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"市民運動とも連携して、「脱原発法」の精神を" - 菅直人前首相が会見

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菅直人前首相。(撮影:田野幸伸)
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総理退任後、「原発に依存しないですむ日本と世界を実現する」ことを目指し、脱原発に向け党内外で活動する菅直人氏。30日には福井県敦賀市で高速増殖炉もんじゅを視察し、記者団に「もんじゅは不要」との認識を示していた。そんな菅氏が、31日、自由報道協会で会見を行った。総理を退任して以来、いわゆる「記者会見」を開いていないという菅氏。今日は講演をした後に、質問を受ける、という条件で引き受けたという。会見では事故当時の苦悩を振り返り、あらためて「脱原発」の姿勢を打ち出した。【BLOGOS編集部 田野幸伸、大谷広太】

菅氏:私は初当選時、市民運動からの国政参加ということで、週刊プレイボーイに1ページご提供いただき、約一ヶ月の間情報発信 をしたことがあります。もちろん当時は私には政治部の記者などは近寄ってこない時期でしたので、自由なメディアの必要性を感じての議員生活のスタートでした。今、いろいろなメディアの在り方が話題になっていますけれども、この自由報道協会が比較的自由な場であると聞いています。市民運動からスタートした私の活動も、総理大臣を経験し、ぐるりと、今また市民運動の振り出しに戻ったような気持ちがしております。

今日は原発事故についての問題、それを踏まえて、今後の再生可能エネルギーの問題。そして今後の原子力政策の問題についての3点についてお話したいと思います。

まず、原発事故についてあらためて申し上げたいのは、本当のところ、どれだけシビアな状況に立ち至っていたかということについての共通の認識、思い、感じ方についてです。

3月11日の14時46分に地震が発生して以来、約一週間程度は、すぐそばにあります公邸には戻らず、夜も官邸で、防災服を着て、時折仮眠をとっておりました。官邸では一人になることもあるのですが、そのときに考えることはひとつでした。この事故がどこまで拡大するのか。どこで終息に向かうのか。これが最初の一週間、常に頭の中を駆け巡っていました。

今回の事故というのは、複数の原発の同時多発的なアクシデントという、スリーマイルはもとよりチェルノブイリをも超える重大事故でした。化学プラントの大きな火事が起こることがあります。火災は3日か1週間か、燃え尽きるまで何日か待てば鎮火するのでしょうが、原発の使用済燃料の中には半減期が2万4000年のプルトニウムもあります。つまり火災で言えば、永久に鎮火しないということであります。

そう考えたときに、この首都圏から3000万の住民が避難しなければならない、そういうことも十分にありえると感じたわけです。東電の現場の皆さん、自衛隊・警察・消防のみなさんが命を賭して頑張ってくれたことが、結果として紙一重のところで原子炉に水がはいり、温度が下がり、幸いにして最終的にはそういう事態には立ち入らないで済みました。

チェルノブイリの事故で、は多くの軍人が出動命令を受けたと言われています。原子炉にセメントをどんどん放り込んで、"石棺"を作って、なんとか放射性物質を止めたと言われています。私も、色々な場面で「死を賭して」「命がけで」という言葉を使いました。東電の幹部の皆さんにも、「私を含めて、みなさん60歳を超えてるじゃないか。自ら現場に行こうじゃないか」と言ったことがあります。しかし、出かけていけば死ぬことがほぼ確実だ、という場所に、誰かに「行ってくれ」と命じなければならない場面に来たときに、本当に命令できるのかどうか。ずっと考えておりました。

総理として、そういうことを経験し、180度と言ってもいいくらいに原発に対する考え方が変わりました。結論としては、"安全な原発"というのはない。原発に依存しない社会を実現すること。それが日本にとっても世界にとってもただしい選択だと確信するに至りました。3.11までは、総理として、安全性を確認した上で、CO2を出さないエネルギー源として原発を活用するという方向性でおりましたけれども、あの"紙一重"の状況がもしも"紙一重"を超えた状況に立ち至った時のリスク、この大きさはどれだけのものかと考えました。事故後、小松左京さんの「日本沈没」も改めて読みましたが、「日本沈没」というところまでではないにしても、国家の存亡が本当に危うくなる。そういうリスクなんです。

