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新型コロナ、休校措置が招く破滅への道

全国一斉休校をはじめ、活動の自粛が日常生活をすっぽり覆い始めている。

この問題は感染制御の枠を超え、経済活動・社会生活一般にまで強く波及していると考えて間違いない。

現状、この感染症について、わかっていることが少なく、未知の部分が大きいため、しっかりした予測が立てづらい面はある。

こうした状況下で、感染制御の観点から見れば、感染する確率をゼロになるべく近づけることが「正解」なのは明白だといってよいだろう。
従って、自粛の領域を広げていくことが対策として妥当である、という論理は合理的だ。

一方で、感染する確率をゼロに近づける対策(ゼロリスク対策)がもたらすコストについては、感染制御の観点からはなかなか評価しにくい。

ゼロリスク対策がもたらす波及効果の測定が多方面にわたるため、「感染症」という事象からはその結果を予測できないからだ。

首相が2月26日に発表した「全国一斉休校」を例にとってみる。

まず、この措置に関する計量的な根拠はない。19歳未満の感染者は全体の2.4%で、重症化の例はほとんどない。子供から大人に感染したエピソードはない、という報告はある。(WHO報告書の解説)

ただ、「長時間密閉空間の共有」は一般論として感染症拡散を成立させるので、ゼロリスクの観点からみれば、妥当な措置だといえなくもない。
(じゃあ、なぜ致死率21.9%と報告された80歳以上の密閉空間=デイケアや施設は閉鎖しないのか、という疑問はあるだろう。)

ちなみに、通勤電車などの空間ではアウトブレイクが起きておらず、ライブハウスやクルーズ船で起きているのは、この「長時間密閉空間の共有」効果だといえる。

一方、「全国一斉休校」のコスト面に関しては、評価が難しい。

子供の非行、夫婦仲の悪化、祖父母への負担から子供の世話による働き手の減収、給食の大量廃棄、学童保育体制の混乱まで、いろいろと言われてはいるが、ここでは職場におけるマンパワー不足の効果を取り上げてみたい。

北海道でお母さん看護師が出勤できずに、病院外来の機能が一部閉鎖になった例はマスコミに取り上げられたが、このようなケースは特殊例ではなく、現代進行形で起こっている一般的な現象である。

日経メディカル電子版によると、6割強の医師が臨時休校による「診療への悪影響を危惧」している、というアンケート結果が出ている。
・看護師さんが働けず、一部の病棟が閉鎖されたえ、診療制限を行わないといけなくなり、大変困った状況です。(30歳代、病院勤務医、放射線科)

・既に一部の病棟の閉鎖が決まりました。これから医療現場が大変になるときに、なんてことしてくれるんだとしか思えません。安倍政権は日本をつぶしにかかるようなことしかしないのでしょうか。(40歳代、病院勤務医、放射線科)

・当院では看護師の30%が出勤不可能となるようです。院内保育を検討中。(60歳代、病院勤務医、呼吸器内科)

・看護師さんや共働きの医師が出勤できないことから、独身者の負担が増加して診療の質が低下。その結果、標準予防策のほころびができ、感染拡大、という未来しか見えない。(20歳代、病院勤務医、消化器外科)

・子育て世代の私たちは休みます。後は知りません。(30歳代、病院勤務医、呼吸器内科)
まさに怨嗟の声、だが、面白いのは(面白くないか)、ゼロリスク感染制御を目標とした対策が、逆にリスクを破滅的に増大させる契機を生み出した、という点である。

現状、最も恐るべきは、医療資源の枯渇、つまり、重症化した患者が治療できない状態になることで、これは中国における致死率(母集団のうち死亡する割合)の変化(医療体制が混乱したアウトブレイク初期段階10日で17.2%、それから経時的に低下し、20日後には0.7%まで低下)を見ても、明らかである。

ゼロリスク対策に支払うコストは、医療資源の局面に限るわけではない。
全方位的な自粛は、産業、経済及び日常生活に膨大なコストを要求する。

リスク管理はゼロか1かではなく、数量的な根拠に根差した適切なレベルで推奨されるべきだ。
そうでないと、解除の条件がわからなくなる。

例えば、新規患者数、重症化率、致死率などは数量的判断の材料になるだろう。

現時点で、中国では封じ込めが成功した、と判定する専門家が多い。
根拠としては、新規患者数(感染の広がり具合)と死亡率(医療資源の有効性)の推移を見ているようだ。

いずれにしても、数量的に確かな根拠が不可欠で、そういう意味で、(十分な母集団をとれない)貧弱な検査体制が日本の弱点になる可能性は高い。

一応、現時点で封じ込めに成功している和歌山県の人口比での検査実施率が全国で突出しているのは、偶然ではないように思える。

早期に発見して、早期にリスク管理すれば、大規模な自粛でコストを払わなくて済むのではないか、とこれは素人考えだが、そう感じる。
(ただ、自己申告の場合は、感染率の精度が落ちるので、網のかけ方は難しいかもしれない。その点、中国のように政治力が強力な国は管理をやりやすかっただろう。)

WHOの報告書でも、「対策の基本は、症例を即座に検出するための非常に積極的な監視、迅速な診断と即座の隔離。」と書かれてあるし。

蛇足
統計数字は政策判断に必要だが、数字が独り歩きする危険性もある。
3/4付けのWHOの報告で、致死率が3.4%と発表されたのをうけ、早速ネット上では、季節性インフルエンザの34倍以上の致死率だ!と騒ぎ立てているが、この数字、どの地域のどの時点において、という観点がないとあまり意味をなさない。

1918年から19年にかけて流行したスペイン風邪の致死率は世界全体で2%程度だったが、米国ウィスコンシン州では0.25%、インドでは7.8%だった。
医療体制やリスク管理の状況、衛生環境によって致死率は大きく異なるので、留意する必要がある。

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