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今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月4日版

非常時体制3日目。

朝の通勤時間帯に電車に乗ると、それでも”日常”の8割くらいはまだ混んでるかな、という感じなのだが、一仕事終えて、夜遅めの時間帯になると、今や23区内の路線では「確実に座れる」状況になってしまった。

それでも海の向こうでは大統領予備選が盛り上がりの最中だったりするし、日本でも国会審議が続いているようなのだけど、日を追うごとに”コロナ”一色になっていく世の中の先は、なかなか見えない。

そんな中でも、せめて今の状況を「見える化」して、企業法務分野で知恵を集めようよ、という動きが出てきているのは不幸中の幸いだと言えるだろう。

昨晩、Twitter上で、西村あさひ法律事務所・森田多恵子弁護士執筆のニュースレター「新型コロナウィルス感染症の拡大と企業法務における留意事項」https://www.jurists.co.jp/sites/default/files/newsletter_pdf/ja/newsletter_200303_corporate.pdf)を紹介したところ比較的大きな反響があったし*1、今日は、経営法友会が「新型コロナウイルス対応 参考リンク集」(https://www.keieihoyukai.jp/article?articleId=11159788)として、官公庁が発表した一次資料や、各社のリリース例等をWeb上でまとめていることが評判になっていた。

森田弁護士のニュースレターに関しては、何といっても「公開されている」ということが一番大きいだろう*2

またターゲットとするトピックを広めにとって、契約解釈から会社法まで、今、様々な会社の法務の現場で話題になっている”旬”のネタを集めている、というのもポイントが高いところで、多くの実務家にしてみれば、こういう時に特定の分野だけにフォーカスして過大な情報量の解説を示されるよりは、広角に情報を発信していただける方がありがたいに決まってる。

冒頭の不可抗力条項の、

「「感染症」が明確には例示列挙された事由にあたらないときに新型コロナウイルス感染症による影響は不可抗力事由にあたるか、例示列挙されていたとして、感染症に起因する原料の調達不能等の二次的影響は不可抗力事由に含まれるのかなど、不可抗力条項の解釈として、個々の事案に適用があるのかどうか難しい判断となる場面も多くあります最終的に両当事者の損害を最小化するために何ができるか相互に解決策を模索し、協議で解決することとなるとしても、協議に臨むにあたり、自社の契約上のポジションを把握しておくことは重要です。」(1~2頁、強調筆者)

というまとめ方にも象徴されるように、必要以上に法解釈を掘り下げすぎていないところも個人的には好感が持てるところで、特に異常時における「法務」の判断は、常に「ビジネスジャッジ」に他ならないわけだから*3、この例でいえば「取引を継続するか、解消するか」といった大局的な判断からの結論に理屈を合わせるために、考え方の道筋がオープンな形で示されているにこしたことはないのである*4

また、経営法友会の「まとめサイト」に関しては、現時点では、まだ取り上げられているサンプルが一部に留まっているが、感染者対応にしても、株主総会にしても、日々、各社から様々な開示がなされているところではあるので、より情報が網羅的になってくると、一日一回はアクセスしたくなるサイトになるよね、きっと・・・と、つぶやいておくことにする。

ということで、一通りざっくりご紹介したところで、今日、自分が一番驚いたトピックといえば・・・

コロナウイルスの影響による株主総会会場変更の事例

今まさに3月総会シーズンを目前に控えて、ハラハラしている担当者の方も多いと思われるのだが、中でも、最も恐ろしいのは、直前になって急に会場が使えなくなる、という事態だろう。

そして、それが現実になってしまった気の毒な会社がある。

「第25 回定時株主総会会場変更のお知らせ」(株式会社ハウスフリーダム)
https://www.housefreedom.co.jp/ir/pdf/20200304release.pdf

「当社では、2020 年3月 16 日(月)に第 25 回定時株主総会を開催する予定でございましたが、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、予定しておりました会場が使用不可能となりました。つきましては、株主総会会場を下記のとおり変更させていただきます。」(強調筆者)

最初にこれを見た時は、当初開催予定だった会場でいったい何が起きたのか? ということが気になって仕方なかったのだが、他の情報と総合すると、どうやら、元々の会場が自治体の運営するホールで、その自治体が感染防止対策で公共施設を一斉閉鎖する方針をとったために、会場を使用できなくなってしまった、ということのようである*5

実際にこの地域で感染者が出たわけでもなさそうな状況であることに鑑みると、実に不運な話ではあるのだが、それでもこの会社の場合、代替会場を手配できたからまだよかった。

もし、より大きなホールや宴会場といったハコを使っている、数百人、数千人の株主が詰めかける会社の株主総会で同じような状況に遭遇したら一体どうなるか? と考えると、心底背筋が寒くなる*6

既に様々なところで紹介されているように、法務省からは「3・11」の時と同様に、「定時株主総会の開催について」という見解を公表しており*7

「定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合でも,通常,天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで,その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではないと考えられます。」(強調筆者、以下同じ)

と一見優しい見解を示してくれている。

ただ、それに続くのが「基準日」問題で、

「会社法上,基準日株主が行使することができる権利は,当該基準日から3か月以内に行使するものに限られます(会社法第124条第2項)。」
「したがって,定款で定時株主総会の議決権の基準日が定められている場合において,新型コロナウイルス感染症に関連し,当該基準日から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたときは,会社は,新たに議決権行使のための基準日を定め,当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。」

というところが変わらない限り、柔軟に開催日を後ろ倒しにすることが難しい、という点に変わりはない。

だからこそ、何が起きるか分からないここからの4週間を、それでも何とか乗り切ってほしい、と思わずにはいられないのである。

*1:ちなみに、このニュースレターだが、Googleで「コロナ 企業法務」で検索すると最上位に登場する。他にも多くの法律事務所、法律メディアが似たような記事を書いている中で、その辺も含めてさすが、である。

*2:他の大手法律事務所が同じトピックでニュースレターを出しているのも知っているが、残念ながらクライアント向けにクローズされているようで、そうなると、知見の共有化も図りにくい。

*3:自分は、平時から常に、企業内法務の判断=ビジネスジャッジであるべきだと思っている人間ではあるのだが、仮に、日頃は専門的見地から・・・という考え方に立つとしても、やはり非常時においては、「まず法解釈ありき」という発想は捨てなければいけないだろうと思っている。

*4:ここで、具体的に列挙されていないと不可抗力事由に該当しない、とか、あるいはその逆の見解で断言されてしまうと、逆の結論に持っていきたい時に対応に窮することになってしまうので・・・。

*5:松原市のWebサイト参照(市公共施設の休館及び市内公共施設循環バスぐるりん号の運行休止について/松原市

*6:だが、ここ数日の状況やこれからの展開を考えると、それも決して絵空事ではないような気がしている。

*7:法務省:定時株主総会の開催について

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