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- 2020年03月05日 17:11
上司がポジティブすぎると、本音がいえないんですよね──「自分は成果を出せる」という人ほど、弱さを見せる意識が大事
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あなたは「自分の弱さ」をさらけ出せていますか?
弱さをチームのメンバーやリーダーに見せることで迷惑をかけてしまうかも──。そう思い悩んでストレスを抱えている人も少なくないのでは。株式会社cotreeのCOO・平山和樹さんはかつて、弱さを見せられずに抱え込んだことで心を病んでしまった経験があるといいます。
一方のリーダーにとっては、「感情的な弱さを職場に持ち込まれては困る」という思いがあるかもしれません。NPO法人クロスフィールズの創業者・小沼大地さんは、「常にポジティブに接していたことでメンバーを疲弊させてしまっていた」という過去を打ち明けます。
チームの一人ひとりが、ポジティブな面だけではなく弱さも見せあいながら、健康的に楽しく成果を追いかけるためには何が必要なのでしょうか。お2人の実体験をもとに語り合っていただきました。
あのとき泣かなかったら、メンバーはすぐにいなくなっていたと思う

小沼さんが自分の弱さをチームのメンバーに見せられるようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

「チームのみんなが、僕と話すことによって疲弊している」と気づいたことですね。

疲弊……。

僕はとにかくポジティブに物事を考えるタイプで、メンバーとの1on1で悩みを相談されたときも、「それはこうすれば解決できるよ!」と明るく前向きに返し続けていたんです。
そうすることで本当に問題を解決できると思っていたんですが、実際はそうじゃなかった。みんなは僕に本音を言えなくなっていたみたいです。
そうすることで本当に問題を解決できると思っていたんですが、実際はそうじゃなかった。みんなは僕に本音を言えなくなっていたみたいです。

小沼大地(こぬま・だいち)さん。NPO法人クロスフィールズ 代表理事。大学卒業後に青年海外協力隊としてシリアに赴任し、マイクロファイナンスや環境教育のプロジェクトに携わった後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年5月に共同創業者としてクロスフィールズを設立。大手企業の社員を新興国のNGO・NPOに派遣し、本業で培ったスキルによって社会課題解決に寄与すると同時に、リーダーシップ育成や新興国マーケットの市場調査・市場開発への足がかりにもつなげる「留職」プログラムを展開している。

上司がポジティブすぎるがゆえに本音を言えないと。

はい。僕は中学・高校で野球部キャプテン、大学ではラクロス部と、超体育会系の環境で育ってきたんです。就職先のコンサルティングファームも「ビジネスマッチョ」な風土でした。
そんなバックボーンがあったから、「なんでもできなきゃいけないんだ」という前提でメンバーと接してしまっていたのだと思います。
そんなバックボーンがあったから、「なんでもできなきゃいけないんだ」という前提でメンバーと接してしまっていたのだと思います。

でも、自分ではメンバーを疲弊させてしまっていることになかなか気づけないですよね。

僕の場合は、法人全体で行った合宿のおかげで気づけました。
組織がうまく進まなくなったとき、「団体の強みとか、良いところを出し合おう」と言ったんです。でもそこでメンバーの1人が「いや、今日はネガティブな部分、変えないといけない部分を話そう」と。
みんなに組織や個人の課題を出しあってもらったら、「自分らしく働けていない」「前の職場のほうがよかった」など、メンバーが次々に泣いていったんです……。
自分の強みだと信じていたポジティブさが、実は弱みでもあったのだと気づいた瞬間でした。僕の話す順番が回ってきたときには、言葉に詰まってみんなの前で泣いてしまいました。「みんな、本当にごめん」と一言だけ絞り出して。
組織がうまく進まなくなったとき、「団体の強みとか、良いところを出し合おう」と言ったんです。でもそこでメンバーの1人が「いや、今日はネガティブな部分、変えないといけない部分を話そう」と。
みんなに組織や個人の課題を出しあってもらったら、「自分らしく働けていない」「前の職場のほうがよかった」など、メンバーが次々に泣いていったんです……。
自分の強みだと信じていたポジティブさが、実は弱みでもあったのだと気づいた瞬間でした。僕の話す順番が回ってきたときには、言葉に詰まってみんなの前で泣いてしまいました。「みんな、本当にごめん」と一言だけ絞り出して。

