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なぜ日本には緊急事態庁がないのか――海外との比較から

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  • さまざまな緊急事態にワンストップで対応する専門機関が多くの国にはあるが、日本にはない
  • この背景には、「非常時」を大義名分に政府が大きな権限を握ることへの警戒感が日本では強いことがあげられる
  • これに加えて、かつての自民党単独長期政権時代に培われた各省庁のタテ割りが強いことも、専門機関の設置を妨げる要因といえる

 感染症の拡大や自然災害といったさまざまな緊急事態に対応する専門機関はほとんどの国にあるが、日本にはない。そこには戦後日本の縮図がある。

緊急事態の責任者は誰か

 これまで日本では、緊急事態のたびに「役所が何をするか」に力点を置いた特措法は定められてきたが、市民生活を制限する内容については総じて控えめだった。だから、新型コロナの感染が特に目立つ北海道が週末の外出の自粛などを呼びかける異例の「緊急事態宣言」を発した時、政府はいわば後付けで、これに根拠を与える法令の整備に着手せざるを得なかった。

 法令に比例して、緊急事態に対応する専門機関も手薄だ。

 一応、日本では内閣府の防災担当が都道府県レベルで対応できない緊急事態を所管することになっている。

 しかし、ここでは主に地震など自然災害が想定されていて、しかも責任者である防災担当大臣は他の省庁の大臣が兼務することが一般的だ。現在は、国家公安委員会の武田良太委員長が兼務している。

 もちろん、新型コロナのような感染症も緊急事態として想定されていないわけではない。

 例えば、2012年に新型インフルエンザが流行した際には新型インフルエンザ等特措法に基づき、内閣官房を中心に全閣僚・省庁からなる対策本部が設置された。新型コロナでも、安倍首相を本部長とし、国務大臣をメンバーとする新型コロナウイルス感染症対策本部が立ち上げられている(安倍首相は3月2日、新型コロナに関しても新型インフルエンザ等特措法の対象に加えるよう法律を改正する方針を打ち出した)。

 ただし、これらは事態が発生してからの対策で、しかもメンバーである閣僚らは通常業務の合間をぬっての仕事になる。

 要するに、日本の危機対応は「コトが発生したら大臣がみんな集まって対策を協議し、ケースバイケースの判断で、必要なら特措法で緊急事態の宣言をできるようにする」というもので、対応が後手に回ったり、誰が責任者なのか分からなかったとしても、不思議ではない。

アメリカの危機管理

 これに対して、ほとんどの国では緊急事態に対応する機関があらかじめ設置されている。

 なかでも最も有名なのはアメリカの連邦緊急事態管理庁(FEMA)だ。1979年に設立されたFEMA(発音はフィーマ)は、主に地震や山火事といった自然災害に対応してきたが、それだけでなく原子力事故、大規模な暴動、テロ、そして感染症もカバーする。

 大統領が憲法で定められた権限に基づき緊急事態を宣言することで、FEMAは関係省庁と州政府、さらに自治体の活動や資源を調整し、危機対応のセンターになる。その業務には、非常事態によって損失を受けた自治体や個人への支援も含まれる。

 これらは事前に設定されたマニュアルに沿って行われるため、迅速な対応が可能になる。

 また、FEMAは全国10カ所に地域事務所をもち、非常時にはここが連絡・調整の拠点になるとあらかじめ決まっている。これに対して、日本では中央と地方の情報共有や役割分担が連絡調整室などで行われるが、これも後付けだ。

 そのうえ、陣容も日本とはケタが違う。FEMAは7000人以上の常勤職員と1万人以上の非常時対応要員を抱える。一方、内閣府防災担当は92名で回している。

 もっとも、FEMAは2003年の組織改編で国土安全保障省の傘下に組み込まれ、軍事優先の風潮のなか、災害や感染症などへの対応が弱体化したといわれる。とはいえ、それでもFEMAは危機管理の一つのモデルとしてあり続けている。

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