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生粋のエンターテイナー・中居正広、圧巻の会見で見せた隠せない輝き

中居正広は高層ビルの屋上と屋上をつなぐ細い綱を笑顔で渡れるような人物なのだと思った。

中居正広が34年間もの長きに渡って所属したジャニーズ事務所を3月いっぱいで退所して新会社「のんびりな会」を立ち上げると発表したのは2020年2月21日。ここでは、テレビ局各局で放送された会見や、書き起こされた記事を見て感じたことを書きます。


2時間ものロングインタビュー形式による世紀の会見を自身で仕切った中居。会場も自分で探したとか。マスコミを会場に迎え入れ、時間が来たら改めて会見場に入ってくるというサービスっぷり。『サンデーLIVE‼』の東山紀之(ジャニーズの先輩)によると最初、パンツのファスナーが開いていたとか。それも含めて、こういう場にありがちなピリピリ感のない、終始笑いの絶えないアットホームな雰囲気の会見は、中居正広のエンターテイナーっぷりが遺憾なく発揮されたと感じた。

しょっぱな、挨拶と辞めるまでの経緯の説明では「退所?」「退社?」とどっちが正しいのか何度も迷いながら言うおとぼけ感で「事務所を辞める」という重い空気を振り払う。

司会のキャリアが長い中居は、単語ひとつひとつをくっきりはっきり程よいリズムで語り、とても聞きやすく、内容もしっかり伝わってくる。

今回の決断を誰に報告したかの話では、おもむろに立ち上がり、東山紀之のモノマネを交えて、退所報告の様子をひとりふた役のお芝居のように再現。オチ(城島(茂)くんに報告してない!と焦る)ところまでしっかり考え抜かれたミニコントのようだった。

生粋のエンターテイナーである。

解散したSMAPのメンバーからの反応や再結成の可能性という多くの人が気にしていることに関しては、どちらにもとれるような希望をもたせた言葉を選ぶ。どの話題にも必ずといっていいほど笑いがまぶしてあって、絶対に深刻な雰囲気にならない。

ちょっとでもタイミングを外したら、マスコミがぐいっとツッコんでくるところを徹底的にやんわり交わしていく様は、まるで細い細い綱の上を笑いながら渡っているようで。「カイジ」の「鉄骨渡り」に例えたほうがわかりやすいだろうか。あんなこわいものを笑いながらやれる人ってたぶんいないが、でも中居正広にはそれができる。

■本音も散りばめられているんじゃないかと思わせる中居

「ずっとアマチュアみたいな感じで、ハッタリでやって来た感じですかね。自分のメッキが剥がれてきていることも感じてたりしますね」「歌って踊ってってところが僕ひとりでは自信ない」(大意)なんて謙遜していたが、とんでもない。長い間、ショービジネスのトップを走ってきただけあって、こんなにもリズム感があって、どんなに大きな場でも俯瞰で見て、空気の流れを作れるゲームメーカーはなかなかいない。歌が下手設定をずっと通してきたけれどほんとは巧いんじゃないか説もあって、私もそっち派だ。

ふつうに歌えるのに、へったくそキャラをずっと通し続けてきたのではないかと思わせる演技の力で、見た多くの人が「うまい」と絶賛した、徹底的に演出された会見は、ただ「うまい」「面白い」ではなく、そこのあちこちに本音も散りばめられているんじゃないかと思わせるところも含めて圧巻だった。

真実味の最たるものは、恩師であるジャニーズ事務所の創始者・ジャニー喜多川の骨の入った小瓶。

ちいさな小瓶を取り出して、「ジャニーさんの骨」と言ったときの会場の悲鳴にも似たざわつき。カメラのシャッターが一斉に押される音がする。翌朝のスポーツ紙はこの骨の小瓶をもった写真が多かった。

私はネットに続々アップされる各媒体の写真のどれが一番、本人の表情も小瓶の中身もしっかり撮れているか比べてしまった。正面よりもサイドから写していた媒体がこの写真はうまく撮れていた気がする。
「SMAPの中居(正広)くんは全然しゃべれない人間だったけど、いましゃべりを専門にやってるわけでしょ。彼なんか一言しゃべるのが大変でしたもん。それがまた楽しいんですよ」
"ジャニー喜多川さんが生前に語った言葉「SMAPの中居くんは…」"(バズフィード 2019年7月10日配信)にジャニー喜多川の言葉が残っている。少年の頃、見いだされ、トップスターに上り詰めたのはジャニー喜多川のおかげ。だからこそ決断は亡くなってからになった。

「ジャニーさん力をくれ」という思いで持ってきたと言ったときには笑いはない。ぞくりとするような緊張感。さんざん笑わせてリラックスしてしまった空気に真剣を抜いて切り込んでいく。
このひと、本気だ。まるで任侠映画。高倉健も菅原文太もいない令和、義理と人情の昭和感に誰も何も言えなくなる。亡父の命日に新会社を設立したことも然り。減量し、髪を坊主にした映画「私は貝になりたい」(08)の主人公のような高潔さ。高校球児のような純粋さ。

それもまた「これはいい感じではないですか。2分くらい保ちましたよね?」などと笑いでかき消してしまったが、いや、中居正広の殉教者のような澄みきった瞳はどんなに茶化しても隠せない。

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