていたロシアも、この状況が続くと採算割れに陥ります。

とはいえ、協調減産の終了と国際的な需要減退の本格化で目先数か月の世界の石油需給バランスが大きく供給過剰に傾くことは不可避で、現在の市場の反応も妥当なものかもしれません。

国際エネルギー機関 (IEA) の3月月報によると、2020年の世界の石油需要見通しは1億10万バレルで、前月の予想から実に同91万バレルの下方修正です。今年の需要は前年比同9万バレル減少と、2009年以来のマイナス成長予想となりました。

IEA は今年第1四半期の世界の石油需要が前年比日量250万バレル減少すると見ており、2月単月では減少幅が同420万バレルだったと推定しています。年後半に向けては需要が正常化すると予想されますが、それが遅れる悲観的なシナリオでは2020年の世界の需要は前年比日量73万バレルのマイナスとなる一方、楽観的な予想でも同48万バレルの増加に留まります。先月時点の予測では同83万バレルの伸びでした。

IEA 推定による2月の世界の総石油供給量は日量1億バレルで前月比同58万バレル減。OPEC の推定産油量は日量2,833万バレルで同53万バレル減となっています。リビアの供給障害が減少の要因です。

今年第1四半期の OPEC 原油必要量を IEA は日量2,500万バレルと推定しており、1~2月の数字に基づく同期間の生産量見通しを同350万バレル下回っています。また、2020年通年の OPEC 原油必要量は同2,730万バレルと推定されています。


IEA がこれ程大きな需要予測下方修正を行ったのは、今年第1四半期の中国の需要が前年比で同180万バレル減少すると見ているからです。しかし、中国税関総署によると、1~2月の同国の原油輸入量は日量1,051万バレル相当の8,609万トンで前年比5.2%増でした。前年同期に記録した12.4%増に比べると大きく減速していますが、マイナスにはなっていません。

中国当局公表データの信憑性には問題がありますが、日量ベースで計算した原油輸入量の前年比の変化は3.4%増で、これは海運筋による1~2月のタンカー輸送の数字と一致しています。原油輸入量と石油製品の消費量には差異もあるでしょうが、IEA が推測するような前年比で10%超える需要減が四半期ベースで見て実際に起きているかどうかは不透明です。

今後本格化する先進国での需要への影響が市場に織り込まれるまではこの弱気ムードが続くのかもしれませんが、先物市場の高値シコリ玉はこの日の暴落で一掃されており、内部要因による WTI 相場のこれ以上の大下げは難しいとも考えられます。

2020/3/9
NYMEX WTI Apr: $31.13/bbl ( -10.15 )
20日移動平均: $47.08 ( -1.68 )
ボリンジャーバンド
 +2σ: $57.21/ -2σ: $36.94
 幅: $20.27 ( +7.58 ) / 100日平均: $7.04
ボラティリティ
 94.74 ( +46.15 ) / 100日平均: 26.47

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