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アングル:楽天の携帯事業、独自アプリが秘める通信料金「破壊力」


平田紀之

[東京 6日 ロイター] - 楽天<3774.T>は3日、自社エリア内のデータ通信を上限なしとする低価格の携帯電話料金プランを打ち出した。自社エリア外では制限がかかる内容に、プラン次第でユーザーを奪われると警戒していた通信業界からは「肩透かし」との声も聞かれる。一方、独自のアプリを通じた国内通話かけ放題という仕組みは、既存の音声通話サービスに置き換わる潜在力があるとして、通話面から通信料金の「破壊」が起きるとの見方も浮上している。

<通信業界、冷静な受け止め>

「ソフトバンク<9434.T>にはすでに23万の基地局がある」──。ソフトバンクの榛葉淳副社長執行役員兼COOは5日、次世代通信網「5G」のサービス発表の会見で、自社の優位性を強調し、ネットワーク整備の途上にある楽天をけん制した。楽天は今年3月末に基地局4400局を整備する見込みで、26年3月までに2万7400局を計画している。

楽天の料金プランは月額2980円。自社エリア内のデータ通信を無制限とし、大手通信各社のデータ大容量プランの半額以下という低価格を打ち出した。先着300万人には1年間の料金無料とするキャンペーンも実施する。

ただ、通信業界では、冷静な受け止めが多い。「ストレスフリーな環境に慣れたユーザーは、それほどなびかないのではないか」(大手通信関係者)との見方だ。

携帯電話のユーザー獲得競争では、データ通信が主戦場になる。高速大容量が特徴の5G商用化をにらみ、各社は音楽や映像といったデータの大きいコンテンツの拡充を進めている。データの通信量は増えていく方向だ。

楽天のプランはエリア外では2GBの上限が設けられ、上限に達すれば速度が大きく低下する。集中的に基地局を整備した都心部でも、地下などまだ電波が十分に届かないところは少なくない。とりわけヘビーユーザーは、気づかないうちエリア外になって上限に達してしまう事態も想定される。

「東名阪でも、地下鉄で動画をよく見る人には月2GBでは物足りないのではないか」とMM総研の横田英明研究部長は指摘する。

<受け入れやすいライト層>

もっとも、関心を寄せる消費者は多いようだ。楽天の会見中に料金プランの加入受付を開始したところ「想定を上回るアクセスで、(申し込み)ページが重くなっている」と、楽天モバイルの山田善久社長はアピールした。

楽天は、2028年度までに1000万回線の獲得を計画する。インターネット通販サイト「楽天市場」を中心にグループ利用者のIDは1億超あり「モバイルに誘引すれば計画の達成は不可能ではない」(楽天関係者)との見立てだ。

携帯ユーザーの中には、楽天がエリア外の上限と設定した2GBも容量を必要としていない人も多い。総務省が昨年8月に発表した2018年度利用者アンケートでは、大手通信会社のユーザーの1カ月当たりのデータ通信量は2GB未満が約6割と、過半を占めた。

金融市場では、楽天のプランは、MVNO(仮想移動体通信事業者)ユーザーのほか、大手通信会社のデータ通信1GB─3GBに通話無制限を加えた料金に比べても安いとして「大手通信会社のライトユーザーも関心を持つのではないか」(証券アナリスト)との見方が出ている。

<通話無料のインパクト>

楽天のプランは、独自の統合型アプリ「楽天Link」を通じて提供する通話・ショートメッセージ(SMS)の無料サービスも盛り込んだ。実施中の試験サービスですでに導入しているアプリで、携帯電話事業の本格開始以降も中核に据える構えだ。     通信会社にとって、音声通話サービスは依然、大きな存在だ。例えばドコモの1契約当たりの月間平均収入(ARPU)に占める割合は、2017年度に約3割だった。楽天の通話無料サービスは、こうした従来の音声通話サービスの価値を脅かしかねないと見られている。     これまでも、LINEなどの無料通話アプリはあった。ただ、その多くで無料通話はユーザーID間での通話に限られ、通信会社の音声通話サービスへの影響は限定的だった。ところが、楽天Linkでは、ユーザーID間だけでなく、電話番号による固定電話や他社の携帯電話への通話も無料になる。「大手の音声サービスの価値を完全に破壊する可能性がある」と、UBS証券の高橋圭アナリストは指摘する。

楽天が無料通話に乗り出せたのは新規参入の強みでもある。大手が同様のアプリを導入して対抗する可能性はあるが、自らの音声通話サービスを浸食しかねず、痛し痒しとなる。

例えば、ドコモ<9437.T>の携帯電話事業の18年度の売上高は2兆8444億円。音声通話が3割なら、中長期的に無料サービスに取って代わっていく場合、約8500億円分が圧迫されることにもなる。KDDIやソフトバンクも「売上高や利益に数千億円の影響が生じてもおかしくない」(UBS証券の高橋氏)という。

(編集:石田仁志)

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