強烈な体験ですね。

でも、自分をさらけ出して弱さを見せられたのは救いだったのかもしれません。それまでの僕の「とにかくポジティブに」というリーダーシップのパターンは瓦解して、「弱さを見せてもいいんだ」という空気をチームの中に作れるようになっていきました。
しばらく経って、当時のメンバーから「あのとき小沼が泣かなかったら、メンバーはすぐにいなくなっていたと思う」と言われました。ある意味であの涙は、僕が初めてメンバーの気持ちを聞く姿勢を示した証だったのかもしれません。
しばらく経って、当時のメンバーから「あのとき小沼が泣かなかったら、メンバーはすぐにいなくなっていたと思う」と言われました。ある意味であの涙は、僕が初めてメンバーの気持ちを聞く姿勢を示した証だったのかもしれません。

そのときのメンバーのみなさんの気持ちが分かる気がします。
僕が新卒で入社した会社は、優秀で「ビジネスマッチョ」な人が多い環境だったんですよ。
僕が新卒で入社した会社は、優秀で「ビジネスマッチョ」な人が多い環境だったんですよ。

平山和樹(ひらやま・かずき)さん。株式会社cotree(コトリ―)COO。大学在学中からITベンチャー企業に参画し、数千万円規模のプロジェクトのリーダーとして要件定義や業務設計、進行管理などを担当。自身の原体験から「人の心と物語を支えるサービス作りと持続的なプロダクトグロース」を志向して2018年6月にcotreeに参画。ウェブマーケティングやメディア運営業務を担当し、2019年より最高執行責任者・COOに就任。

おお。

僕も学生時代はずっとソフトテニスをやっていて、体育会系の風土で育ったんです。だからビジネスマッチョな人たちの中で成長していけると思っていたし、実際に重要な仕事もたくさん任せてもらえたんですが……。
自分の仕事が遅かったのもあり、溜まっていく終わらない仕事で疲弊していきました。仕事のミスも増えていきましたが、当時の僕は他の人を頼るのが苦手で。
その結果、あるときメンタル的に不調になり、物理的に働けなくなってしまったんです。もちろん、自分を社会人として育ててくれた前職の方々には深く感謝しています。
自分の仕事が遅かったのもあり、溜まっていく終わらない仕事で疲弊していきました。仕事のミスも増えていきましたが、当時の僕は他の人を頼るのが苦手で。
その結果、あるときメンタル的に不調になり、物理的に働けなくなってしまったんです。もちろん、自分を社会人として育ててくれた前職の方々には深く感謝しています。

そんなことがあったんですか。当時の平山さんは、上司や同僚に弱さを見せられていなかった?

そうだと思います。
その経験から、自分と同じような状況の人は世の中にたくさんいるんじゃないかと考えるようになりました。それでオンラインカウンセリングなどを手がけるcotreeに入社したんです。
事業として「人や社会の弱さ」と向き合っている会社だし、ユーザーさんに寄せられる不安定な思いと向き合うために何が必要なのか、ずっとみんなで話し合っているようなチームなんですよね。
その経験から、自分と同じような状況の人は世の中にたくさんいるんじゃないかと考えるようになりました。それでオンラインカウンセリングなどを手がけるcotreeに入社したんです。
事業として「人や社会の弱さ」と向き合っている会社だし、ユーザーさんに寄せられる不安定な思いと向き合うために何が必要なのか、ずっとみんなで話し合っているようなチームなんですよね。