私も、新人議員のころから脱原発に変わりうるエネルギーとして再生可能エネルギーの促進には積極的に取り組んで参りました。三宅島にあった東電の風力発電機とか、当時の科学技術庁が推進していた「フートピア計画」というものを国会で取り上げたりもしました。この30年あまり、日本の再生可能エネルギーの技術が劣っていたからヨーロッパに遅れをとったわけでは決してありません。日本の技術も高かったわけですけれども、「東電も実験したけど駄目でした。科学技術庁も実験したけど駄目でした。」と、全部潰していった歴史があったと思います。昨年8月に、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が、私の内閣の最後の仕事として成立しましたが、再生可能エネルギーが大きく飛躍することは昔からわかっていたわけです。しかし、経団連、電事連、東電、その他の関係者が、再生可能エネルギーは不安定でお金がかかる、と抑えこんできたわけです。再生可能エネルギーの買取制度がいよいよスタートしたことを"我が国の第3次産業革命だ"という方もいますけれども、私もある意味ではこれは新たなスタートと言えると思います。

私は昨年から海外でも実践的な現場や、開発している企業を見て参りました。ヨーロッパに行くまで、三菱重工が風力発電をやっていることを知りませんでした。しかし現在、ヨーロッパでは三菱重工は再生可能エネルギーの有力なメーカーとして知られています。今回、経産省が主導して、福島沖で1基7000kwという浮体型の風力発電の実験を始めます。将来的には140基を作ろうという計画であります。メインは三菱重工であり、日立であり、またスマートメーターの研究所を見て参りましたが、こちらでは東芝も取り組んでいます。従来は原発に関わっている企業は、再生可能エネルギーに関わることを気兼ねしていたとしか思えませんが、これまで原発に深く関わっていた企業も含めて、再生可能エネルギーに取り組んでいます。世界的に見ても、GEは原発事業について将来の見通しがあまり持てないということで、方向転換すると経営陣が言っておりました。

再生可能エネルギーが持つキャパシティというのは、技術革新という意味で大きいというだけでなく、太陽が降り注ぐ、相対的に田舎と言われる、従来投資がいかなかったところにも投資がいく、地域に分散した社会への道が開かれると思っています。

経団連の関係者の中には、原発がないと経済が悪くなるという、まるで3.11が無かったかのような発言をしている方もいらっしゃいます。事故が起きたときの大きなリスクは全く頭に入れないで、「原発が無いと電気料金が上がると、日本経済にマイナスになる。」という感覚が率直に言って理解できません。せめて3.11についてどう見ているのか表明してから発言をするのが責任ある立場だと思う。

残された時間の中で、どうやって脱原発を実現するのか、民主党の中で私が顧問を務めている「脱原発を考える会」でも、遅くとも2025年までには原発ゼロにする、もちろん前倒しできるようであればそれをできるだけ早く実現する、その場合の再生可能エネルギーや経済効果についても協議しています。先週、それを「脱原発基本法」として法律にして、民主党議員で国会に出したいと、世話人が幹事長に申し入れを行いました。幹事長の方からも検討していくと回答いただいておりまして、これから党として「脱原発」を打ち出すのか出さないかしっかりとした議論をしていきたいと思っております。同時に、他の党の方にも、超党派で、「脱原発基本法」のようなものを提起できないかと話をしているところであります。

1988年、高木仁三郎さんが「脱原発法」というのを提起されたわけですけれども、当時はその問題にあまり関心を示さないままであったことを申し訳なく思っています。今一番元気のいい首都圏の反原発連盟や、大江健三郎さんなど、いろんな動きがあるわけですが、そうした方々とも連携しながら、高木さんが考えられた「脱原発法」の精神を引き継いだものを国会で成立させていく運動を広げられないかと考えているところです。

本来この問題は、国民投票が相応しい仕組みですが、我が国ではまだ制度が整備されておりません。法律を超党派で、国会で決めることができれば。たとえ誰が首班になろうがそれは内閣を拘束します。国民の皆さんの力で国の方向を決めていく、そういうことに私の立場でも全力で協力していきたいと考えています。国会で、首都圏反原発連合の方が議員と意見交換する会を開くことになっております。みなさんとも、3.11をきっかけに、新たな日本のエネルギー、原発政策の選択につながる、そういう道がさらに広がるよう、実現を図って行きたいと思います。

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