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いま死にたいと思い込んでいる人へーいまの自分・環境・人間関係を変える必要性と相談する意義

誰でも死にたいと思うほど辛いことがある社会

新型コロナウイルスの影響から仕事がなくなっていて、先の見通しが立たない人が大勢出てきている。

全国各地の生活困窮者支援相談窓口にも「生活が苦しい」「家賃をどうしたらいいか」「仕事を失った」などの相談が相次いでいる。

このような経済状況では苦しみや辛さから逃れたいと思うのも当然である。

ましてや、緊急時だけでなく、日常でも色々と大変なことがある。ふと死んだほうが楽になるのではないか、と思ってしまうかも知れない。

日本ではどうしても自分や家族がやらなければならない事が多く、それが役割として、無意識に生き方を強要してくる社会だ。

例えば「男性なら稼げなければならない」「女性なら家事育児をきちんとしなければ」などという性別役割・ジェンダー役割が不公正に押し付けられることもある。

同調圧力も強く、「あの家庭の子も塾に行っているなら、うちも行かせなければ」「30代でマイホームを構えている人が多いらしい」などの周囲からの言葉や要請も無意識に生き方を強要してくる。「稼げなくなったら役立たずなのかも知れない」と思わされてしまう。

「努力が足りないから貧困になる」「頑張れば何とかなる」などの言葉も、無意識に人々を追い詰めていく。

病気や障害に対する差別、偏見も根強く「病気で働けなくなったら終わり」「障害者にはなりたくない」などの言葉も日常的に聴かれる。

これも自分が当事者になったときに、ブーメランのように跳ね返ってくる暴力である。

日常的に常識、社会規範、同調圧力、協調性のなかに身を置かなければならないので、少しでもそこから外れたら生きる場所が失われると錯覚する人々も多くて当然である。だからこそ、余計にマイノリティ(少数派)は極めて生きにくさを抱えやすい社会だ。

死にたいほど辛い原因が必ずある

私は生活困窮者支援のNPO団体で、社会福祉士として長く活動をしてきた。

2008年のリーマンショックの際にも死にたいと思った人、実際には未遂で助けられた人などもいた。

これまでにも多くの相談者が「死にたい」と口にし、助かったとしても「なぜ助けたのか」と苦しむ様子に向き合ってきた。

結論から先に言えば、それでも生きた方がいいし、生きることを阻害する要因を減らすことに注力した方がいいということだ。

つまり、死なない方がいい。生きやすさを求めて生き続けながらもがいた方がいい。

死にたいほど辛いという場合、その相談者に対して、私たち福祉専門職は面接をしてアセスメントを行なう。

アセスメントとは現在の状況を把握する作業といってもいい。

この作業は困難を極めるのだが、何度も相談活動を続けていると見えてくるものがある。

死にたいほど辛いという人は必ず、その人自身、その人の生活環境、周辺の人間関係などに課題を抱えている

例えば、その人自身の人格や価値観、生育歴、習慣やこうあるべきという規範意識などである。

「こう生きなければいけない」「こうならなかったら自分はダメだ」「これが当たり前の生き方だ」「これができなかったら死んだ方がマシだ」「こうするべきだと育てられた」「親から大事にされてこなかったから」というものに自分自身が縛られている場合が多分にある。

上記は相談支援現場でよく聴かれる言葉だ。自分自身で生きにくさを助長する必要性はない

時間をかけて考え方、凝り固まった価値観や規範、コリを解していく作業が必要になる。

または生活環境が「死にたいほど辛い」を助長していることもある。

「低賃金の職場で大事にされない」「部屋が狭くて帰ると絶望的な気持ちになる」「性的マイノリティへの理解がない」「女性というだけで生き方が縛られる」「お金が底をつきそうだ」「隣近所は皆知り合いでプライバシーがない」などの経済事情や住居環境、社会関係にも生きにくさは現れてくる。

社会全体の問題なので、すぐには劇的に改善しないものがあってイライラが募ることもあるだろう。

福祉制度なども活用しながら生活環境をよくしなければ、生きにくさは解消しない場合もある。

周囲の人間関係も大きな影響を及ぼす。

「夫が毎日暴力を振るってくる」「夫の顔色を伺いながら生きている」「妻にどうやって悩みを話そう」「上司とは意見が合わない」「あの人間関係が断たれたら終わりだ」「あの人も分かってくれなかった。分かってくれると思ったのに」などと人間関係の課題、依存や甘えなど色々と出てくるはずだ。

人間関係を修復したり、精算したり、断絶する作業も必要になってくる。これも大変な作業の一つである。

人は分かり合えないこともある。なかには一緒にいることで有益ではない場合、むしろ一緒にいることで自分が破壊される人間関係もある。

自分、生活環境、人間関係を一人で改善できない場合は相談を

このような自分自身、生活環境、人間関係に「死にたいほど辛い」原因があることを疑い、改善作業を独自で始めて欲しい。

「死にたいほど辛い」というシグナルは大切で、この状況では生きられないと心身がメッセージを出しているということだ。

自分自身で難しい場合には、もちろん第三者への相談が必要である。

私たちは困ること、生きにくさが発生する前提で社会システムを用意している。

システムは完全ではないが、全く役に立たないわけでもない。

「死にたいほど辛い」と思っても生きた方がいいと言った。

あなたの辛さの原因を除去していく作業を一緒にする仲間を増やして欲しい。

人間はあくまで社会的な生き物である。一人で孤立しては生きられない。

今はいないと思い込んでいても、理解してくれる人がいるかも知れない。いい人もいるし悪い人もいる。でも全てが悪い人ではない。

もう一度、人間、社会を信じて、自分や周辺だけでなく、新しい相談相手、仲間を見つけてほしい。

すごく気持ちが落ち込んでいたら精神科でもいいし、保健所でも福祉行政でもいい。

私たちのようなNPOでも市民団体でもいい。いのちの電話など電話やメールで話を聞いてくれる場所もある。

働いている人は労働組合、ユニオンという選択肢もある。

いくらでも話を聞いて「死にたいほど辛い」ことを除去する手伝いをしてくれる人はいる。

ただし、主体的に問題に取り組むのはあなた自身である。頼りすぎてもいけない。

人生の主役はあなた自身であるのだから、周囲は脇役である。

「第三者に相談するなんて恥ずかしい」「相談しても意味ないだろ」「また同じようなアドバイスか」と思った人もいるだろう。

それ自身も先入観であり、自分を縛り付ける呪縛である。

ここから自由になるために、よりよくもがきながら、よりよく生きてほしい。

※Yahoo!ニュースからの転載

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